〔本当はヤバいウレタンマスク…。〕

ウレタンマスクの超アップ画像に「すかすかだ」「すごい説得力」 小5の夏休み研究にネットで称賛の声
https://maidonanews.jp/article/14418556?p=26312279&ro=14418556&ri=0

実験で新事実「ウレタンマスク」の本当のヤバさ
ウイルス専門家、西村秀一医師が徹底検証(2021/02/03 9:30)
https://toyokeizai.net/articles/-/409607

『昨年12月、国立研究開発法人「理化学研究所」(理研)のスーパーコンピューター「富岳」による、マスク素材ごとの飛沫防止効果のシミュレーションが発表された。

これによれば、感染していればウイルスを他者にうつす可能性のある「吐き出し飛沫量」のカットは、不織布マスクで約80%、ウレタンマスクは約50%。うつされるかもしれない「吸い込み飛沫量」は、不織布が約70%、ウレタンは約30~40%しかカットされないらしい。

以来、街中や電車内でウレタンマスクをしている人を注意する、「ウレタンマスク警察」と呼ばれる人まで現れていると報じられている。行き過ぎた”警察行為”は厳に慎みたいところだ。       

しかしながら、専門家からは「ピッタリ装着できるウレタンマスクは脇漏れしないものの、不織布は脇が開いている人が多いので(効果は)あまり変わらない」といった意見も。口元がゴワゴワせずつけやすく、色も選べてファッショナブルなのが気に入られたのか、依然として若者を中心にウレタン派は多いようだ。

そこに異を唱える人が現われた。

国立病院機構仙台医療センター臨床研究部ウイルスセンター長の西村秀一医師である。ウイルスセンターは国内では数少ない臨床ウイルス学の研究施設であり、全国の医療機関から依頼を受けたウイルス分離などの仕事のほか、独自の設備を用いた呼吸器系ウイルス感染の研究を行っている。

「『PCR検査せよ』と叫ぶ人に知って欲しい問題」(2020年5月12日配信)でもマスクの重要性を説いた西村医師、実は先頃、マスクの素材ごとに飛沫防止効果がどう違ってくるかという実験を行ったという。ウレタンマスクはOKなのか、はたまたNGなのか──。

マスク素材で「飛沫防止効果」はこんなに違う

──「富岳」もマスク素材ごとの飛沫防止効果を調べていますが、コンピューター上のシミュレーションです。実際に実験をされたのですね。

(図)西村秀一医師より提供

クリーンルームの中で、喘息などの治療薬吸入器具として使われているネブライザーからヒトの出すエアロゾルを模したものを発生させて、それをそれぞれのマスク素材がどれくらい通すかを試しました。』

『喘息治療や気管支炎の治療でシューシューと出てくる薬剤のミスト(蒸気)を吸い込みますよね。あの状態がミストの発生側です。一方、ミストの受け取り側は、人がつけた状態のマスクではなく、各素材そのものを切り出し、筒の片方に隙間なく張り、反対側から空気を吸わせ、素材を通過してくるエアロゾルの粒子の径(粒子の大きさを表現するもの)ごとの濃度をレーザー粒子計測器で測りました。

(図)西村秀一医師の実験結果より

──上図の「マスク別除去性能」がその結果ですね。衝撃でした。ウレタンマスクの素材である「ポリウレタン」は、5um(マイクロメートル)以下の粒子だと除去率1%以下。ほぼ効果がないことがわかります。

(図)西村秀一医師の実験結果より

そうなんです。逆に不織布マスクは一番小さい0.3~0.5umで90.8%、最大の5.0以上の粒子は99.1%の除去率が確認されました。医療従事者がつけるN95や医療用サージカルマスクはそれ以上に高い値ですが、一般の方が生活圏で使うのは、この程度の不織布マスクで十分機能すると考えます。

ちなみに実験で使用したマスクは、医療用サージカルマスクが当院で使用しているもの。不織布マスクは、VFE(ウイルス濾過効率)が99%カットの表示があった一般的なものです。ポリエステル、ポリウレタンマスクは、一層式でインターネットなどで買えるもの。いずれも、素材表面や内部に特殊な加工がされていないものを選択しました。

不織布マスクを上下左右に、顔に密着させれば、エアロゾルをほとんど吸い込まずに済みます。エアロゾルは科学用語で、口から呼気や咳とともに出て空中にある粒子のすべてを指します。それを出さないこと、吸い込まないことが感染の伝播防止に重要です。

今回は「吸い込み」しか実験はできませんでした。が、互いに不織布マスクであれば出す側も出す粒子が少なく、また吸込み側も吸い込みがかなり少ないわけです。これに2メートルのソーシャルディスタンスがあれば、感染はかなりの確率で防げるでしょう。ただ、マスクの付け方が悪いと、素材のせっかくの性能を生かせません。

マスクのずれや隙間は、過敏になりすぎなくていい

西村秀一(にしむら・ひでかず)/国立病院機構仙台医療センター臨床研究部ウイルスセンター長・臨床検査科長兼ウイルス疾患研究室長。1984年山形大学医学部医学科卒。医学博士。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)客員研究員、国立感染症研究所ウイルス一部主任研究官などを経て、2000年より現職。専門は呼吸器系ウイルス感染症。『史上最悪のインフルエンザ―忘れられたパンデミック』(みすず書房)、『感染爆発―見えざる敵=ウイルスに挑む』(金の星社)、『ワクチン いかに決断するか――1976年米国リスク管理の教訓』(藤原書店より今月再出版の予定)などの訳書や論文多数(写真:西村秀一氏提供)

──布(ガーゼやポリエステル)マスクは、10~20%台の除去率でやはり心もとないですね。

ガーゼマスクは、アベノマスクを使いました。咳や呼気などが体内から運んできて口から出たばかりの飛沫の粒子は大きいので、布やガーゼマスクでも止まります。でも、一方で防御にはあまり役立ちません。まあ、2割でも3割でも阻止してくれることを考えれば、何もしないよりはましですが。

──不織布でも、マスクが不意にずれたり、脇に隙間ができやすいものもあります。

つけ方が大事ということはそのとおりですが、一般生活ではあまり神経質にならなくてもいいです。特別なことをしない限り漏れをゼロにすることは不可能です。確かに顔面とマスクの隙間から入るものもあるけれど、密着の意識を持って着けているのであれば入ってくるのはそう大量ではなくなります。患者が出す1回の咳の中の生きているウイルスの量もそんなに多くはないので、あとは運でしょうか。』

『ただし、周りを多くの人に囲われている状況では、エアロゾル濃度が高くなり、もしその中にウイルスを出している人がいたら、どんなマスクをしていてもリスクは高くなるし、密着度が悪ければなおさらです。そうなると、大事なのは換気です。

居酒屋やテレビなどで顔の高さくらいまでパーテーションを設置していることがありますが、パーテーションの高さ云々の問題ではありません。とにかく頻繁に換気をして、空気、すなわちその中にあるエアロゾルを滞留させないことです。

──ところで、なぜこの実験をしてみようと思われたのですか? 理由を教えてください。

「富岳」による飛沫防止効果の映像が昨年発表されましたが、僕らがテレビなどで再三観ていたものは、あくまでシミュレーションなわけです。それが真実である保証が必要です。コンピューターがはじき出しているものなので、計算式もわからないしそれだけでは確認しようがない。私は、理論科学者ではなく実験科学者なので、実際にやった結果を重んじます。

それに、映像の粒子はエアロゾルなのに、すべてウイルスのように受け取られる向きもあった。例えばインフルエンザを例にとっていえば、スーパースプレッダーに相当する患者でも一度の咳で何十個も生きているウイルスを出すような人はいません。ましてやあそこに示された大量のエアロゾルがウイルスなわけがありません。

映像として、また計算された数値としてわかりやすいけれど、わかりやすいということはむしろ科学的には危険なこともあります。実証できる実験データが必要だと思ったのです。

今回私たちがやったのは、人がマスクをつけた状況ではないし、吸い込みだけ、それも素材の性質だけに限られるのですが、それでも実測データとしてある程度参考になるはずだと考えました。これが1つ目の理由ですね。

ウレタンマスクはスカスカ
──その結果、ウレタンマスクの防御性能がわかりました。これは想定内でしょうか?

想定の範囲内です。ただ、ここまで(除去性能が)低いとは、という驚きはありました。ウレタンは着け心地はいいのですが、呼吸がしやすい。それは言い方を変えればスカスカだということで、実はずっと心配していました。

それに、昨年12月に発表された富岳のシミュレーション結果でウレタンマスクは吐き出しも吸い込みもカット率が低かったのに、若者たちを中心にみなさんまだ使い続けています。ここに警鐘を鳴らしたいという考えはありました。

それはシミュレーションの計算結果として出された数値がまだ甘いからかもしれない。そうだとしたら、もしかしたらこれが、若者たちの間の感染が多い理由の1つになっているのかもしれない。それをあらためてほしい。今回の実験をするに及んだ2つ目の理由です。

そもそもマスクの性能を考えると、人々がマスクに期待することは、まず「自分がかからないこと」、要するに防御です。これがまったくダメとなると、どんな人だって少しは考え直すでしょう。一方、公衆衛生の面から願うのは「ほかの人みんながかかってほしくない、広がってほしくない」から、マスクをつけましょうということです。』

『──なるほど。今現在、第3次感染がなかなか収まらないのは、人々の「コロナ慣れ」があるかと思います。今までかからなかったのだから、大丈夫だろう、と。無論、過度に恐れることはありませんが、今一度「感染の防御」を注意喚起しなくてはいけませんね。

テレビなどを観ていると、出演者がマウスガードをつけています。それを見かけてしまうと「あれでいいんだな」と感染対策の見本と勘違いしてしまうかもしれません。しかし、断言します。マウスガードはマスクの代用にはなりません。エアロゾルを介した感染に対する防御には無力です。感染対策にはなっていません。

──改めてお話をまとめると「うつらないマスク」の最強は不織布マスクなんですね。わが家も今日から不織布に切り替えようと思いますが、ウレタンの着け心地も手放しがたいです。また、不織布だと肌がかぶれるという声もネット上で見かけます。ウレタンの上に不織布をつける二重マスクでもいいでしょうか?

構わないと思います。戸外でウォーキングをするときなど、他人とほぼ会わないときはウレタンや布マスクでいい。というか、堂々とマスクを外していいです。ウレタンマスクを寒さ対策とか、すっぴん隠しの目的で使うことには異論ありません(笑)。それに、つねにマスクをつけなくてはいけないわけではありません。運動や移動などで外を歩いているときは、マスクをポケットに入れてもいい。自転車での移動も同じですね。

「使ったマスクを触らないように」は都市伝説

──よく見かける「鼻マスク」はどうでしょうか? マスクを下げて鼻を出している状態ですね。

理屈からいえば、感染を広げない目的なら鼻マスクの状態でも、万が一ご自分が感染していても、よほどのことがない限り周囲に広げはしません。ただし、防御という意味では、口呼吸でない限り無防備状態と同じで、自分は吸ってしまうので感染者と接触した際に感染してしまうリスクは高いです。せっかく不織布マスクをつけていたとしても、防御になりませんね。

また、「使ったマスクを触らないように」というのは都市伝説です。あれは、咳をしている患者と対峙する医療現場での話で、一般生活の中に落とし込む話ではありません。普通に社会生活をしていてマスクの表面にウイルスがついたりはしません。たとえマスクで捉えたとしてもそれは表面ではなく、マスクの断面のどこかです。

画像をクリックすると、長期戦の様相を呈してきたコロナ禍の今を追う記事一覧にジャンプします

また、一般の人たちに対して「ドアノブに触るな」などというけれど、ドアノブで感染している証拠も出てきてはいません。気になるなら消毒すればいいですが、学校などで椅子などをあんなに拭く必要もありません。

とにかく、うつさない・うつらないマスクを正しくつける。換気をする。そして、密を避ける。これで乗り切ってください。アリバイ気味で的を外した対策に惑わされることなく、また過剰な怖れにおののくことなく、正しく防御することは、自分でやりようがあります。自分の知識と努力でできるのです。』

トルコ、アフリカ進出加速 経済回復へ中国追う

トルコ、アフリカ進出加速 経済回復へ中国追う
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB211NJ0R20C21A9000000/

『【イスタンブール=シナン・タウシャン、井上航介】トルコの官民がアフリカ市場への進出を加速させている。旧オスマン帝国の版図だった北部を中心にインフラ事業を受注し、中国を追う。政情不安でリスクの高い国は多いが、米欧企業の影は薄く、相対的に競争は激しくない。新型コロナウイルスの打撃からの経済回復を急ぐなか、アフリカ重視の姿勢を強める。

西アフリカのギニアで起きたクーデターの2日後の7日、ルワンダ外相との共同記者会見に臨んだトルコのチャブシオール外相は「アフリカから手を引け」と指摘した。同氏は軍の一部がコンデ大統領(当時)を追放したクーデターの背後に、かつての植民地勢力がいた可能性を示唆し、非難した。

トルコのエルドアン大統領は8月、コンデ氏をイスタンブールに招き、両国関係の将来を協議していた。ギニアはアルミニウム原料のボーキサイトをはじめ鉱物資源に恵まれている。チャブシオール氏の発言はアフリカを重視するトルコの姿勢を象徴する。

アフリカでトルコが大使館を置くのは43カ国で、2002年の12カ国の4倍近くに増えた。エルドアン氏は首相として政権を握った03年以降、アフリカの28カ国に計38回訪れた。トルコと同様にイスラム教徒の多い国ではモスク(イスラム礼拝所)の建設を支援してきた。旧オスマン帝国の後継として、トルコを「アフリカとユーラシアをつなぐ国」と呼ぶ。

トルコの輸出企業の多くは対アフリカ貿易の競争が緩いと考える。米欧企業はビジネスリスクからアフリカと距離を置きがちだ。トルコ統計局によると、同国からアフリカへの輸出は20年が約152億ドル(約1兆7000億円)で、最近の底だった16年より約3割増えた。アフリカからの輸入額は20年が約73億ドルで、トルコの大幅な輸出超過が続く。

ギニアのコンデ大統領(当時、右)をイスタンブールに招いたトルコのエルドアン大統領(8月)=ゲッティ共同

トルコ商務省によると、同国企業が20年にアフリカで受注した鉄道、道路などのインフラ整備は約20億ドルで、前年を5割近く上回った。アフリカに食い込む中国にはなお及ばないとみられる。

旧オスマン領だった北部での事業がなお多いが、トルコの官民は人口の多いサハラ以南の開拓を目指す。

一方、トルコの資金力には陰りがみえる。新型コロナで経済が停滞し、通貨リラの対ドル相場も低水準だ。チャブシオール氏は日本経済新聞の取材に「アフリカの人口は世界で最も若く、活力がある。(進出では)中国を含め、あらゆる国と協力する用意がある」と答えた。

エルドアン政権は人権を重視するバイデン米政権との緊張も指摘される。だが、米国務省の政策立案スタッフ経験者の一人は、トルコが「アフリカやアジアとは良好な関係を維持している」と指摘する。

この記事の英文をNikkei Asiaで読む 』

アルジェリア、脱石油遅れ ブーテフリカ氏「負の遺産」

アルジェリア、脱石油遅れ ブーテフリカ氏「負の遺産」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR193DV0Z10C21A9000000/

『【カイロ=久門武史】17日に84歳で死去した北アフリカの産油国アルジェリアのブーテフリカ前大統領は、約20年に及んだ長期政権で内戦を収束させた半面、世界が脱炭素にカジを切るなか、脱石油が遅れた。2019年の同氏退陣後も政官財に軍部がからむエリートの支配体制は維持され、経済停滞と社会の閉塞感は続いている。

ブーテフリカ氏は1954~62年の対仏独立闘争に加わり、99年の大統領選で初当選した。イスラム過激派との内戦を終わらせて一定の安定を回復し、2011年に本格化した中東の民主化運動「アラブの春」でも政権は揺るがなかった。14年に4選を果たしたが、前年に脳卒中を患ってから職務の大半を首相が代行するようになっていた。

この間に世界では温暖化対策への意識が高まった。世界最大の原油輸出国サウジアラビアも16年に脱石油の改革構想を打ち出したが、アルジェリアは出遅れた。

ブーテフリカ氏が19年に5選出馬を表明すると抗議デモが全土に広がり、辞任を余儀なくされた。後任のテブン元首相はブーテフリカ体制を内部で支えてきた。軍が支持しており、「プーボワール(権力)」と呼ばれる不透明な支配体制は温存された。

20年、国会議員の任期を2期までに制限する憲法改正案の是非を問う国民投票で投票率は約24%に低迷し、テブン政権への有権者の不信感を印象づけた。

アルジェリアはいまも輸出収入の9割を石油・天然ガスが占める。産油国のなかでも各種経済指標は悪い部類だ。財政収支は09年から赤字が続く。経済は石油相場次第で、公的債務は膨らむ傾向だ。新たな産業の育成は進まず、失業率は15%近い。』

スーダンでクーデター未遂

スーダンでクーデター未遂 反乱軍の数人拘束
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB2199C0R20C21A9000000/

『【カイロ=共同】スーダンの地元メディアは21日、スーダンでクーデター未遂があったと伝えた。軍が事態を制御しており、反乱を起こしたとみられる軍人数人を拘束したという。スーダンは2019年4月、大規模デモでバシル前大統領の長期政権が崩壊し、軍民の共同統治が行われている。

共同統治側にある軍は首都ハルツームで戦車を展開し、市民に対しクーデターの試みに抵抗するよう呼び掛けた。

スーダンではバシル政権崩壊後の19年8月に軍民の統治機構である評議会が発足し、軍出身のブルハン議長が就任した。』

[FT]メルケル首相の16年 ドイツはどう変わったか

[FT]メルケル首相の16年 ドイツはどう変わったか
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB221QF0S1A920C2000000/

『8割もの支持率を誇るメルケル氏の恐らく最も特筆すべき功績は、100万人以上の難民を受け入れたこととともに、女性や高齢者の雇用機会を大幅に拡大させたことだろう。

だが、26日に実施される連邦議会選挙(総選挙)後のドイツにメルケル氏が残す遺産はよいものばかりではない。危機管理能力は優れていたものの、首相在任中はビジョンに欠け、よりグリーンな経済への移行やデジタル化への対応も進まなかったというのがメルケル氏に対するよくある批判だ。

「奇跡的」な経済成長

05年以来、ドイツの1人当たり国内総生産(GDP)は英国、カナダ、日本、フランスの2倍のペースで成長した。

今日のドイツは「2度目の奇跡的な経済成長」を謳歌しているとオランダ金融大手INGのマクロリサーチ責任者、カーステン・ブルゼスキ氏は表現する。失業率は約20年振りの低水準に下がり、7割近くのドイツ人は自身の経済状況に満足していると答えている。

ドイツの経済成長率は他の主要国を上回る  1人当たりの実質GDP(購買力平価ベース、2005年=100) (出所)OECD、リフィニティブ

だが、この成功は全てメルケル氏のおかげだとは言えない。クレディ・スイスの欧州担当チーフエコノミスト、ネビル・ヒル氏によれば、土台の大半は前任者のシュレーダー前首相による改革の下で築かれていた。英シンクタンク、欧州改革センターのチーフエコノミスト、クリスチャン・オーデンダール氏は、ドイツにおける2度目の奇跡的な経済成長は「メルケル政権が何もしなくても」実現していたという。

そのうえ、今やユーロ圏GDPの4割を占めるドイツの製造業は、台頭する中国におんぶに抱っこの状態だ。輸出におけるドイツの中国依存はユーロ圏で突出している。

ドイツの対中輸出依存はEU最大  輸出額に占める対中国の割合(%、12カ月移動平均) (出所)リフィニティブ、IMF国際貿易統計

とはいえ、メルケル氏はドイツが経済成長を遂げるのをただ見守っていただけではない。09年の金融危機の際には、自動車買い替え補助金制度で自動車の売り上げを下支えするなどして経済を保護した。就業時間の短縮や休業で目減りした給与を政府が補填する「クルツアルバイト(時短勤務)」制度に数十億ユーロを注ぎ込むという決断も、同様に経済を救った。

その成果の一つとして、ドイツは雇用創出に成功している。

ドイツでは大半のグループで就業率が上昇した  就業率(%、4四半期移動平均)  [左上]女性(20〜64歳)[右上]外国生まれ(20〜64歳)[左下]高齢者(65〜69歳)[右下]就業率の上昇に結実した(20〜64歳) (出所)EU統計局、リフィニティブ
雇用が拡大

メルケル時代の最大の功績が並外れた雇用創出の速さであることは間違いなく、特に女性で顕著だ。現在、ドイツの女性の労働力参加率は、育児制度の改善に支えられて主要7カ国(G7)で最高だと英調査会社オックスフォード・エコノミクスのドイツ担当リードエコノミスト、オリバー・ラカウ氏は説明する。

ドイツの女性の労働力参加率はG7最高  25〜64歳の女性(%) (出所)OECD

同様に際立つのが、移民の就業率の上昇だ。戦火を逃れてシリアやアフガニスタン、イラクを脱出した100万人以上の難民を受け入れ、ドイツ社会に溶け込ませるという15年に掲げた政策を固持するのは、メルケル氏にとって勇気のいることだった。「我々にはできる」との言葉通り、同氏はそれをやってのけた。

メルケル首相はドイツに多数の難民を受け入れた  欧州各国への難民申請(千人)  (出所)EU統計局

ただし、雇用の質という面では見劣りする。低賃金の仕事に就いている労働者の割合が高いという状況は過去20年間でほとんど改善していない。女性の雇用も依然としてパートタイムが多く、ドイツの代表的な株価指数DAXの構成銘柄には最高経営責任者(CEO)が女性である企業が1つしかない。

債務は少ないが、ビジョンも投資も乏しい

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)にもかかわらず、ドイツは以前とほぼ同じくらい豊かだ。09年に憲法(基本法)に盛り込まれた財政収支均衡原則のおかげもあって、財政赤字は比較的低水準に抑えられており、政府会計はおおむね健全だ。

だが、全てが順調に見えるものの、「ドイツ経済は大きな構想に揺さぶられなかった」とも言えると独保険大手アリアンツのシニアエコノミスト、カタリナ・ウテルモール氏は指摘する。経済成長と雇用拡大の一方で、現代化はほとんど進んでいない。公共投資が低水準であるせいでドイツは将来への準備が不足しているという批判もある。

ドイツの公共投資は他の主要国より低水準  一般政府総固定資本形成の対GDP比(%) (出所)リフィニティブ、欧州委員会AMECOデータベース

11年に日本で発生した福島第一原発の事故以降、ドイツでは再生可能エネルギーへの移行が加速し、35年に石炭火力発電の全廃する計画も打ち出した。それでも他の欧州連合(EU)諸国に比べて遅れが目立つ。

1人当たりの温暖化ガス排出量はEU平均を上回り、再エネ比率は低く、新車(乗用車)の二酸化炭素(CO2)排出量も多い。

ドイツはグリーン経済の各指標で下位に沈む  [上]新車(乗用車)の走行1キロメートル当たりのCO2排出量(グラム)[中]輸送部門における再エネ比率(%)[下]年間1人当たり温暖化ガス排出量(トン)  (ビジュアルジャーナリズム)Liz Faunce(出所)EU統計局

デジタル経済への移行でも同様のことが言える。投資不足により高速ブロードバンドの普及率が低く、接続速度の地域間格差が解消せず、ブロードバンドのモバイルデータ消費量もEUの平均を下回っている。

これらの分野には「必要な注意が向けられていない」とオーデンダール氏は指摘する。ブルゼスキ氏も「投資の不足は恐らくメルケル氏の経済政策が後に残す最大の弱みだろう」と述べる。

ドイツはデジタル経済への移行でも後れを取る  EU各国のデジタル経済・社会サブ指数(2020年) (出所)欧州委員会通信ネットワーク・コンテンツ・技術総局

コロナ以前から、ドイツは脱炭素化の着手、通信の改善、教育の加速、インフラの強化に推計4500億ユーロ(約57兆7000億円)の公共投資が必要だとされており、脆弱なインフラは今夏発生した洪水の阻止の失敗にもつながった。実際、メルケル氏の後継を争う候補者の一部は、投資強化の必要性をスローガンに掲げている。

ウテルモール氏は「新型コロナ危機は(メルケル氏の)欠点を拡大して見せた。次期政権はグリーン化やデジタル化が確実に成功するよう、その欠点に取り組む必要があるだろう」と述べている。

By Valentina Romel

(2021年9月20日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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侮れない中国TPP「300日計画」

侮れない中国TPP「300日計画」 習主席と李首相も連携
編集委員 中沢克二
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK212C30R20C21A9000000/

『中国が環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟を正式に申請した。一見、唐突にみえる習近平(シー・ジンピン)政権の行動だが、その裏には300日にわたる周到な計画と準備があった。日本政府には米国不在となったTPPを苦労してまとめあげた成功体験がある。しかし、中国の戦略的な動きを十分、把握したうえで、先回りできなければ、かつての大きな功績も雲散霧消しかねない。

中国はバイデン米大統領がTPP復帰を目指すと予測していた(20日、ニューヨーク)=AP

「(2020年11月中旬までに)米大統領選でバイデンの当選が確実になり、東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)も妥結した時点で、21年秋を目指すTPP11への加盟申請計画が(中国)指導部内で大筋、共有された」。中国の対外経済政策に詳しい信頼できる関係筋はこう明かす。

バイデン政権に先手、NZとシンガポールに照準

この計画の肝は、新型コロナウイルス禍を克服したバイデン政権が22年にはTPP復帰に動く可能性を考え、その前の21年9月、または10月に中国が先手を打つべきだという政治判断だった。

国家主席の習近平が20年11月20日、オンライン開催だったアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で「TPP11参加を積極的に考える」と公式に表明する直前、正式申請に向けた「300日計画」が始動していたことになる。ここにはTPP加盟に意欲をみせる台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)民主進歩党政権をけん制する思惑もあった。

中国の全人代の閉幕式を終え、李克強首相(右)と言葉を交わす習近平国家主席(3月11日、北京の人民大会堂)=共同

中国トップの表明は唐突ではなかった。対外経済政策としては、RCEP交渉を仕切った首相の李克強(リー・クォーチャン)ときちんと連携がとれていた。李は、習発言に先立つ20年5月の段階でTPP参加に「中国は前向きで、開放的な態度だ」と話していた。

習と李をつなぐキーマンは、習が信頼する副首相の劉鶴(リュウ・ハァ)と、商務省の次官で国際貿易交渉代表の兪建華である。司令塔は国務院(政府)に置かれ、重要事項を判断する際は必ず会議が開かれた。

「300日計画」の最初の標的はニュージーランド(NZ)だった。同国はTPPに発展した原協定の4当事国(ほかはシンガポール、ブルネイ、チリ)の一つで、現在も大きな役割を担っている。域外国が加盟意思を通知する際の寄託国で、中国が正式な加盟を申請した先もNZだ。21年のTPP委員会の議長国である日本ではないのもポイントだった。

中国は何かと関係がギクシャクしていたNZとの意思疎通を重視する方向にカジを切っていた。習によるTPP参加検討の表明から間もない21年1月には、NZ側のメリットが大きい2国間の自由貿易協定の改定に署名した。中国との関係が悪化してゆくオーストラリアとは対照的な対応なのが興味深い。

シンガポールのバラクリシュナン外相(右)と会談する中国の王毅・国務委員兼外相(シンガポール、13日)=AP

加盟申請直前の最後の根回しは、やはり原協定当事国のシンガポールだった。同国が22年にTPP委員会の議長国になることを見越した接触でもある。国務委員兼外相の王毅(ワン・イー)は9月中旬、シンガポールを訪問。現地報道によれば、外相会談で中国のTPPへの興味に対して「歓迎する」という言葉をシンガポール側から引き出した。

決め手はアフガン情勢

原協定4当事国のうち、ブルネイとチリは国内手続きが未完了である以上、中国としていまの段階でできる根回しは果たしたことになる。中国は、マレーシアが中国加盟に向けた交渉を支持したように、東南アジアの多くの国は交渉入りに反対しないとみている。驚くのは中国側が「最終的には日本も中国の交渉入りに真っ向から反対できない」と読んでいることだ。

中国にとってTPP加盟申請は国際政治・経済戦略上、主導権を確保するための重要な手段である。英国に加盟申請で先を越されたとはいえ、時期の設定は中国の命運に関わる。そして9月中旬の正式申請に至る最後の決め手は、アフガニスタン情勢だった。

中国指導部は、アフガンからの米軍撤収に伴う混乱でバイデン米政権にTPP早期復帰を考える余裕がまだないと分析。20年からのスケジュールに沿い、11月にオンラインで開かれる予定のAPEC首脳会議の前に手を打った。

ここで問われるのは、習政権として、高いハードルを課すTPPに入るために徹底的な国内改革に踏み切る用意があるかどうか、である。

「皆、誤解している。(中国の)国内政治情勢を考えればいま、直ちに真心を持ってTPPに入る気などさらさらない。ギリギリの交渉をする用意もない。そもそも交渉入りさえ全加盟国の同意が必要なのだ。仮に交渉入りしても、肝心な部分はズルズルと引き延ばしになる」。中国の「本気度」に疑問を呈する識者の声は、一面の真実を言い当てている。

ここ数年、中国ではTPPの方向性とは逆の施策が次々と打ち出された。大きな国有企業同士の合併は典型例だ。民間の大企業には独占禁止などを理由に罰金を科したり、分割を迫ったりしているのに、国有企業への補助金問題には手がついていない。

1990年代からの世界貿易機関(WTO)加盟交渉は、国有企業を中心とした国内改革と同時進行の国運をかけた真剣勝負だった。今回のTPP加盟申請にはそこまでの覚悟がみえない。中国は、TPPが志向する企業や個人による国境を越えた自由なデータの流通には否定的で、国家安全を理由に規制強化に動いている。この流れで、9月にはデータ安全法を施行した。

TPPに反対してきた左派を利用する矛盾

習近平が進める「左旋回」の路線、統制強化を支える有力なグループは左派だ。過去、彼らは一貫してTPPに反対してきた。国有企業への補助規制といったTPPの規則は「主権の侵害につながる」という理屈だった。

全国政治協商会議の閉幕式に臨む劉鶴・副首相(左)と習氏(2019年3月、北京)=横沢太郎撮影

対外強硬策が特徴の「戦狼外交」を支持してきた中国内の学者らもTPPを「新型資本帝国統治」につながると批判してきた経緯がある。政治情勢を考えれば、いま中国がTPPに名乗りを上げるのはある種の自己矛盾だ。

一方、別の関係者は「(TPP加盟申請は)中国はあくまで『市場経済国家』としてとどまる、という(国の)内外へのアピールでもある」と指摘する。急激に社会主義へ傾斜する中国に疑問の目が向けられているのを強く意識した防御的な行動でもあるというのだ。

習近平がトップとしての続投を目指している2022年以降、さらに次の次の共産党大会がある27年まで見据えれば、TPP加盟申請と今後の交渉が国内改革へのテコに使える場面が出てくるかもしれない。

様々な側面を持つ中国のTPP長期戦略は決して侮れない。9月末の自民党総裁選を経て誕生する日本の新たな首相は就任早々、政治・経済両面で中国にどのように対処するのか決断を迫られる。(敬称略)

中沢克二(なかざわ・かつじ)
1987年日本経済新聞社入社。98年から3年間、北京駐在。首相官邸キャップ、政治部次長、東日本大震災特別取材班総括デスクなど歴任。2012年から中国総局長として北京へ。現在、編集委員兼論説委員。14年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。』

[FT]中国不動産暗転、経済全般に波及

[FT]中国不動産暗転、経済全般に波及
政策当局は不動産価格抑制と融資規制で長期戦の構え
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM216K60R20C21A9000000/

『ほんの数週間前まで、中国東部の山東省・済南市にある3件の住宅開発プロジェクトの販売は好調だった。だが、例年なら新築住宅販売が繁忙を極める9月に入り、そのムードが冷え込んでいる。

中国恒大集団が開発を進める洛陽市の集合住宅街。8月の新築住宅価格は前月比0.2%の上昇にとどまり、開発業者は販売に苦戦した =ロイター

当局が住宅ローンの引き締めに動くなか、プロジェクトの販売は横ばいないし減少しており、デベロッパーは多少の損失を出しても成約にこぎ着けようと値引きに動いている。

中国電建地産集団の済南支部で不動産仲介を担当するチョウ・ミャオ氏は「政府の政策は住宅購入を支援していない」と語る。「多くの人は当局がいずれ融資規制を緩和すると見込んで、住宅購入の計画を来年に先送りしている」という。

900万人の人口を擁する済南市の状況は、中国全土の不動産セクターに広がる冷え込みの一端にすぎない。不動産分野は数十年にわたって中国の経済成長を支えてきたが、現在は不動産融資の抑制や価格統制を目指す中国政府の圧力を受けている。

世界最大の負債を抱える不動産開発会社で、中国の都市化を進めるテコの役割を果たしてきた中国恒大集団が経営危機に直面している。このことは、中国の経済モデルの重要な部分に対応する政府の不安定な立場を浮き彫りにしている。

中国政府は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)に当初は利下げで対応したが、ここ1年は特に不動産開発会社の借り入れを厳しく制限し、資産バブルのリスクの芽を摘もうとしている。

政府はまた、住宅ローン融資に制限を加え、大都市の家賃に上限を設けている。済南市では住宅ローンの審査に2カ月はかかるとされる。当局が融資に独自の制約を課しているためだ。

先週発表された公式統計によれば、8月の中国の主要70都市の新築住宅価格は前月比0.2%上昇と、8カ月ぶりの低い伸び率にとどまった。他の統計も、土地取引の急減を浮き彫りにしており、政府の施策が効き始めている状況が明らかに示されている。

米金融大手バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)によると、多くのエコノミストは、この不動産指標の減速は中国の国内総生産(GDP)の28%を占めるセクターに深刻なリスクをもたらすとみている。不動産セクターはコモディティー(商品)需要や労働需要、借り入れ需要の規模から、世界で最も重要な景気指標の一つになっているという。

70年代のFRBの政策に類似

ただ、野村の中国担当チーフエコノミスト、ティン・ルー氏は「今回はこれまでとは違う」とみている。同氏は最近、中国の不動産統計の「急速な悪化」を指摘し、1970年代の米国でインフレ抑制に動いたポール・ボルカー元米連邦準備理事会(FRB)議長の金融政策と類似性があると見ている。

香港の恒大集団の物件広告の前を歩く女性。同社の債務危機で、中国経済における不動産の重要性が明らかになった =ロイター
「深刻なリセッション(景気後退)や金融危機が起きれば、もちろん(当局は)ある程度規制の手を緩めるだろうが、まだそこまではいっていない」という。

ルー氏は、8月の新築住宅販売件数が30都市で前年同月比24%減少し、100都市で土地使用権の販売高が53%急減したという統計に注目している。いずれの指標も9月上旬にはさらに悪化したという。

販売の落ち込みは恒大集団にも打撃を与えている。約2兆元(約34兆円)の負債を抱える同社は、サプライヤーや債権者への支払い義務を果たすため、現金を切実に必要としている。先週はデフォルト(債務不履行)の見通しが高まるなか、怒った投資家が資金の返還を求めて深圳市の本社に押しかけた。

9月15日、ローンや金融商品の返済を求めて広東省深圳にある恒大集団本社の前に集まる人々=ロイター

恒大を取り巻く問題は、中国の金融システムに対する不動産セクターの重要性を浮き彫りにしているが、同社や何百という国内の同業他社の弱さは経済全般にも深刻な影響を及ぼすだろう。不動産投資は2020年に7%増加し、他の主要国を上回る不動産主導の景気回復を支えた。

そうした経済的な貢献の裏側には不安定化の兆候があり、規制当局による警告につながった。深圳市などの大都市で価格が急騰するなか、政府は不動産開発会社の負債を制限する「レッドライン」を発表するとともに、今年初めには銀行の住宅ローン融資に制限を設けた。

物件を値下げする香港の不動産業者=ロイター

ここ数年、中国は住宅投機の抑制に動いている。王蒙徽・住宅都市農村建設相は1月、中国は不動産を景気の下支えには使わないと発言し、住宅は投機ではなく「居住」のためのものだとする習近平(シー・ジンピン)国家主席の17年のスローガンを改めて強調した。政府は最近、先の規制が意図しない価格上昇を招いたことを受け、大都市における土地の入札を中止した。

不動産は「共同富裕」の要

バンカメのアジア経済調査責任者、ヘレン・チャオ氏は「今回、政策当局は信用抑制策をより粘り強く堅持しようとしているようだ」との見方を示した。不動産の減速は「主に政策引き締めに起因する」という。

中国政府はその一方、「共同富裕」を推進するうえで不動産は重要な部分であると考えている。住宅都市農村建設省は先週、同セクターを3年かけて調査すると発表し、従来の教育やハイテクなどさまざまなセクターの管理を強める政府の取り組みを一段と強化した。
中国経済は、パンデミックからの裾野の広い景気回復はまだ不完全であるうえ、最近の新規感染の増加に伴う混乱で長引く消費の弱さが露呈している。その状況で、経済に掛かる圧力が一段と高まっている。

野村のルー氏は、土地購入の落ち込みが、不動産投資や建材需要だけでなく、開発会社に土地を販売する地方政府の収入にも重くのしかかるとみている。だが、「共同富裕」の推進と、不動産に対する中国政府のアプローチとの関連を指摘する向きは少なくない。

豪投資銀行マッコーリーの中国担当チーフエコノミスト、ラリー・フー氏は「中国政府が考えているのは、経済的な点だけではない」と指摘する。「悪い統計が2~3カ月程度続いても(金融政策が)緩和されることはない」という。

膨大な経済活動や雇用、富を創出してきたセクターの長期的な弱さに中央・地方政府がどう対処するのか、統計以外ではまだはっきりしていない。済南市のあるプロジェクトでは、発売から2年程たった集合住宅の3分の1がいまだに売れ残っている。販売単価は1平方メートルあたり1万9100元と、採算ラインとされる2万元を下回っている。

「当社の最優先事項はキャッシュフローの改善だ」。開発会社の関係者はこう語った。「収益性は二の次」

By Thomas Hale and Sun Yu

(2021年9月21日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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【関連記事】

・中国恒大、23日の元建て債利払い実施へ 39億円
・中国、住宅ローンに総量規制 不動産バブル対策
・恒大処理が占う「習経済」 危機回避と格差是正で苦悩
・世界同時株安、見えぬ中国恒大処理 リスク連鎖に警戒
・[社説]中国恒大を巡る不透明感の払拭が急務だ 』

中国恒大、23日の元建て債利払い実施へ

中国恒大、23日の元建て債利払い実施へ 39億円
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB221PB0S1A920C2000000/

『【上海=土居倫之】中国の不動産大手、中国恒大集団は22日、期日を23日に控えた人民元建て債の利払いを実施すると発表した。金額は2億3200万元(約39億円)。恒大を巡っては1兆9665億元(約33兆4000億円)にのぼる負債を巡り信用不安が浮上しており、債券の利回りが急上昇していた。

【関連記事】
・世界同時株安、見えぬ中国恒大処理 リスク連鎖に警戒
・よくわかる中国恒大 4つのポイント

恒大が22日、利払い実施を発表したのは、発行額40億元の人民元債で深圳証券取引所に上場している。同時に利払い日が到来する米ドル債の利払い実施の有無については現時点で未公表となっている。年内の社債の利払い額は、米ドル債が計6億3110万ドル(約694億円)、人民元債が計3億5380万元となっている。元本は22年1月30日にドル債3億ドルの満期が到来する。

一方、22日の上海株式市場で、上海総合指数は小幅に下落して始まった。恒大向けの貸付金が多いとされる中国の民営銀行、民生銀行が一時前週末比約2%下落するなど恒大問題が依然として重荷となっている。不動産大手の万科企業も小幅に下落する場面があった。

恒大が上場する香港株式市場は22日休場している。

【関連記事】恒大処理が占う「習経済」 危機回避と格差是正で苦悩』

恒大処理が占う「習経済」

恒大処理が占う「習経済」 危機回避と格差是正で苦悩
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM214NR0R20C21A9000000/

【北京=川手伊織、羽田野主】中国共産党の習近平(シー・ジンピン)指導部が中国不動産大手、中国恒大集団の経営不安への対応に苦慮している。中国の格差問題の是正をめざして富裕層たたきをする中で、巨大企業グループの救済には安易に踏み込めない。金融危機の引き金を引けば、2022年秋の党大会で習氏の3期目の続投にも響きかねない。

中国共産党の機関紙、人民日報は21日付の1面で恒大集団に一切触れなかった。官製メディアは一様に政府の対応に口をつぐんだままだ。

習指導部が静観するのは格差是正へ「共同富裕(ともに豊かになる)」のスローガンを掲げたことと無関係ではない。富裕層からの所得再分配を強化し、貧困層を引き上げるとともに中間層を分厚くする構想だ。その実現へ規制を強めるのが富裕層の投機対象になりやすい不動産だ。

中国では昨年、新型コロナウイルス対応の金融緩和で不動産価格が高騰。不動産シンクタンクの易居不動産研究院によると、中国主要50都市の不動産価格は20年時点で平均年収の13倍と、15年の10倍から跳ね上がった。

価格高騰で都市部の生活コストは高止まりし、市民は不満を募らせている。金融危機の回避を優先して恒大を支援すれば、習指導部は結局、不動産投資でもうけてきた富裕層を守るのだと国民に受け取られかねない。

一方で中国国家統計局によると21年1~6月の国内総生産(GDP)のうち不動産業は7%を占める重要産業だ。これが揺らげば中国経済全体への影響は大きい。

投機の過熱を警戒した中国当局は昨年夏に不動産業界の資金調達規制を導入、住宅ローンの総量規制などで消費者のマンション売買も制限した。不動産会社は金融機関からの資金調達も売却による回収も難しくなり、資金繰りが急速に悪化。中国工商銀行の不動産向け不良債権比率は6月末に4.29%と前年同期の1.41%から急上昇した。

不動産向け融資は銀行融資全体の約2割を占めており、恒大が行き詰まれば連鎖的に中国の金融システム不安が高まる懸念がある。ただ習指導部の経済運営方針から、恒大を即座に支援することは考えにくい。

市場関係者は「広東省の国有企業などが資本支援に乗り出すとしても、恒大が非中核資産の売却を終えてからだ」とみる。金融当局が窓口指導を通じて恒大への売掛債権を持つ建設会社などの資金繰りを支えるなどの方策はありうるが、市場の不安解消にはほど遠い。

一方で中国政府は資金ショートによる恒大の唐突な破綻を警戒しているとの見方もある。米ブルームバーグ通信は先週、「住宅都市農村建設省が主要債権銀行に『20日が期限の利払いを行わない』と伝えた」と報じた。

習氏の沈黙の背景に、同氏が距離を置く党の青年組織、共産主義青年団(共青団)と恒大のつながりを指摘する声もある。

恒大集団が創業した広東省は「共青団の地盤」といわれる。習氏は党内を1強で固めるが、共青団の流れをくむ李克強(リー・クォーチャン)首相や胡春華(フー・チュンホア)副首相と溝があるとの見方は絶えない。党内の事情を知るある有識者は「意に沿わない部下の地盤沈下には手を貸さないということではないか」と語る。

習氏は権力維持のため、共同富裕路線を堅持しつつ金融危機も回避するという難しい手綱さばきを迫られている。

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台湾有事「6年以内」に現実味 前米軍司令官

台湾有事「6年以内」に現実味 前米軍司令官 
習政権の長期化念頭に
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN21DMO0R20C21A9000000/

『米インド太平洋軍の司令官を2021年春まで務めたフィリップ・デービッドソン氏は日本経済新聞の取材に応じ、中国が今後6年以内に台湾を侵攻し、力づくで併合する展開が「一段と現実味を帯びている」と語った。根拠として「2027年に到来しうる習近平(シー・ジンピン)体制の節目」を挙げ、中国の内政事情が動因になるとの認識を示した。

デービッドソン前司令官は退任前の3月、米上院軍事委員会の公聴会で中国による「6年以内」の台湾侵攻の可能性に言及し、米軍内の危機意識を示す発言として注目を集めた。同氏は「ミサイル、サイバーや訓練の能力、兵力の相互利用や後方支援の向上といった中国人民解放軍の変化は、中国がその道を選択すれば6年以内に台湾を侵攻する能力を備えることを示している」と述べた。

デービッドソン氏は6年後の「2027年」を特定した背景として、習近平・中国国家主席の長期指導体制への思惑があると指摘した。習氏は国家主席の任期を2期10年までに制限した規定を憲法改正で撤廃しており、22年の共産党大会で3期目の続投を決める可能性がある。27年は次の節目となりうる。前司令官は「政治的将来を習氏が自分で決め、そこに支持が集まるかどうかは27年までの時間軸次第だろう」と語り、長期の統治に向けたカギを握る台湾問題が火種になりやすいとの見方を示した。

歴代の米政権は台湾問題で当事者による「平和的解決」を支持する姿勢をとる「戦略的あいまいさ」を保ってきた。中国の脅威が増すなか、台湾侵攻の可能性をにらんで米国がさらに踏み込んだ姿勢をとるべきだとの意見が米国内にはある。デービッドソン氏は「常にどんな戦略をとるかの分析が欠かせない」と見直しの必要性に触れる一方で「ここ数年、戦略を変更するかどうかの考慮がなされ、現時点では戦略を維持するという合意がある。私はその合意に従う」と語った。

中国の軍事力の増大については「能力の向上とともに兵器の数も増え、米国と日本との差も縮まっている」と認める一方で「現時点では米日が勝っている」と明言した。

(ワシントン支局長 菅野幹雄)』

[FT]豪が期待する原潜の技術

[FT]豪が期待する原潜の技術 静かに長く潜り、敵に迫る
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB211L10R20C21A9000000/

『オーストラリアがフランスから通常動力型潜水艦12隻を調達する900億ドル(約9兆8000億円)の契約を破棄し、米英との新たな安全保障協力の枠組み「AUKUS(オーカス)」のもとで原子力潜水艦の配備を決めた。これはアジア太平洋地域の地政学と世界の防衛産業にとって重要な転機になりそうだ。

豪州の潜水艦計画の有力候補に挙がっている英海軍のアスチュート級原潜=ロイター
新たに建造する原潜は当初計画していた潜水艦よりはるかに能力が高く、英米の防衛関連企業に大きな商機をもたらす可能性がある。

仏の通常動力型潜水艦と原潜の主な違いは推進力技術だ。仏に発注する予定だった潜水艦は同国のバラクーダ級原潜を基に、ディーゼルエンジンでモーターを動かして航行するよう設計されていた。

燃料補給なしで数十年間稼働

通常動力型潜水艦の利点は船体を小型化でき、エンジンを止めて蓄電池で静かに航行できる点だ。一方、エンジンを動かして蓄電池を充電するには酸素が必要なため、定期的に海面に浮上する「スノーティング」という作業を伴うのが欠点として挙げられる。

一方、原潜の潜水時間は圧倒的に長く、原子炉は燃料を補給しなくても数十年間稼働し続ける。核分裂による熱エネルギーで蒸気を発生させ、タービンを回して発電する。

豪州は当初、通常動力型のコリンズ級潜水艦を退役させ、ディーゼル発電式の潜水艦を導入する計画だった。

モリソン豪首相は6月の時点でマクロン仏大統領に対し、豪州がインド太平洋地域における安全保障を強化する上で「通常型潜水艦で十分に対応できるかは極めて現実的な問題だ」と伝えていたと明らかにした。一方、仏政府関係者によると、同じ6月に建造予定の潜水艦を自国の技術を用いて原潜に改造できると豪政府に提案したが無視されたという。

結局、豪州は原潜調達に舵(かじ)を切ったが、自前の原子力施設を保有していないだけに課題も多い。

英王立防衛安全保障研究所(RUSI)のトレバー・テイラー氏は「原子力インフラには多額のコストがかかる。専門人材の育成や安全対策、ドック施設の整備などはほんの一例にすぎない」と指摘した。

潜水時間が長く、探知されにくい

原潜の最大の利点は通常型潜水艦よりはるかに長く水中にとどまっても探知されにくいことだ。通常型潜水艦は海面に浮上した際に探知される。原潜は最長30年間使用できる核燃料を搭載でき、船体の検査・修理や物資を補給する時だけ寄港すれば済む。

ある防衛専門家は原潜について「人間が作る構造物としては最も複雑で、その難解さはスペースシャトル以上だ」と話した。「後部に原子炉、先端に砲弾が配備され、中央部には乗組員の居住空間もある。そのすべてを何カ月間も潜航させ続けるのだから」

豪州がどのタイプの原潜を選ぶかは今のところ不明だが、英BAEシステムズが建造する英海軍のアスチュート級原潜か、米防衛関連大手ゼネラル・ダイナミクス傘下のエレクトリック・ボートとニューポート・ニューズ造船所が建造する米海軍のバージニア級原潜などが候補に挙がっている。

新たな枠組みの下で軍備増強

その際に大きな課題となるのが、英米が無音航行や水中音波探知技術をどの程度豪州に供与するかだ。

アスチュート級原潜とは

全長97メートル、満載排水量7400トン。一度も海面に浮上せず世界一周が可能。
トマホーク巡航ミサイルを搭載した場合、沿岸から最大1200キロメートル離れた地点から標的を正確に攻撃できる。
出所:英BAEシステムズ

豪州は米英との新たな枠組み構築を機に軍備を大幅増強する計画だ。

新アメリカ安全保障センターのリチャード・フォンテーヌ最高経営責任者(CEO)によれば、豪州は新たに発注する潜水艦に通常型ミサイルを配備する計画だが、仏製潜水艦に搭載予定だったミサイルよりも大型の弾頭を積載できるという。

また水上船舶と潜水艦の両方から発射できる巡航ミサイル「トマホーク」を配備して戦闘能力を高める。

豪軍がトマホークを配備すれば、有事の際に中国国内の標的に対する攻撃能力が高まる=ロイター

アメリカン・エンタープライズ研究所のエリック・セイヤー氏は「水上艦にトマホークを配備すれば、数千マイル先の陸上軍事施設を攻撃できる戦略兵器にもなる。この新たなミサイルによって豪海軍の攻撃力は大幅に向上する」と述べた。

同氏によれば、豪州はすでにMK48魚雷やF18戦闘機に搭載可能な「LRASM」ミサイルなど米軍と同じ対艦兵器を導入しており、トマホーク配備もその戦略の一環だ。

豪軍がトマホークを配備すれば、有事の際に中国国内の標的に対する攻撃能力を高められる。米国とその同盟国が中国沿岸に保有する軍事施設は中国軍に比べて少ないため、トマホークを配備する意義は大きい。

「トマホークの配備によって統合防空ミサイル防衛システムや航空機の格納庫など陸上の標的に対する長距離攻撃が可能となる」とセイヤー氏は指摘した。

発注先は英国か米国か

ジョンソン英首相は豪潜水艦計画の自国産業への好影響を強調しすぎたかもしれない。英防衛産業幹部は同計画でどれだけ利益を得られるか判断するのは時期尚早だと話した。

とはいえ、ある程度の恩恵は期待できる。

英調査会社エージェンシー・パートナーズのサッシュ・トゥサ氏は「500億ドル以上の防衛力整備計画で、それが20年以上に及ぶとなれば勝ち組は出てくる。豪州と英米との関係が緊密化するならなおさらだ。豪州は自前の原子力産業を持たないため、核燃料の直接供給をはじめ数十年にわたる手厚い支援が必要となる」と述べた。

原潜受注の最有力候補とみられるのが、英北西部カンブリア州バロー・イン・ファーネスで英海軍の潜水艦を建造するBAEシステムズだ。同社はすでに豪南部アデレードで豪海軍向けに26型フリゲート艦を建造中だ。また英海軍に原潜用の動力炉を供給する英ロールス・ロイスも豪軍向けに原子炉を建設する可能性がある。

RUSIのテイラー氏は豪州が英国のアスチュート級原潜を選択した場合、作業開始の遅れやコスト上昇などの問題はあるものの、米国製の潜水艦より安価だと指摘した。

配備遅れや予算オーバーの懸念

モリソン首相は豪で最初の原潜は2040年までにアデレードで完成するとの見通しを示したが、予定通りには行かないかもしれない。潜水艦の建造は巨大プロジェクトで、ほぼ例外なく作業遅れや予算オーバーに見舞われているからだ。

アスチュート級原潜は最新鋭だが、調達には当初予定より時間も費用もかかるという厳しい現実も待ち構えている。

By Sylvia Pfeifer, Demetri Sevastopulo and Anna Gross

(2021年9月19日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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米豪首脳、対中国へ欧州と協力 潜水艦問題の火消し急ぐ

米豪首脳、対中国へ欧州と協力 潜水艦問題の火消し急ぐ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN21DL20R20C21A9000000/

『【ニューヨーク=中村亮】バイデン米大統領は21日、オーストラリアのモリソン首相、ジョンソン英首相とそれぞれ会談した。米ホワイトハウスによると、両首脳と中国との競争を念頭に欧州と協力を深める考えで一致した。豪州の原子力潜水艦配備をめぐり悪化したフランスなどとの関係の立て直しを急ぐ。

モリソン氏はニューヨークでバイデン氏と会談し「我々の協力は東南アジア諸国連合(ASEAN)や欧州の多くの友好国に関わる」と述べた。豪州が米英の支援を受けて原潜を配備し、中国に対する抑止力が高まれば欧州やアジアにも恩恵が及ぶとの見方を示すものだ。バイデン氏は「我々の協力は世界中のあらゆる民主国家(の利益)と合致する」と応じ、モリソン氏に同意した。

バイデン氏はホワイトハウスでジョンソン氏とも会談し、欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)との関係深化について協議した。バイデン氏は国連総会の一般討論演説でもEUについて「世界が直面する幅広い問題に対処するうえで重要なパートナーだ」と強調し、関係修復へ秋波を送った。

豪州は潜水艦配備に向けた協力国をフランスから米英に突然切り替え、仏が猛反発している。サキ米大統領報道官は21日、ワシントンに向かう大統領専用機内で記者団に対し、バイデン氏がマクロン仏大統領と近く電話協議を行うと改めて説明した。

ASEANにも豪州の原潜配備がインド太平洋地域での軍拡競争につながると懸念する声があがっている。

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・米英、豪州の原子力潜水艦配備を支援 中国念頭に
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・[FT]EU独自防衛の機運 豪潜水艦計画から仏排除

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鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授

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分析・考察 フランスや欧州諸国から見れば、米豪両国は自らを裏切った悪役同士。

この両者がいくら欧州との関係を改善するといっても説得力が乏しい。

バイデン大統領がこうした欧州の反発を計算せずに原潜輸出を決めたとは考えにくいが、そのわりには対応が後手に回っており、稚拙な行動だったように映る。

果たしてここからどう同盟関係を修復していくのか、それとももう取り返しのつかない溝を生み出してしまったのか。バイデン大統領の就任に対して、欧州の期待が高かっただけに、その失望感を埋め合わせるのは難しい。

2021年9月22日 7:28いいね
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赤川省吾
日本経済新聞社 欧州総局編集委員

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今後の展望 「アングロサクソン諸国vs欧州大陸」という対立構図に発展。米欧関係の修復には長い時間がかかりそうです。

欧州で憤っているのはフランスだけではありません。ドイツを含めほかのEU諸国も「米国は欧州を軽んじている」と受け止めました。

「トランプ政権のもとでの米欧冷戦」が「バイデン政権のもとでの米欧雪解け」に転じるはずでしたが、実際にはアフガン撤兵や今回の潜水艦事件ですれ違いが露呈しました。

関係修復のため、米国がEUに安保•軍事面で具体的な協力案件を近く持ちかけるーー。そんな観測が欧州外交筋にあります。動きがなければ米国に頼らない「欧州軍」の創設を目指す動きがますますEU内で活発になるでしょう。

2021年9月22日 7:37 (2021年9月22日 7:38更新)
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16 』

バイデン氏「米中新冷戦を志向せず」

バイデン氏「米中新冷戦を志向せず」 初の国連演説
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN211KT0R20C21A9000000/

『【ニューヨーク=中村亮】バイデン米大統領は21日、国連総会で一般討論演説に臨んだ。「いまも今後も最も重要なインド太平洋に焦点を移す」と強調し、中国への対抗に一段と注力する考えを示した。「新冷戦を志向しない」とも語り、新型コロナウイルスや気候変動対策で協力を求めた。

バイデン氏が一般討論演説をするのは、1月の大統領就任後初めて。バイデン氏は20年におよぶアフガニスタン戦争を終結に導いたことを踏まえ「世界のあらゆる問題の解決に武力を使ってはならない」と指摘した。武力で他国の民主化や国家建設は実現できないとの主張だ。

軍事力に頼った時代の終わりとともに「徹底的に外交を追求する新しい時代が始まった」と述べた。「国際問題の解決を加速させるために同盟国やパートナー国、国際機関と協力する」と指摘した。「米国第一」を掲げたトランプ前大統領との違いをアピールした。

バイデン氏は「民主主義こそが人類の潜在能力を完全に引き出す最善のツールだ」と強調し、同盟国に民主主義陣営の結束を訴えた。中国を念頭に「権威主義者は民主主義の時代の終わりを主張しようとするがそれは間違っている」とも指摘した。

具体的には反体制勢力やマイノリティーの監視にハイテク技術を使われないように同盟国と取り組むと説明した。同盟国とともに公平な貿易ルールの策定や質の高いインフラ投資についても協力を深めると強調した。

一方でバイデン氏は「世界の大国は関係を慎重に管理する責務がある」とも語った。米中対立が「新たな冷戦」につながることは望まないとの見方を示した。

「今後10年間が世界共同体として我々の将来を決定づける」と指摘し、新型コロナウイルスや気候変動対策では中国に協力を求めた。バイデン氏は22日、コロナ対策に向けた国際会議をオンライン形式で主催する。

北朝鮮問題については「真剣かつ持続的な外交を行って朝鮮半島の完全非核化を目指す」と強調した。

バイデン氏は国際協調や同盟重視を強く打ち出したが、課題は山積する。オーストラリアは潜水艦の配備に向けた協力国をフランスから米英に突然切り替えた。仏は猛反発し、駐米と駐豪大使をそれぞれ召還した。仏は対中国や中東政策に深く関わっており、米政権は関係修復を急ぐ。

気候変動でも米国は中国に対策強化を訴えるが、これまでに具体的な協力は得られていない。米中対立が激しく、協力分野と位置づけられてきた気候変動対策での連携も難しくなっているようだ。

国連のグテレス事務総長は20日の記者会見で、10~11月に開く第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)について「失敗するリスクが高い」と警鐘を鳴らした。

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金融庁・みずほ、背水の陣 システム障害究明へ異例処分

金融庁・みずほ、背水の陣 システム障害究明へ異例処分
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金融庁は22日にもみずほフィナンシャルグループとみずほ銀行に対して業務改善命令を出し、異例となるシステムの「管理命令」をあわせて発動する。みずほは度重なるシステム障害の原因を完全に特定できておらず、異例の行政介入を招くことになった。金融庁も自ら銀行システムを管理して「無策」との批判をかわす狙いだが、障害が再発すれば共同責任を負うことになる。みずほも金融庁も、そろって背水の陣だ。

みずほは今年2月以降、7回のシステム障害を起こした。個人利用者のキャッシュカードがATMに吸い込まれただけでなく、企業の外貨建て送金が滞るなどビジネスにも甚大な影響が出た。

問題はシステム障害の原因を完全に特定できていないことだ。8月の今年5回目の障害は、バックアップなどの処理がきちんと発動できず、店頭の受付業務ができなくなった。8月末に金融庁にあげた報告書では「さらなる調査や確認が必要」と原因を突き止められず、自らのシステム運営能力の限界を示すことになった。

金融庁はみずほの自浄能力の乏しさにも懸念を強めている。同行は2018年にもATMがキャッシュカードを吸い込む同様のトラブルが約1800件起きていた。にもかかわらず、システム改修などの必要な措置をしなかったことが今年になって判明。金融庁の今後の管理下では、こうした対応のひとつひとつがつぶさに点検されることになる。

異例のシステム管理に打って出る金融庁も、追い込まれている。当初は今夏にもみずほに業務改善命令を出して事態を収束させる段取りを描いていたが、システム障害が止まらず機を逸した。みずほは02年の新銀行発足以来、たびたびシステム障害を起こしており、金融庁にも「無策」との批判がつきまとう。異例の長期検査にいったんの節目をつくるには、問題解決の前になんらかの行政処分をうつ必要に迫られていた。

金融庁はみずほ銀が進めるシステムの更新作業や保守業務を共同で管理して、原因究明と再発防止をともに狙う。同庁にはシステム運営やサイバーテロ対策を専門に検査する数十人規模の部隊がある。エンジニアら専門家を派遣して、みずほの基幹システムに欠陥がないかくまなく検査する方針だ。

ただ、金融庁にとって、障害の原因究明ができていないみずほのシステム運営に関与すれば、今後は共同責任を負うことになる。再びシステム障害が起きれば、利用者らの批判の矛先は金融庁にも向きかねない。原因究明と再発防止を確実に実行できるか。金融庁にとっても大きなカケとなる。』

みずほ銀行へ異例の処分 なぜ金融庁がシステム管理?

みずほ銀行へ異例の処分 なぜ金融庁がシステム管理?
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB221WR0S1A920C2000000/

『金融庁は22日、システム障害が相次ぐみずほフィナンシャルグループ(FG)とみずほ銀行に対し、業務改善命令を発動した。システム運営を事実上、当局が管理する異例の措置となり、具体的な内容や今後の展開を総ざらいしてみた。

①金融庁が出す具体的な行政処分は?

みずほFGとみずほ銀に対して、業務改善命令を出した。みずほは今年2月以降、少なくとも7回のシステム障害を起こしており、運営体制の見直しを求める。みずほがシステム障害で業務改善命令を受けるのは、2002年の発足以来3回目だ。

銀行法26条にある「その他監督上必要な措置」を使って、システム運営を細かく監督して実質管理していく方針だ。具体的には、みずほがシステムの改修計画を書き込んだ「工程表」を金融庁に提出し、それを当局が1つずつ細かく精査して不要不急と判断すればストップをかける。みずほが今年2月にシステム障害を起こした原因は、デジタル口座への大量の移行作業だった。準備作業やバックアップ体制が十分か、金融庁が事前にチェックすることになる。こうした措置を銀行にとるのは初めてだ。

システム障害について謝罪するみずほFGの坂井社長(左)とみずほ銀行の藤原頭取(8月、東京・丸の内)

②なぜ異例の行政処分に踏み切る?

最大の理由は、みずほ自身がシステム障害の原因を把握し切れていないことだ。8月に起きた5回目の障害では、機器故障時に備えたはずのバックアップシステムが作動せず、複数のエラーが発生した。金融庁高官は「みずほに原因究明を一任するのはもはや困難だ」として「強力な監督体制に切り替える」という。

金融庁が「無策」ととられるリスクを避ける狙いもありそうだ。今年春にはじまった金融庁検査は既に半年がたとうとしている。その間もシステム障害は繰り返し起きており、行政処分を打つタイミングを逸しつつあった。通常の業務改善命令は「不祥事の幕引き」との位置づけだが、今回はシステム管理を通じて検査を続け、金融庁が原因究明へ一段と深く踏み込む。

③金融庁はシステムを管理・監督できるの?

金融庁にも数十人規模のシステム検査部隊がある。霞が関の官僚ではなく、外部から募ったシステムエンジニアらが中心だ。普段から民間銀行のシステムを検査したり、サイバーセキュリティーの防止策を練ったりしており、ある程度の実績はある。

ただ、みずほの基幹システム「MINORI」は日本IBM、日立製作所、富士通、NTTデータの大手4社が参画し、複雑に入り組んでいる。みずほ自身もITベンダーも制御しきれないからシステム障害が多発しているとみられ、金融庁が厳密に管理できるわけではない。原因究明も難航する可能性があり、巨大な情報システムを運営する日銀に援軍を頼む案も浮かんでいる。

システム障害を伝えるみずほ銀行の貼り紙(8月、東京都中央区)

④みずほは今回の処分を受けてどう対応するのか?

業務改善命令を受ければ、通常は1カ月ほどで経営体制の見直しなど「業務改善計画」を金融庁に提出する。今回はシステムの管理・監督のため、金融庁の検査は年末まで続く可能性がある。システム障害の根本原因が不明のままでは、経営体制のどこに責任があるのかも見通せず、業務改善計画そのものを出すタイミングを探ることになる。

一つの焦点は経営体制の見直しだが、みずほ内でも金融庁内でも、組織・人事案が一本化されていない。みずほは長引くシステム障害問題で社内の士気が著しく落ちており、一定の「けじめ」が必要になってきた。みずほ銀は藤原弘治頭取が引責辞任する組織刷新案を今春にまとめたが、金融庁検査が長期化して人事案そのものが宙に浮いている。

もう一つの焦点は、4500億円かけて完成させた基幹システム「MINORI」をどうするかだ。金融庁内には基幹システムそのものに欠陥があるとの見方があり、抜本的な改修を迫られる可能性もある。原因究明の行方次第では、新たなコスト負担も発生しかねない。

⑤海外ではこのような事例はあるのか?

米国では米連邦準備理事会(FRB)も今年2月、資金決済システムが3時間以上も動かなくなる大規模なシステム障害を起こした。ただ、米国内では大きな社会問題とはならず、ミスの受け止めについての風土の違いがある。日銀幹部は「FRBのような障害が日本で発生すれば、国会にも呼ばれて詰問されるだろう」と話す。日本は金融資産が預金に偏っており、民間銀行部門への要求水準は高い。それがシステム障害への厳しい目につながっている面がある。

また、海外の行政処分は罰金が中心だ。2015年にはニューヨーク証券取引所でもシステム障害が起きたが、関連した処分は1400万ドル(約15億円)の罰金だった。大手米銀も不正営業などで罰金処分を受けることがあるが、行政が直接的に経営体制の刷新を求めたり、システム運営を管理したりする例は聞かない。

金融庁のデータでは、日本の金融機関全体で年間1500件ものシステム障害が起きている。完全無欠にシステムを運営するのは極めて困難で、障害発生後の顧客対応などがむしろ重要になる。

みずほのATMがストップした8月には、セブン銀行もシステム障害を起こし、給与振り込みが遅れるなど1億円分の取引に影響が出た。金融庁幹部は「事例だけをみれば、セブン銀の案件も顧客に影響した」と話すが、それでもみずほへの処分が重くなるのは、システム障害が止まらないためだ。みずほは新銀行発足直後の02年、さらには11年には東日本大震災の直後にも大規模な障害を起こしている。「負の歴史」が、当局や顧客の目線を厳しくしている。

⑥みずほFGの株価や業績への影響は?

今年度の株価推移を見るとほぼ横ばい圏で、低金利下で銀行株は軒並み上値が重い。システムトラブルが起きたATMはリテール事業と関係が深いが、長く続く低金利環境下ではそもそも十分な収益を上げることが難しくなっている。みずほFGの21年4~6月期の連結純利益は前年同期比約2倍の2505億円だった。

ただ、事態の収拾が長引けばレピュテーション(評判)に傷がつき、投資信託販売や法人取引への影響も懸念される。デジタル分野での成長投資の速度が落ちたり、人材をひき付ける魅力が低下したりしていくと、中長期の成長力を下押ししかねない。

(金融グループ長 河浪武史)

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野崎浩成
東洋大学 国際学部教授

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分析・考察 取れる行政措置は、銀行法24条報告(報告徴求命令)、業務改善命令、業務停止命令と、問題の深刻さや経営姿勢等に基づき重くなります。

みずほはシステム事案において度重なる業務改善命令を受けており、次の段階となると一部業務停止命令が視野に入ります。しかし、同行のシステムは金融市場および社会生活に多大な影響を及ぼすため、「次の段階」の措置が実質的にない状況です。

このため、「管理」は異例ではありますが、当局としての監督上の責任を果たすために苦肉の策と言えます。

みずほは、「管理」まで追い込まれたことをシステム上の問題としてではなく、全ての管理態勢および文化の見直しの奇貨とすべきでしょう。

2021年9月22日 13:25いいね
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みずほ銀行のシステム、金融庁が管理へ 異例の行政処分

みずほ銀行のシステム、金融庁が管理へ 異例の行政処分
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『金融庁は週内にも、ATMなどの障害が多発するみずほフィナンシャルグループとみずほ銀行に対し、異例の行政処分となるシステムの「管理命令」を発動する方針だ。年内いっぱいをメドに、同行が進めるシステムの更新作業や保守業務を共同で管理し、必要に応じて運営体制の見直しも命じる。金融当局がシステム運営を直接監督することで障害再発を最小限にとどめ、金融システム不安への波及を防ぐ。

みずほは今年2月以降、7回のシステム障害を起こし、利用者の不安が広がっている。機器の改修などを進めているが、基幹システムそのものに欠陥がある可能性もあり、障害再発のリスクがぬぐえない。そのため金融庁は21日、みずほ銀に行政処分の発動方針を伝えた。業務停止などの命令ができる銀行法26条に基づき、金融庁の管理下でシステムを運営するよう命じる考えだ。

銀行システムを金融当局が管理するような行政処分の発動は初めてだ。金融庁はみずほに対し、まずはシステム運営に負荷のかかる新規事業やサービスの停止を求め、システムの点検を最優先するよう求める。金融庁とみずほが共同で危機対応チームをつくり、当局がシステム運営を直接管理するようにする方針だ。当面は年内いっぱいかけて、システム改修にあたる方針だ。

ATMがキャッシュカードや通帳を吸い込んで利用者を長時間足止めした2月28日の障害は、デジタル口座への移行作業が発端となって起きた。今後はこうした作業を進める際にも金融庁が事前にチェックし、準備作業やバックアップ体制が十分か点検する。

基幹システムに欠陥があれば、抜本的な改修を求める可能性もある。みずほの基幹システム「MINORI」は2019年に4500億円をかけて完成させた。金融当局はみずほの人的ミスだけではなく、基幹システムの「MINORI」そのものに欠陥がある可能性もあるとみており、当局の判断次第ではみずほに追加のコスト負担が発生しかねない。

金融庁は2月の大規模障害の発生後からみずほ銀に立ち入り検査をしている。当初は9月中に業務改善命令を発動する方向で検討していたが、8月以降も立て続けにシステム障害が発生するなど、混乱は収まっていない。金融庁がシステム運営を直接管理することで原因究明を急ぐ。

みずほは新銀行発足時の02年に大規模なシステム障害を起こし、11年の東日本大震災直後にもATMなどが動かなくなる大規模な障害が発生した。いずれも金融庁は業務改善命令などを出し、経営陣の責任問題に発展した。

今回は抜本的なシステム運営体制の点検がまず必要とみている。システム問題の根本原因を解明してから、金融庁は行政処分を左右する経営責任の所在を明確にする考えだ。

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