[FT]米特使「元大統領逃亡でタリバンとの交渉が頓挫」

[FT]米特使「元大統領逃亡でタリバンとの交渉が頓挫」
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 ※ これは、絶対読んどいた方がいい…。

『米国のアフガニスタン和平担当特別代表を務めたザルメイ・ハリルザド氏はフィナンシャル・タイムズ(FT)のインタビューに応じ、イスラム主義組織タリバンとのアフガニスタンの政権移行についての交渉が、土壇場で同国のガニ元大統領が国外脱出したことで水の泡になったと語った。

ハリルザド氏は、タリバン側とカブールには侵攻しないと合意していたと話す=ロイター
ハリルザド氏は2018年にトランプ前米大統領から任命され、米政府とタリバンとの交渉を主導してきた。今回、アフガニスタンからの米軍撤退後初めてインタビューに応じ、8月15日の首都カブール陥落直前にタリバンの首都進攻を2週間踏みとどまらせる猶予期間を確保していたことを明らかにした。

計画では、タリバンがカブールを包囲する状況が続くなかでもカタールの首都ドーハで新政権への移行に向けての交渉を進め、交渉が成立するまでガニ氏は大統領職にとどまることになっていた。だがハリルザド氏によると、ガニ氏が国外脱出したことでカブールの治安部隊が崩壊し、タリバンはその日のうちに首都を制圧したという。このことで、多数の市民が国外避難しようと大混乱が生じ、ドーハでの交渉は事実上頓挫した。

逃亡の意図「みじんも」感じず

ハリルザド氏はFTとのインタビューで「我々は最後までタリバンをカブールに入れさせないための合意を取りつけていた」と強調した。ガニ氏に逃亡の意図があったことは「みじんも」感じられなかったという。

ハリルザド氏の話からは、崩壊寸前のアフガニスタン政府の混乱やタリバンによるカブール制圧を知った米政府内部の動揺がうかがわれる。ブリンケン米国務長官は9月13日の下院外交委員会の公聴会で、ガニ氏は国外脱出の前夜に米政府の計画に沿って行動すると確約したと証言したが、この発言とも一致する。

カブールの治安部隊はガニ氏が姿を消したとのニュースで散り散りになったとハリルザド氏は話す。「ガニ氏が逃亡した後、カブールの法と秩序を誰が守るのかという問題が浮上した。タリバンは我々に『カブールの治安に責任をとるか』と迫った。その結果は誰もが知るところで、我々は責任をとるつもりはなかった」。その後ハリルザド氏は同じ日のうちに、米軍で中東地域を統括するマッケンジー中央軍司令官とタリバン幹部との以前から予定されていた会談にドーハで臨んだという。

そこでタリバンの大統領府の掌握を許す暗黙の了解や明確な取り決めがなされたとの臆測があるが、ハリルザド氏はこれを否定した。「我々はタリバンにいかなる形であろうとゴーサインのようなものを出していない。我々は米軍の任務(カブール空港での国外退避作戦)について話しただけだ」

米政府関係者によると、ハリルザド氏が停戦に向けて当時のガニ政権と最初に協議したのは8月12日のことで、その2日後にタリバンと当面カブールを不可侵とする合意に達したという。だが、タリバン側はガニ氏の大統領辞任を前提条件として要求していたため、ガニ氏が新政権にかかわる可能性はほぼなかった。一方でアフガニスタンの国土のほとんどを掌握したタリバンの部隊は8月13日にはカブールを包囲していた。

「流血を防ぐ」ため脱出とガニ氏は主張
ガニ氏にコメントを求めることはできなかった。ガニ氏は8月18日にアラブ首長国連邦(UAE)からフェイスブックに投稿した動画で、タリバンが首都に迫るなか自らの生命が危険にさらされ、カブールでの「流血を防ぐ」ために脱出したと述べた。また、出国の際には着替え一式だけを携えていたとし、不正に得た多額の現金とともに脱出したとの疑惑を「根拠のない戯言(たわごと)」と否定した。また8日にはツイッターに声明を投稿し、「(自分がカブールに)残れば1990年代の内戦時のような市街戦になる危険がある」との大統領府警備の忠告に従って国外退避したと釈明した。

70歳の共和党員のハリルザド氏は、過去3年間のタリバンへの対応とトランプ政権が同氏の主導のもと2020年3月にアフガン和平合意をタリバンと結んだことで批判を受けてきた。アフガン合意は米政府が交渉のカードを自ら捨てたも同然で、選挙で選ばれたアフガニスタン政府をないがしろにし、タリバンを合法と認めることにつながりかねないといった批判だ。

バイデン米大統領も20年のアフガン合意を批判していたが、アフガニスタン出身の外交官であるハリルザド氏をアフガン和平担当特別代表として続投させた。これにはハリルザド氏自身が「ある意味で」驚いたという。同氏が交渉にあたった合意がアフガニスタン政府を貶めたと憤るガニ氏は、バイデン氏の大統領就任に伴って別の人物が特別代表に任命されると期待していたため、しばらくはハリルザド氏に会うことを拒否していた。

「当然ながら私は去るつもりでいた」とハリルザド氏は語った。

駐アフガニスタン米国大使を務め、約40年にわたって中東周辺地域に携わってきたハリルザド氏は、20年のアフガン合意で制約を課されたのは同氏が特別代表に就任する前の米国の対応に責任があると非難する。タリバンが軍事的に勢力を拡大するにつれて歴代の米政権はタリバンへの要求を徐々に下げていったという。同氏が18年に特別代表に任命されたのは「それまでの失敗の結果だった」と主張する。

「与えられた条件下で最善を尽くした」
「(米政府内では)一種のスケープゴートを探していた。彼らは私に『もっとうまくできたはずなのに残念です』と言わせたかったのだろう。だが、振り返れば、私は配られたカード、つまり与えられた条件のなかでできる限りの最善を尽くした」

辞職を考えたかとの問いには、辞表を常に自宅に置いていたと答え、「ここ(米国務省)では誰かが勝手に持っていってしまうかもしれないから」と付け加えた。

ハリルザド氏は長時間にわたるインタビューの中で、同氏がトランプ氏再選のあかつきには国務長官になりたいがためアフガン問題に「手を突っ込っんで」過大な成果を約束したと米中央情報局(CIA)で南・東南アジア担当テロ対策部長を務めた人物が疑惑を呈していることについても「荒唐無稽」と否定した。

ハリルザド氏は「米国史上最長の戦争」が混乱のなかで終結した責任の大半はアフガニスタン側にあると主張する。「彼らが(和平交渉を)しなかったことや一方の当事者が空中分解したことは米国の責任ではない。それは私の責任ではない」

それでもやはり何年も前にタリバンと政治的な決着をつけられなかったことは悔やまれるという。「今後は自らを省みることが多くなるだろう」

By Katrina Manson

(2021年9月15日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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