「恒大問題は中国特有」パウエル氏発言好感(NY特急便)

「恒大問題は中国特有」パウエル氏発言好感(NY特急便)
米州総局 宮本岳則
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN22EZD0S1A920C2000000/

『22日の米株式市場は買い戻し優勢の展開となった。米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は11月にも量的緩和縮小(テーパリング)の開始を決めると表明したが、市場のほぼ想定内の内容だった。中国恒大集団の債務不安について「中国特有の問題」と発言したことも、投資家に安心感をもたらした。
「米国株は『FOMCでサプライズなし』を見越して上昇していた」。米サスケハナ・インターナショナル・グループのデリバティブ戦略共同責任者、クリストファー・マーフィー氏はこう指摘する。ダウ工業株30種平均は反発して始まり、声明公表前に上げ幅は一時、400ドルを超えていた。特にエネルギーや素材関係など景気動向に左右されやすい銘柄の上昇が目立った。

マーフィー氏が注目したのはデリバティブ(金融派生商品)市場の動きだ。22日の朝方、10月以降の米株相場上昇を見越したオプション取引に5000万ドル(約55億円)が投じられていた。午後も同様の取引が見られたという。中国恒大問題を受けて、ダウ平均は20日に7月以来の下げ幅を記録したが、「大口投資家が上昇再開を見込んで動いた」と分析する。

2013年5月に当時のバーナンキFRB議⻑が意図せず引き起こした市場の動揺を教訓に、パウエル議長は時間をかけて「地ならし」を進めてきた。8月のジャクソンホール会議の演説では、利上げとテーパリングを切り離して考えていることを強調し、テーパリング決定の自由度を高めた。こうした戦略が功を奏し、市場の「サプライズなし」予想につながっていたとみられる。

パウエル議長はこの日の記者会見でテーパリングについて「来年半ば」までに終えるのが適当との見解を示したうえで、11月にも開始を決定すると表明した。終了時期は市場の予想よりもやや早かったが、「(パウエル氏の発言は)想定内で、驚きはない」(インバーネス・カウンセルのティム・グリスキー氏)といった受け止めが支配的で、ダウ平均は高値圏で終えた。

市場の関心はテーパリングよりも、中国恒大問題に向かっていた。パウエル議長は記者会見で恒大のデフォルト(債務不履行)不安は「中国特有の問題」と指摘したうえで、米企業債務への懸念にはつながらないとの見解を示した。さらに米国の投資家が直接保有する恒大債は「それほど多くない」とも述べた。パウエル氏の楽観的な発言を受けて、ダウ平均は上昇した。

「中国当局は近く中国恒大の債務再編で介入し、10月に緩和へ踏み切る」――。ウォール街ではこんな見方も浮上し、同問題への警戒感は朝方から後退していた。パウエル議長の発言も心理的な後押しになったようだ。米雇用の伸び鈍化、債務上限を巡る米政治の混迷――。株高持続のハードルは確実に高まっているが、22日の値動きを見る限り、投資家の買い意欲は根強いといえる。

(ニューヨーク=宮本岳則)』