[FT]仏排除、欧州の自立促すか

[FT]仏排除、欧州の自立促すか
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB222YG0S1A920C2000000/

『フランスの外交姿勢は時に冷徹で、視野が狭く、排外的でありながら、的を射ている。欧州連合(EU)の前身である経済共同体への英国の加盟をドゴール元大統領が拒否したことは、現在の状況を先読みするような行為だった。イラク戦争への反対は、もっと短期間で正解だったとわかった。アフガニスタンの首都カブールが陥落する前から状況を見通し、現地の自国民や関係者に警告を出すのも早かった。

フランスのマクロン大統領(左)は米国が英国、オーストラリアと新たな安全保障枠組みを創設したことで自国が袖にされたと怒ったが、この出来事は米国からの「戦略的自立」を考える良い機会となった=ロイター

米国が英国、オーストラリアとともに安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」を立ち上げたことで、フランスは袖にされた。しかし少なくとも、それにより米国を冷静に見る目はさらに磨かれた。この夏は米国からの「戦略的自立」を考える良い機会となった。

米国がフランスを傷つけてまでAUKUS立ち上げに動いた理由は、多くの欧州諸国を困らせながらもアフガンから撤収した理由と共通する。優先すべきは中国だ。EUは米国を振り向かせることができず、米国が中国にこだわる理由さえおそらく理解できない。

奇妙なことに、バイデン氏の外交政策は一貫性を欠き、基本原則すらないという批判が飛び交っている。だが現政権は近年の歴代政権より筋が通っている。アフガン撤収、ロシアと欧州を結ぶガスパイプラインの不本意ながらの容認、問題を起こしてもサウジアラビアをとがめない姿勢は、中国以外の問題に割く資源と注意力を極力抑えるという方針に貫かれている。日米豪印4カ国の枠組み「Quad(クアッド)」への注力、AUKUSの創設と、バイデン氏が積極的になるのは必ずと言っていいほど中国の勢力が及ぶ地域だ。

軍事力と一枚岩の外交政策が必要

はっきりしないのは欧州の方だろう。米国に関しわかりきった事実を受け入れるつもりがあるのか。もしそうなら、どこまで独自の体制を築くのか。欧州は米国から素っ気なくされると、大統領の個人的な気まぐれのせいだと考えがちだ。カウボーイ気取りのブッシュ氏、よそよそしいオバマ氏、野蛮なトランプ氏。付き合いにくい大統領が4代続いても、問題が構造的だと捉えるのは間違っていると感じている。

米国の掲げる目的に、欧州は地理的な意味で適合しない。ナチスやソ連の脅威があった時は、欧州は世界で最も重要な場所で、それ故に米国の関心を集めた。しかし今は軍事力と一枚岩の外交政策がなければ始まらない。軍事力の増強にはお金がかかり、外交面での協調は政治的にほぼ不可能だ。それができなければどうなるかをEUはこの約1カ月で思い知ったはずだ。

とはいえ、フランスは簡単に言いくるめられてしまういくつかの欧州諸国よりは米国をよく見ている。米国は独自の利害を持つ点で他国と変わらない。孤立主義ではなくアジア重視の立場を強めているだけだ。同じように強大な軍事力を持つ国を尊重する傾向もある。アフガン撤収で示された通り、軍備への寄与が少ない同盟国に礼を尽くして事前に相談することはない。

EUが今回学ぶべき教訓は明快だ。それは現在のEUに至る欧州統合の基盤をつくった国の苦い経験と引き換えに得られた。かの国にとっては屈辱を味わう一方、自らの正しさが証明されたという点で複雑だろう。

By Janan Ganesh

(2021年9月22日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2021. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.
英フィナンシャル・タイムズ(FT)と日経新聞の記者が、アジアのテクノロジー業界の「いま」を読み解くニュースレター「#techAsia」の日本語版をお届けします。配信は原則、毎週金曜。登録はこちら。
https://regist.nikkei.com/ds/setup/briefing.do?me=B009&n_cid=BREFT053

多様な観点からニュースを考える

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

伊藤さゆりのアバター
伊藤さゆり
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究理事
コメントメニュー

ひとこと解説

英国が離脱したEUでも、中国への脅威認識は高まっているものの、「競争相手であり、パートナーであり体制上のライバル」という位置づけ、関与政策を手放した米国よりも対話を重視する姿勢。EU加盟国間の温度差もあります。

米国がインド太平洋戦略強化のため、深いレベルで情報を共有し、意思疎通もより円滑であろうファイブアイズの英豪との関係構築を優先したのはある意味当然。

欧州の「戦略的自立」を模索してきたフランスは、米国から暗黙の支持を取り付ける機会とするかもしれません。

連邦議会選後のドイツで、最終目標として欧州軍を支持するSPD主体の政権が誕生すれば、ドイツの姿勢もより積極的になるかもしれません。
2021年9月27日 14:30 』