自民党の「保守」とは何か

自民党の「保守」とは何か 御厨貴・東大名誉教授に聞く
政界Zoom
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA201440Q1A920C2000000/

 ※「自民党」に籍を置いている以上、「あなたは、”保守”ですか、”革新”(もしくは、そのソフトな言い換えの”リベラル”)ですか?」と(二項対立、二分類法)で聞かれれば、そりゃ「”保守”です。」と答えるだろう…。たとえ、”リベラル寄り”であってもな…。

 ※ 「堅実な人生観を持てば生きていけると考える。それが、非常に曖昧だが保守といわれるものだと思う」」…。

 ※ なるほど、御厨さんの中では、”保守”とは、そういうものなんだな…。

『自民党総裁選(29日投開票)で4人の候補者は異口同音に「保守」を語る。それぞれの主張から幅の広い概念のようにみえる。今の日本政治で保守とは何を指すのか。自民党政治に詳しい御厨貴・東大名誉教授(日本政治史)に聞いた。

御厨貴・東大名誉教授
――「保守」をどう定義しますか。

「人々の住む社会への感覚で、分断されかかっているところはあるが、堅実な人生観を持てば生きていけると考える。それが、非常に曖昧だが保守といわれるものだと思う」

「社会を批判して、分断されているから、なんとかしないといけないと考えるのがいわゆるリベラルだ」 

「保守は、昔は自民党とイコールだった。今は自民党は総じてイデオロギー的に、かなり分かれたところがあって、戦前の路線を思わせるような保守もある」

「リベラルに近寄り、話ができるような保守が自民党の中に確立しているといえるだろうか」

――自民党における保守本流とは何ですか。

「やはり吉田茂氏の旧吉田派だろう。それが分かれた池田勇人氏の宏池会(現岸田派)の系統もそう。佐藤栄作氏は宏池会よりはやや右寄りだ」

「本当の本流は実は池田氏のあと大平正芳氏、宮沢喜一氏へとつながる。ただ自分たちが保守本流だとあまり主張しない」

「麻生太郎氏は宏池会ではない。ただやはり吉田氏の孫だ。吉田直系だと本人は思っているだろう。祖父の血をひいて、若いころから横で政治を眺めていた。そういう自負心があるのではないか」

――傍流は。

「長い戦後の政治の流れで言えば、中曽根派や三木派が第2保守党の系列だ。中曽根康弘氏は傍流という言い方はしなかった」

「世の中を変えていくが、持っている思想は保守だと強調した。三木武夫氏もそれに近い。傍流から2人首相が出たのはすごい」

「清和会(現細田派)につらなる岸信介氏をどう見るか。岸氏は自分は本流だと思っていたが、永田町の感覚からすると保守本流ではないとなる」

「その後、いろいろな展開があって、清和会が大きくなると、実は自分たちも保守本流に入っているのではないかという話になる。その意味でも保守は時代によって、融通むげという気がする」

――2000年代以降は清和会の時代です。本流・傍流という意義づけが曖昧になってきた印象を受けます。

「その通りだ。自民党は保守とは何か常に定義したり議論したりすることはなかった。谷垣禎一氏が野党時代に総裁になったとき、保守を定義し直すと言った。ところが定義を自民党としてはしていない」

(左から)河野、岸田、高市、野田の各氏(17日、自民党本部)
――総裁選に出馬した高市早苗氏は安倍晋三前首相が支持しています。

「安倍氏は実務ができてイデオロギーがある人間を求めているのではないか。高市氏は総務相の仕事をこなした。そういう政治家を育ててきたのが安倍氏のこの10年間の長期戦略だったと考える」

――河野太郎氏をどうみますか。

「動物的な勘で動いていく点で、祖父の河野一郎氏に似ている。父の河野洋平氏はリベラルだ。原発の問題などで、首相になったら考え方の本質を変えるとは思わない」 

――岸田文雄氏や野田聖子氏を保守の文脈ではどう捉えますか。

「岸田氏は外相のときに、集団的自衛権の行使ができるという憲法の解釈の変更を認めた。そのときに彼は『宏池会の思想も時代に合わせて変わっていく』と言った。全く違う思想に転じるという話ではない。飛躍がないし、安定している」

「野田氏は個人の権利を広げたいと主張する。日本の伝統的な保守とは違うかもしれない」

聞き手から 4候補で多様な捉え方

保守とは何か。自民党総裁選で向き合うテーマである。英国や米国などそれぞれの国で保守の定義は異なる。日本で保守は伝統と慣習を重んじて急激に変わるのを望まない考え方とされる。

一方で、例えば憲法を巡って改憲は、変化を好まない保守勢力が訴え、護憲は、現状からの改善を唱えるリベラル勢力の主張と理解されている。保守とリベラルの持つ言葉の意味がねじれているようにみえる。

「保守というのは昔、自民党とイコールだった」。御厨氏はこう振り返りつつ、「自民党における保守は融通むげ」と指摘した。

保守の解釈の多様性と変化――。現在の総裁選の4候補の議論を聞いていると、御厨氏のいう保守の捉え方と重なる点が多い気がする。

政治部長(政治・外交グループ長) 吉野直也
政治記者として細川護熙首相から菅義偉首相まで14人の首相を取材。財務省、経済産業省、金融庁など経済官庁も担当した。2012年4月から17年3月までワシントンに駐在し、12年と16年の米大統領選を現地で報じた。著書は「核なき世界の終着点 オバマ対日外交の深層」(16年日本経済新聞出版社)、「ワシントン緊急報告 アメリカ大乱」(17年日経BP)。
吉野直也政治部長と高橋哲史経済部長が自民党総裁選、衆院選とその後の経済・外交の行方を展望するライブ配信イベントを27日午後6時から開きます。お申し込みはこちらです。

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