中国恒大、共産党が距離 習氏と異なる派閥と親密か

中国恒大、共産党が距離 習氏と異なる派閥と親密か
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『中国の不動産大手、中国恒大集団を巡り、習近平(シー・ジンピン)指導部で擁護論が鳴りを潜めている。借金頼みの放漫経営に批判があるうえ、恒大は胡錦濤(フー・ジンタオ)前国家主席らを輩出した党の青年組織、共産主義青年団(共青団)と親密とされる。「1強」の習国家主席と距離があるのが一因との見方もある。

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7月1日、北京市で開いた中国共産党100年の式典に参加し、天安門の楼上で記念撮影に興じる1人の男性がいた。恒大創業者でトップの許家印氏だ。党幹部しか近づけない厳戒態勢で天安門に登ったのは、党とのパイプを示すためだ。

中国では共産党が国有、民間を問わず企業の生殺与奪を決める。許氏が天安門に登ったことで市場では一時「恒大は難関をくぐり抜けた」との観測が浮上したが、実際には党内では擁護論は少なかったようだ。

運営するサッカークラブに高額年俸で外国人選手を引き抜いたり、本業と関連がうすい電気自動車に投資したりと経営の危うさは以前から指摘された。「虚業から実業へ」を掲げる習指導部にとっては遠ざけたい相手だ。

政治的な側面を指摘する声もある。許氏は共青団と親密な関係とみられてきた。2009年11月に恒大は急拡大のきっかけとなった香港証券取引所への上場を果たした。当時の党トップの胡錦濤氏は上場11カ月前、許氏と面会し貧しい学生を支援した功績をたたえた。

恒大が本社を構える広東省のトップも当時、共青団出身の汪洋(ワン・ヤン)広東省党委員会書記(現・全国政治協商会議主席)だった。上場には時の政権の中枢を占めた共青団の後押しがあったとみる向きは多い。胡錦濤氏も7月の党100年の式典に姿を見せ、健在ぶりをアピールした。

広東省は「共青団の地盤」といわれた。17年6月、広州で許氏は胡春華(フー・チュンホア)広東省党委員会書記(現・副首相)と会談し、貧困救済活動に4億元(約70億円)を寄付すると表明した。2年間で寄付総額は6億元にのぼった。

米誌フォーブスは17年に許氏を「中国一の富豪」に選んだ。広東省トップをへて胡春華氏は副首相に就き、いまも共青団のホープだ。許氏と共青団の親密さが浮かぶ。

12年に党トップの総書記に就いた習氏は組織力を誇る共青団を遠ざけてきた。党と政府の主要ポストから共青団出身者を外し、力をそいだ。広東省のトップも自らの側近の李希氏に交代した。いまや省幹部に共青団出身者はほぼいなくなった。

習氏が共青団出身の李克強(リー・クォーチャン)首相や汪氏、胡春華氏と溝があるとの見方は絶えない。とくに汪氏や胡氏は一時、習氏の後継者との観測もあった。共青団と近い恒大の危機は習氏にとって「対岸の火事」と映ったとしても不思議ではない。

9月中旬、恒大の経営危機がささやかれるなか、習氏は内陸の陝西省に視察に出かけた。マクロ経済運営の司令塔、劉鶴(リュウ・ハァ)副首相らを連れて北京を留守にしたことで「習指導部は恒大問題を静観する」との見方が広がった。

習氏は20年10月、恒大が本社を置く広東省深圳市を訪れ、経済特区の設立40年を記念する式典に参加した。式典にあわせ、特区40年にちなんで40人の「模範人物」が表彰されたが、許氏は外れた。

経済の危機では果断に動いてきた中国共産党。恒大問題でいまひとつ動きが鈍いのは、習氏と恒大の距離も背景にある可能性がある。党内の事情を知る有識者は「(共青団という)意に沿わない部下の地盤沈下には手を貸さない」と語る。

もっとも、海外投資家も注目する恒大の処理を誤れば、中国の金融システムへの不信すら招きかねない。18、19日には経済政策を担う韓正(ハン・ジョン)筆頭副首相を深圳に派遣し、広東省トップの李希氏らと地元を視察させた。習指導部が重い腰を上げようとしている可能性はある。

(北京=羽田野主)

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