アフガン撤収「同盟国の信頼損ねた」 米軍トップが証言

アフガン撤収「同盟国の信頼損ねた」 米軍トップが証言
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『【ワシントン=中村亮】米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は28日の公聴会で、米軍のアフガニスタン撤収をめぐり「米国に対する同盟国の信頼を損ねた」との見方を示した。米軍が数千人規模の駐留継続を主張したことも明らかになった。ともにバイデン大統領の説明と食い違う。

ミリー氏は上院軍事委員会の公聴会でアフガン撤収をテーマに証言した。オースティン国防長官と、中東地域を管轄するマッケンジー中央軍司令官も出席した。イスラム主義組織タリバンは8月中旬、首都カブールを制圧した。米軍は米国人やアフガン人の国外退避作戦を実行し、同30日に撤収を完了した。

ミリー氏は退避作戦について「輸送面の成功」としたが、米軍撤収のプロセスを念頭に「戦略的失敗」とも指摘した。バイデン政権はタリバンの勢いを予測できず、復権を許した。撤収間際には過激派組織の自爆テロによって米兵13人が犠牲になった。

米国が20年支援した旧アフガン政府を見捨てたとの批判が目立ち、米国に防衛を頼る同盟国にも不安が広がったとの指摘がある。ミリー氏は「世界の同盟国やパートナー国などとの信頼関係が厳しく精査されている」と指摘した。「ダメージという言葉を使うことができるだろう」と語り、米国に対する同盟国の信頼が傷ついたと認めた。

オースティン氏は「我々の信頼は確かなものだ」と証言し、ミリー氏とすれ違った。バイデン氏もタリバン復権後に「世界の同盟国から我々の信頼に疑念を持たれたことはない」と主張していた。

バイデン氏は4月、米軍を無条件で撤収させると表明した。8月中旬の米メディアのインタビューでは「思い出せるかぎりでは2500人の駐留を継続すべきだと誰も言わなかった」と語った。

これに関連し、マッケンジー氏は公聴会で数千人を残す案についてバイデン氏と直接議論していたと明らかにした。「その議論に私も参加し、大統領はすべての進言に耳を傾けて丹念に聞いていたと確信している」と述べた。「インタビューでのバイデン氏の発言は誤りか」と繰り返し問われたが、マッケンジー氏は最後まで回答を避けた。

ミリー氏は、タリバン復権で国際テロ組織アルカイダや過激派組織「イスラム国(IS)」の脅威が高まると強い懸念を示した。軍事委員会に提出した書面証言で「米国への攻撃を望むアルカイダやISの再結集が極めて現実的な可能性となった」と指摘した。「(再結集の)条件が今後12~36カ月で整う可能性がある」と警鐘を鳴らした。

オースティン氏は6月の公聴会で、アルカイダなどが2年以内に米本土への脅威になる恐れがあると説明した。ミリー氏の証言はこの時期が前倒しになるリスクを指摘したものだ。
米軍は現時点で中東諸国から無人機などを使ってアフガンで活動するテロ組織を監視する計画だが、旧アフガン政府の崩壊で現地での情報収集が難しくなる。ミリー氏は「任務はかなり難しくなるが不可能ではない」と説明した。ミリー氏はこれまでテロ対策でタリバンとの協力に意欲を示しており、将来的にタリバンに持ちかける可能性がある。

ミリー氏はアフガン政策をめぐるトランプ前政権の混乱ぶりも明らかにした。2020年11月9日に当時のエスパー国防長官は、タリバンが暴力削減などに応じるまで米軍駐留を続けるべきだとする文書を作成して政権内で調整を行った。だが2日後に完全撤収命令が下った。さらに議論を重ねると同17日には2500人規模への削減で決着した。』