米政権・民主、ハイチ人送還で対立

米政権・民主、ハイチ人送還で対立 経済政策も攻防続く
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『【ワシントン=中村亮】バイデン米大統領の移民政策に政権内や与党・民主党から批判が相次いでいる。寛容な移民政策を掲げていながら、メキシコ国境沿いに集まったハイチ人の一部を送還したからだ。経済政策でも歳出や増税規模をめぐり民主党のリベラル派と穏健派の攻防が続く。

米国務省でハイチ特別代表を務めたダニエル・フット氏は22日付の辞表をブリンケン国務長官に提出した。政権はメキシコ国境地帯の南部テキサス州に集まった1万人規模のハイチ人らの一部を送還した。フット氏は「米国の非人道的で、非生産的な決定に関与しない」と政権を痛烈に批判した。

民主党ではリベラル派で人気が高いアレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員らが税関・国境取締局(CBP)に宛てた書簡で、ハイチ人の送還について「深刻な懸念」を表明した。バイデン政権に送還停止を求める声が目立つ。

米紙ニューヨーク・タイムズによると、ホワイトハウスで国内政策を仕切るスーザン・ライス元大統領補佐官が寛容な移民政策を改めるべきだと主張している。バイデン政権の発足後、メキシコ国境で不法移民の拘束者が急増するなか、バイデン政権は米野党・共和党から強い批判を浴びており対応を迫られていた。

民主党の穏健派のヘンリー・クエイヤー下院議員も米メディアのインタビューで「ハイチ人の流入はすぐに止まらない」と指摘。不法移民対策の強化を訴えており、政権や民主党の路線対立が鮮明だ。

マヨルカス国土安全保障長官は24日の記者会見で、ハイチ人の送還は新型コロナウイルスの流入を防ぐためだと述べた。移民の受け入れに前向きな方針は堅持していると訴え、送還をめぐってリベラル派と穏健派の双方に配慮した。

米政権の移民政策はぶれ続けている。バイデン氏は4月、民主党の穏健派に配慮して、今年秋までの難民の受け入れ枠を1万5000人と過去最低水準に据え置く大統領令に署名した。直後にリベラル派などの猛反発を受けて撤回すると、5月には6万2500人へ拡大する方針に転換した。

ちぐはぐな移民政策に米国民も冷ややかだ。米ピュー・リサーチ・センターが9月中旬に実施した調査によると、政権の移民政策を支持するとの回答は43%にとどまった。3月調査から10ポイント下がった。アフガニスタン撤収をめぐる混乱や新型コロナウイルスの拡大とともに移民政策がバイデン氏の支持率低下の一因になっている。

バイデン氏が政権浮揚のカギとみる経済政策でも民主党内の調整は綱渡りだ。子育てや教育の支援に3.5兆ドル(約380兆円)規模を投じる歳出・歳入関連法案について穏健派のジョー・マンチン上院議員は規模縮小を求めている。上院の議席数は与野党が拮抗するため、マンチン氏が賛成しないと法案は通らない公算が大きい。

バイデン米大統領の支持率は低下している=AP

これに対抗してリベラル派は関連法案の成立の見通しが立たないと、別に議論を進めているインフラ投資法案に賛成しない構えだ。歳出・歳入関連法案の規模を減らさないよう民主党指導部に圧力をかける狙いがある。

外交政策でも民主党内の路線の違いが鮮明になっている。10月以降の政府機関の閉鎖を防ぐ目的のつなぎ予算案にイスラエルのミサイル防衛に対する資金支援を盛ったが、リベラル派はイスラエルの人権侵害を理由に反対した。民主党指導部はイスラエル支援をつなぎ法案から切り離し、同国支援に対象を絞った別の法案を用意することにした。 』