FRB議長「22年末には利上げに適した状況に」

FRB議長「22年末には利上げに適した状況に」 会見要旨
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN22ET40S1A920C2000000/

『米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は22日、米連邦公開市場委員会(FOMC)終了後に記者会見を開いた。中期的な経済・政策見通しについて、「FOMC参加者の半数が(ゼロ金利政策の解除に)望ましい経済状況が2022年末には実現すると考えている」と述べた。主な発言と質疑応答は以下の通り。

きょう、我々は政策金利をゼロ近傍に据え置き、一定量の国債購入を維持すると決めた。金利とバランスシートに関する我々の力強いガイダンス(指針)と合わせて、金融政策が、経済が回復をなし遂げるまで強く支えることを保証するだろう。ワクチン接種の進捗と前例のない財政出動も強く回復を支えている。

経済活動の指標や雇用指標は引き続き改善している。21年前半の実質国内総生産(GDP)は(年率)6.4%増と力強いペースで、後半も力強いペースを維持すると広く期待されている。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の打撃を最も受けた分野も改善しているが、感染拡大が回復を遅らせている。

家計による消費は経済再開を受けて年前半はとりわけ急速に増えたが、7~8月は感染拡大で特に旅行や飲食店で減速した。産業によっては、短期の供給制約が活動の足かせとなっている。特に世界的な半導体不足で生産量が減っている自動車業界で深刻だ。こうした状況を踏まえ、FOMC参加者は21年の経済成長率予測を6月時点と比べいくらか下方修正した。それでも依然として強い成長率を予測している。

雇用情勢は改善し続けてきた。8月は特に娯楽やホテル産業などパンデミックの影響を受けやすい分野で雇用の回復が鈍った。子供のケアの必要性やウイルスへの恐れが重荷となっているようだ。今後数カ月でこうした要因は薄れ、より急速な雇用増につながるだろう。FOMC参加者は雇用情勢が改善し続けるとみている。

物価上昇は進んでおり、落ち着くまで数カ月は高い物価上昇率が続くだろう。経済再開で消費が持ち直すのに伴い、特に短期的な供給制約が物価の上昇圧力となっている。供給制約は予想より大きく長引いているため、FOMC参加者は21年の物価上昇率予測を上方修正した。供給制約の影響は今こそ目立つが、次第に薄れ、物価上昇率は我々の長期的な目標(2%)に向けて下がっていくだろう。予測の中央値は21年は4.2%だが、翌年には2.2%に下がる。

金融政策の枠組みでは物価の安定と最大雇用の実現に向けた我々の能力を高めるために、期待物価上昇率が固定されることが重要だ。もし物価上昇の道筋や、長期的な期待物価上昇率が実際に、長期にわたって我々の目標を超えるような兆候があれば、金融政策の構えを調整する用意がある。

FRBの施策は米国人のための最大雇用と物価安定の促進という我々の使命によって導かれる。金融システムを安定させることにも責任がある。資産購入は重要な施策であり続けた。パンデミック初期に金融安定性と市場機能を保つよう支えた。経済を支えるための緩和的な金融緩和環境を醸成するのに役立った。我々は本日の会合で、我々の目標に向けての進捗を議論した。20年12月に資産購入に関するガイダンスを導入してから、経済は目標に向かって前進した。

このまま予想通りの幅広い進展が続けば、FOMCは、購入の減額が早急に正当化されるとの判断を下すだろう。我々は経済状況が我々の基準を満たした際の適切なテーパリング(量的緩和の縮小)のペースについても議論した。まだ何の決定も下していないが、参加者は概して回復が軌道に乗る限り、来年の中ごろに終える緩やかなテーパリングが適切であろうとの見方を示した。我々がバランスシートの拡大を終えても、長期債の保有を増やしたことは緩和的な金融環境を支え続けるだろう。

今後の資産購入の減額の時期やペースは、政策金利の引き上げの時期に直接的な示唆を与えるものではない。金利に関しては、異なる、より厳重な一連の評価を経る。我々は労働市場が最大雇用と評価できる水準に達するまでは、政策金利の誘導目標を引き続き現状の0~0.25%で維持するのが適切だと考えている。物価上昇率は2%に達し、しばらくの間2%を適度に超えるような軌道だ。

FOMC参加者の半数はこれらの望ましい経済環境が22年末までに実現すると考えている。その結果、適切な政策金利の水準の予測の中央値は、22年の下限値をわずかに上回る。参加者は24年にかけて政策金利が長期的な見通しを少し下回る水準まで上がる、緩やかな金融引き締め策を予測している。

これらの予測は委員会の決定や計画を示すものではなく、今後数年の経済がどこに向かうのか誰も確信を持ってはいない。あらゆる予測より重要なのは、最大雇用と物価安定目標を達成するまで金融政策は極めて緩和的であり続けるという事実だ。

一問一答
――テーパリングに向けた経済状況をどう見ているか。9月に、想定していた雇用回復が見られない場合は。

「物価と雇用で『さらなる著しい進展』が見られるかについてだが、物価上昇率は我々の目標を上回る水準に上昇しており、基準が満たされたと判断している。問題は完全雇用だ。雇用は目標の50~60%程度まで到達したといえる。多くのFOMC参加者が雇用はかなり進展したとみているが、もう少し進展がみたいという者もいる。私自身は目標達成間近だと見ている」

「物価と雇用の両方の目標を達成したと我々が判断したら、テーパリングを始める。決定する時期は早ければ次の会合になるかもしれない。経済が想定通りに回復して適切と判断すれば、次回の会合で容易に前進できるだろう。多くの参加者は既に『さらなる著しい進展』が満たされていると感じており、私自身もほとんど満たされていると考えている。個人的には非常に力強い雇用統計を確認する必要はないと思うが、良い(9月の)雇用統計を期待している」

――テーパリングの開始時期についてこれまでどんな議論がなされたか。利上げの時期に関してはどうか。

「もっと早くテーパリングを始めたいという意見もあった一方で、早めると金融システムの安定性が懸念されるとの意見もあった。ただ22年半ばまでにはテーパリングを終えるのが適当という点では参加者の幅広い支持を得た。利上げの判断は労働市場の状況次第だ。労働市場は多くで逼迫を示している一方で、ひずみもある」

「こうした不均衡は物価上昇率を2%を緩やかに上回る状況に導くだろう。22年を通じて物価上昇率が(2%よりも)大きい状況を保てば利上げの条件はそろう。22年以降の物価上昇率は2.1~2.2%程度と小幅の上振れにとどまるとみている。22年末の経済予測をみると、何人かは非常に低い失業率を予測しており、強い労働市場を意味する。参加者の中で23年まで利上げをしないとみるのは1人だけだ。利上げ時期の見通しは比較的統一されているといえる」

――物価上昇が想定外に加速した場合、テーパリングを終える前に利上げを迫られる可能性はあるか。

「それは予測していない。必要な場合は、テーパリングの速度を調整することが可能だ」
――テーパリングの後、バランスシートの縮小などは検討するのか。

「テーパリングにはいくつか考慮しなければならない関連する問題がある。バランスシートの規模もその1つだが、まずは緩和縮小の決定をしてから、これらの問題に取り組みたい」

――企業債務についてどの程度懸念しているか。(中国の不動産大手)中国恒大集団の債務問題は、警戒を促すものとみなすか。

「米国企業による債務不履行は現状極めて少ない。中国恒大集団の状況は、新興国市場で非常に大きな債務を抱えている中国固有の状況に思える。米国による直接の投融資は多くなく、米国の企業部門とあまり関連付けられるとは考えていない」

――米議会が連邦政府の債務上限を引き上げない場合、経済への影響は。

「米国が期日通りに債務を返済できるよう、債務上限を適切に引き上げることは非常に重要だ。(引き上げに)失敗すれば、経済や金融市場に深刻な打撃を与える可能性がある。米国は債務不履行に陥るべきではない。失敗した場合、FRBなどが市場や経済を守ることができると考えるべきではない」

――自身のFRB議長の再任可能性について、ホワイトハウスと話し合ったか。

「米国民のための日々の職務に集中しており、その件にはコメントすることはない」

――金融監督統括の副議長にはどのような役割があるのか。現クオールズ副議長が10月に任期を終えた後の方針は。

「ドッド・フランク法(米金融規制改革法)によって作られた役職で、規制の枠組みを設定する責任がある。新たに就く人が現在の規制や監督状況を踏まえて、適切な変更を提案することは正しく、私はそれを歓迎する。任期に関しては新しい情報を持ち合わせていない」

――ダラス地区連銀のカプラン総裁などFRB高官が株式の売買をしていた事実を把握していたか。適切だと思うか。

「把握はしていなかった。米国民の信頼を維持することは我々の任務を遂行する上で欠かせない。よってFRB高官による金融商品の保有などが倫理規定に反するかの調査を指示した。規定では銀行株の保有禁止や、FOMC直前と開催中の取引禁止、FRB高官による金融商品の売買や保有についての開示などが定められている。この枠組みは長らく適用されてきたが、国民の信頼を維持するのに不十分との意見もある。今後、状況を徹底的に精査し、規定を厳しくするか検討する」

(米州総局=大島有美子、伴百江、長沼亜紀、野村優子)

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