対中経済政策、米政権内で硬軟両論 「301条」も浮上

対中経済政策、米政権内で硬軟両論 「301条」も浮上
産業界は「制裁関税撤廃を」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN21C3J0R20C21A9000000/

『【ワシントン=鳳山太成】中国に科す経済制裁の扱いを巡り、米政権内が揺れている。「通商法301条」に基づく新たな制裁関税の発動を視野に中国の産業補助金を調べる案が浮上。一方、気候変動対策で協力を得るため、強硬策を控えるべきだとの意見もある。産業界は制裁解除を求めており、バイデン大統領は慎重に判断する構えだ。

「強硬派と穏健派がそれぞれの提案を出している」。米政府関係者は政権内の現状をこう説明する。政権が発足した1月以降、対中政策を点検してきたが、まだ結論を出していない。

強硬派は圧力強化を主張する。新たな制裁発動に道を開く通商法301条に基づき、中国の補助金を調べる案が取り沙汰されている。トランプ前米政権は301条の調査で中国の知的財産権の侵害が不当だと認定し、2018年7月以降に制裁関税を課した。

米中ではトランプ前政権の20年2月、制裁緩和に向けた「第1段階の合意」が発効したが、補助金など構造問題は「第2段階」に先送りされていた。新たな制裁をちらつかせながら、中国を交渉の場に引き出し、不公正な貿易慣行の是正を迫る戦略だ。

一方、穏健派は圧力を強めれば、中国と温暖化対策で協調できなくなると主張する。中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席はバイデン氏との9月上旬の電話協議で、米国の対中政策が関係悪化を招いていると述べ、修正を求めた。

ケリー米大統領特使(気候変動問題担当)は22日、米テレビを通じ、数週間内に中国を訪れると明らかにした。10月末からの第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)を前に、脱炭素で中国の協力を引き出す狙いだ。

制裁緩和を求める米産業界は態度を明らかにしないバイデン政権に不満を募らせる。主な米経済団体は8月、中国との貿易交渉再開と制裁関税の撤廃を求める書簡を政権側に送った。

中国で事業を展開する米企業で構成する米中ビジネス評議会のクレイグ・アレン会長は「(制裁)関税は米国の損害だ。中国の補助金問題は世界貿易機関(WTO)で対処すべきだ」と強調する。

仮にバイデン政権が制裁緩和に動けば、22年秋の中間選挙を前に野党・共和党から「弱腰」と批判されるのは必至だ。301条調査を進めれば「(実際には)制裁を科さなくても、表面上、強硬姿勢を示せる」と、米政府関係者は解説する。

米企業は、中国以外からは調達が難しい特定品目に限り制裁関税の適用を免除する制度の復活を求める。バイデン政権がこれを受け入れれば、産業界の負担を減らしながら弱腰批判を避けられるとの見方はある。

バイデン政権は、日本や欧州連合(EU)と協調して対中政策を判断すると繰り返してきた。トランプ前政権はWTOで日欧と、中国の補助金問題に取り組んだ。米国が単独行動をとれば、日米欧の足並みが乱れる可能性もある。

中国と台湾は9月、環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟を相次ぎ申請した。TPP復帰に慎重なバイデン政権はインド太平洋における通商の主導権争いで後れを取っている印象がある。対中で判断が遅れれば、同盟国が不信感を強めかねない。』