アフリカ、「グリーン水素」事業相次ぐ

アフリカ、「グリーン水素」事業相次ぐ 欧州市場目指す
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『【カイロ=久門武史】アフリカで再生可能エネルギーを使って製造する「グリーン水素」の事業化を目指す動きが相次いでいる。風力や太陽光が豊富で、再生エネのコストが比較的安く、脱炭素に熱心な欧州に近い利点がある。グリーン水素は次世代エネの一つとして国連も普及を後押しするが、輸送網の整備を含め課題が山積している。

燃焼後に水が発生するだけの水素は、将来のクリーンエネルギーとして世界で研究が進む。水を電気分解してできる水素は、化石燃料から得られる水素と区別し、グリーン水素と呼ばれている。

「再生エネのコスト低下はグリーン水素の新たな可能性を示した」。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の事務局長は16日、国連関連のイベントで主張した。脱炭素に熱心なドイツ政府は22日の閣議後、水素の活用拡大に向けた声明を出した。念頭にあるのはグリーン水素だ。

欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会は2020年の「水素戦略」で、アフリカ北部を「コスト競争力のある潜在的供給元」と位置づけた。

北部ではモロッコがいち早く動き出した。7月、グリーン水素とアンモニアを製造する総投資額75億ディルハム(約1000億円)の事業計画を明らかにした。アイルランド企業などが手がけ、22年の着工を目指す。モロッコは省庁横断の「水素委員会」を19年に立ち上げ、ドイツやポルトガルの協力を得ることで合意済みだ。

エジプトも8月、電力公社が独シーメンス・エナジーとグリーン水素の開発に向けた覚書に署名した。100~200メガワットの水電解装置を使った試験事業に着手する。同公社は7月、イタリア炭化水素公社とも事業化調査の実施で合意した。

エジプトの新・再生エネルギー庁のムハンマド・ハヤト長官は取材に「(同国が)地中海と紅海に面し、地域と世界の水素を供給する要衝にある」と述べ、グリーン水素開発に40億ドル(約4400億円)を投資する方針を示した。

地中海に臨むチュニジアも市場開拓に向けドイツと覚書を交わした。

国際エネルギー機関(IEA)は地球温暖化防止の国際枠組み「パリ協定」を順守した場合、世界の水素全体の需要は70年に約5億2000万トンと、運輸部門をはじめ最終エネルギー消費の13%を占めると予測する。19年の7100万トンから急増する。

IEAは太陽光と陸上風力発電を使ったグリーン水素の製造コストが将来、アフリカの北部と南部、中東や中国の一部で1キログラムあたり2ドル以下に低下すると予測する。ほかの地域に比べ競争力が高い。英米系法律事務所DLAパイパーは、モロッコで同1ユーロ(約130円)まで下がる可能性があると指摘する。

南部の砂漠地帯にあるナミビアは8月、グリーン水素製造の事業化調査の開始でドイツと合意した。同国から4000万ユーロの支援を受ける。太陽光、風力に恵まれ、国土面積は日本の2倍以上でも人口は250万人強にすぎない。再エネ投資の余地が大きい。

ドイツのカーリチェク教育・研究相は、ナミビアのグリーン水素製造コストが1キログラムあたり1.5~2ユーロになるとの見方を示した。「世界一、競争力の高い低価格になりうる」という。

南アフリカの産業開発公社は同国のエネルギー大手、サソールと共同研究を始める。

アフリカ諸国は、グリーン水素が欧州からの投資の呼び水になると期待する。フォンデアライエン欧州委員長は15日の演説で「私たちはグリーン水素の市場をつくるためアフリカとともに投資する」と強調した。

課題は多い。アフリカがグリーン水素の供給国として飛躍するには、欧州のほかの消費国ともパイプを築き、供給先の多様化を目指す必要がある。欧州へ輸出するには地中海を通るパイプラインや液化水素の運搬船も欠かせない。イスラム過激派の活動を抑え、治安を安定させなければならない。』