試される対中包囲網 TPPが覇権争いの場に

試される対中包囲網 TPPが覇権争いの場に 
日本は台湾申請「歓迎」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA232DY0T20C21A9000000/

『環太平洋経済連携協定(TPP)は中国に加えて台湾も加盟を申請したことで、自由主義と権威主義の覇権争いの舞台の様相を呈してきた。茂木敏充外相は23日、台湾の申請を「歓迎したい」と表明したが、加盟国の対応には温度差がにじむ。本来は対中包囲網を期待されたTPPにとって試練となる。離脱した米国が身動きをとれない中、自由主義陣営の一角として日本は重責を担う。

訪米中の茂木氏は23日(現地時間22日)のオンライン記者会見で「台湾は自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値を共有し、密接な経済関係を有する極めて重要なパートナーだ」と強調した。「台湾がTPPの高いレベルを完全に満たすかどうかしっかりと見極める必要がある」とも説明した。

16日に加盟申請した中国には「歓迎」といった表現は使わず、「高いレベルを満たす用意ができているかしっかり見極める必要がある」と述べるにとどめていた。台湾への対応との差が浮き彫りになった。

TPPは高水準の自由化や透明性の高い投資ルールなどを共有する巨大経済圏をつくり、自国に都合の良いルールをめざす中国を押さえ込む狙いがあった。米国の離脱で盟主が不在となった隙をついて中国が加盟申請した。加盟が認められれば、その後の新規加盟に拒否権を持つ。

環太平洋連携協定(TPP)への加入申請の経緯などを説明する台湾行政院の鄧振中政務委員=23日、台北(行政院提供・共同)

台湾の通商交渉トップは23日の記者会見で、中国が先に加盟すれば台湾が「不利」になるとの判断が加盟申請につながったと表明した。

中国はオーストラリアが新型コロナウイルスの発生源について独立調査を求めたことに反発し、同国からの輸入品に高関税を課したり、輸入を制限したりした。自由な国際秩序を軽視する中国を受け入れれば、TPPの本来の役割がゆがむおそれがある。

台湾海峡を巡って中台対立が緊迫する中、安全保障の観点からの判断も問われる。TPP加盟には現メンバー国の全会一致の同意が必要となる。

加盟国の多くは様子見姿勢だ。カナダの外務省は22日、台湾の申請について日本経済新聞の取材に「参加には高い基準と野心的な市場アクセスの約束を満たし、順守することが求められる」との説明にとどめた。

オーストラリアのテハン貿易・観光・投資相も23日、「他の加盟国と協力し、総意に基づいて台湾の申請を検討する」と述べるにとどめ、姿勢を明確にするのは避けた。中国の加盟申請に歓迎の意向を表明したシンガポールとマレーシアは、台湾の申請に関しては態度を明らかにしていない。

中国側は中国大陸と台湾が1つの国に属するという「一つの中国」を唱える。台湾の加盟を阻止するため、関係国への外交的な圧力を強める公算が大きい。TPP参加国は自由なルールの堅持で結束を堅持できるかどうかが試される。

外務省の発表によると、茂木氏は記者会見に先立つブリンケン米国務長官との会談で米国にTPP復帰を促した。しかし今のところは望み薄だ。

バイデン米大統領が支持基盤として重視する労働組合はTPPに反対する。野党・共和党でも復帰に否定的な意見が根強い。与党・民主党の苦戦が予想される2022年秋の中間選挙を前に、あえて危険を冒す政治的な余力は乏しい。

サキ大統領報道官は再加盟の交渉段階には「明らかに達してない」と語る。加盟国が中台の間で中国側になびかないよう、外部から外交で働きかけるしかない。

主要7カ国(G7)の一角として自由主義陣営が主導する国際秩序を守る立場の日本は重責を負う。訪米中の茂木氏はTPP加盟交渉中の英国のトラス外相とも会談し、加盟交渉について話し合った。

伝統的に自由貿易の志向が強い英国の加盟交渉なども通じ、高水準の貿易自由化や透明性あるTPPのルールを強固にすることで、中国に対しても妥協しない姿勢が求められる。

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福井健策
骨董通り法律事務所 代表パートナー/弁護士

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分析・考察 一番避けるべきは、中・米といった非メンバーの大国の加入問題でゴタゴタして、現在のTPPの運営がおろそかになることでしょう。

TPP11は既にGDPは世界の13%、人口はEUをしのぎます。それが過去3年間で何を達成できたのか、この先どんな協力を進めて何を対外発信するのか、これが第一ではないでしょうか。

例えば高い知的財産権保護と言いますが、実際にはメンバーのベトナムはオンライン海賊版の中心地で、海賊版対応の域内協力などまだまだです。

中国がどう宿題をクリアするかなどは中国側に考えさせて何度でも説明させれば良く、まずはTPP11がどう良いネットワークを構築するかだと思えます。

2021年9月24日 8:01 (2021年9月24日 8:29更新)
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渡部恒雄
笹川平和財団 上席研究員

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分析・考察 TPPが中国に対して持つ「戦略性」については米国内でも意見が分かれてきました。

TPP推進を進めたオバマ政権時代に、バイデン政権のキャンベルNSCインド太平洋調整官が、中国を念頭にTPPは戦略的なものと発言したところ、同じ政権のUSTRの次席がTPPに戦略性はないと反論したことがありました。

現在のバイデン政権はそこまで意見は割れていないにしても、民主党の支持組織の労組の立場を考えると参加は難しそうです。

米国離脱後のTPPを主導してきた日本が、米国の緊密な同盟国でTPP加盟国のオーストラリアやカナダなどと、本来の戦略的目標「中国の国際ルール尊重」を達成させる方向で動くことが重要です。

2021年9月24日 7:58いいね
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