中国、金融危機回避に一歩 恒大の前途なお多難

中国、金融危機回避に一歩 恒大の前途なお多難
恒大、23日の元建て債は利払い実施へ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB2249Y0S1A920C2000000/

『【上海=土居倫之】中国の不動産大手、中国恒大集団は22日、期日を23日に控える人民元建て債の利払いを実施すると発表した。同じく23日に予定するドル建て債には30日の猶予期間があり、この日に債務不履行に陥る可能性は低くなった。中国政府は金融危機を阻止する姿勢を鮮明にしており、混乱回避をいったん優先する。だが恒大の年内の利払いは社債だけで700億円を超え、2022年からは多額の満期償還を控える。前途はなお多難だ。

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23日の元建て債の利払い額は2億3200万元(約39億円)の見込み。中秋節の21日、恒大の創業者でトップの許家印氏は「恒大は必ず暗闇から抜け出すことができる」とのメッセージを社員に送り、経営再建を断念しない姿勢を示していた。

23日には人民元債と並んでドル債の利払い8353万ドル(約91億円)がある。恒大は22日時点で利払い実施の有無を明らかにしていないが、猶予期間があるため23日にはデフォルトは確定しない。

22日は恒大株が上場する香港市場は休場だった。独フランクフルト市場に上場する恒大株は22日、人民元債の利払い実施発表を受けて、2割超上昇する場面があった。

恒大の資金繰りは来年以降が正念場だ。恒大は22年に計6本、残高計76億ドル相当の社債償還期限を迎える。22年満期の社債の流通市場での利回りは320~630%となっており、新規発行による借り換えは難しい。

ドル債の投資家は分散しており、リスクは限定的だ。リフィニティブによると、23日利払いのドル債は最も保有が多い米TCWアセットマネジメントでも1.48%にとどまる。ただ恒大債は、特定の社債がデフォルトすると、ほかの社債も一斉にデフォルトしたと見なされる「クロスデフォルト」の可能性がある。

習近平(シー・ジンピン)指導部は企業の信用問題が金融機関に飛び火するリスクを回避したい考え。金融システムに波及すると、不動産業界にとどまらず広い範囲でマネーの流れが凍り付く恐れがあるためだ。中国共産党の経済政策の重要会議、中央財経委員会では8月、「共同富裕(ともに豊かになる)」と並んで金融リスクの解消を議題とした。一定の債務不履行を認める一方、銀行の連鎖破綻や預金の取り付け騒ぎは防ぐ方針だ。

中国国内の金融市場の反応は今のところ限られる。短期金融市場では、上海銀行間取引金利(SHIBOR)翌日物が2%台で低位安定している。

中国政府による金融システム安定化の代表的な取り組みが経営不振銀行への公的資金の注入だ。中国政府は昨年、地方政府がインフラ債券の発行で調達した資金を中小銀行の公的資金向けに転用することを認めた。金額は2000億元にのぼり、すでに多数の中小銀行が公的資金の注入の対象となっている。

リスクはくすぶる。恒大は中国東北部の地方銀行、盛京銀行の筆頭株主だ。同行の総資産は1兆元に対し、資本は約800億元にとどまる。同行と恒大がどのような取引をしているかは公表されていないが、7月末に中国の格付け会社が同行を「顧客と業種の集中リスクに直面している」として格下げした。同格付け会社によると「単一顧客向け与信が同行の資本に占める割合が高水準で、規制上限を超えている」という。

習指導部が掲げる共同富裕は、富裕層からの所得再分配を強化し、貧困層を引き上げるとともに中間層を分厚くする構想だ。投機対象となる不動産は融資や販売価格など強い規制にさらされている。

中国では海航集団や紫光集団など大型企業が社債のデフォルトを起こした末、「破産重整」と呼ぶ法的整理の枠組みで再建を進めることになった。金融システムの動揺は抑えられてきたが、恒大はドル債だけで195億ドル(2兆1000億円)の残高を抱える。恒大問題が万一金融危機に発展すれば、損失は世界に広がる。

米格付け会社S&Pグローバルは20日、「中国政府は恒大を直接支援することはない。政府が介入するのは、多数の不動産会社が破綻し、中国経済にシステミックリスクが生じた場合に限られる」との見解を公表した。中国政府は恒大の全面救済は避けつつも、金融システムの破綻を防ぎ切れるかの難路に差し掛かる。

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