[FT]中道左派、ノルウェーの政権も奪取

[FT]中道左派、ノルウェーの政権も奪取 独でも高支持率
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『これまで20年ほどの北欧諸国での有権者の行動をみると、社会民主主義の砦(とりで)という評判は有名無実になりつつあった。ところが、13日投開票のノルウェー議会選で最大野党の労働党(中道左派)が勝利したことで、情勢は変わった。

ノルウェー議会選で勝利し、次期首相に就く見通しになった労働党のストーレ党首(13日、オスロ)=AP

北欧のノルウェー、デンマーク、スウェーデンの3カ国がいずれも社会民主主義を標榜する政党の首相を擁するのは2001年以降で初めてだ。この流れを受け、中道左派の指導者たちは次の大きな勝利の可能性を視野に入れている。ドイツの次期首相が決まる連邦議会選(総選挙)だ。26日の投票を前にした世論調査では、ドイツ社会民主党(SPD)の首相候補、オラフ・ショルツ財務相が支持率でトップに立っている。

ノルウェー議会(一院制)のアンニケン・ハイトフェルト議員(労働党)は取材に対し、「スウェーデン、デンマーク、フィンランドの次はノルウェーだった。何かが起きている。2週間後にドイツの政権がどうなるのか見届けないといけない。新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、人々はこぞって福祉に期待しているのだと思う。社会の格差がずっと広がってきた。それも欧州全域で」と主張した。ハイトフェルト氏はノルウェーの次期外相の有力候補だとされる。

ドイツの次期首相候補として支持率トップのショルツ財務相(14日)=AP

独SPDの戦略担当は以前から、北欧の状況がいずれドイツでも起こり得ると指摘してきた。だが、北欧で社会民主主義が復活している背景はその認識とはやや異なる。

労働党は第1党でも得票率伸びず

今回のノルウェー議会選では、1924年以降のすべての議会選と同じく、労働党が第1党となった。しかし、得票率は26.4%にすぎず、この97年間で下から2番目の低さだった。次期首相に就くとみられる労働党のストーレ党首が「大きな失望」と評した2017年の前回議会選での得票率さえも、わずかだが、下回った。

同様に、18年のスウェーデン議会選では、社会民主労働党が政権の維持には成功したものの、得票率は1908年以降で最も低くなった。

その理由は難しくない。北欧でも、ほかの欧州諸国と同じく、多数の政党が乱立する状況が進んでいるからだ。ノルウェー議会では10党が議席を持つ。

連立政権の政策調整は難題に

ノルウェーで労働党が勢力を回復した大きな理由は、友党が伸長したからだ。地方を基盤とする中央党、社会主義左翼党を含めた3党の連立政権になる可能性が高い。中道左派が得た100議席のうち、労働党より左寄りの政党が得たのは24議席だった。

スウェーデンの中道右派政権を率いたカール・ビルト元首相は「一般的な傾向として、かつての社会民主主義はいまよりもはるかに強大な政治勢力だった。だが、いまでは総じて多党化が進み、もはや巨大政党はみあたらない。ドイツの選挙はよい例だ。以前はSPDとキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)の二大勢力が政界を支配し、ともに得票率は40%台だったが、最近では20%台前半で競り合っている」と指摘した。

多党化は「社会の多様化が進展している表れ」で、「階級を背景にした過去の政治のやり方はまったく機能しなくなった」のが現状だと、ビルト氏は強調した。

北欧の社会民主主義への圧力は、デンマークとスウェーデンで左派から支持者を奪った右派ポピュリスト(大衆迎合主義者)政党の台頭で強まった。だが、ノルウェー議会選では、ポピュリスト政党の進歩党が93年以降で最悪の結果となった。

デンマークでは、19年に就任した中道左派の社会民主党のフレデリクセン首相が、ポピュリスト政党であるデンマーク国民党の主張に歩み寄り、政策を移民抑制へと大きく変更した。

フレデリクセン氏は19年の選挙前の取材でこう話していた。「社会民主主義政党として最も重要なことは、実質的な存在意義を有することだと考えている。人々が直面する様々な問題について解決策を提示できるかどうか、ということだ」

ノルウェーのストーレ氏は同国で広がる格差の是正を目指しており、労働党の支持者に「この国の普通の人たちがようやく、日の目を見られるだろう」と語りかけた。

ストーレ氏が直面するのは、一致団結した政権の樹立という困難な仕事だ。労働党主導が主導する連立政権は議会で過半数を確保するが、西欧最大の産油国ノルウェーの石油産業の将来や、欧州における同国の役回りを含む様々な課題を巡り、3党の間には大きな意見の相違が生じるとみられている。

仮にストーレ氏が共産主義の赤色党、石油開発に反対する緑の党といった、労働党よりも急進的な左派政党の協力を求めれば、連立協議は一段と困難になる。それでも13日の議会選で最も大きく躍進したポピュリストの中央党の協力は仰がなければならないはずだ。

13日のノルウェー議会選で投票するソールバルグ首相=AP

ビルト氏は「多党化で国の統治の難しさはさらに増すことになる。ヨーナス(ストーレ氏)は中央党とうまくやっていかないといけないだろう。幸運を祈る」と語った。

北欧諸国では社会民主主義が巻き返す一方、次の選挙では中道右派が手ごわい挑戦者になりそうだ。

ノルウェーの現首相で中道右派のソールバルグ氏は今年、取材に対し、1980年以降は中道と右派の政権が、左派とちょうど同じ期間、権力を握ってきたと説明した。2015~17年に北欧の5カ国で政権を担当した社会民主主義の政党は、1つだけだった。

中道左派のスウェーデン現政権の高官の一人は「足元で私たちに波が来ている」と認めた。「だが、これがずっと続くと思ったら、それは間違いだ」

By Richard Milne

(2021年9月14日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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