[FT]スペイン、減税で家計支援

[FT]スペイン、減税で家計支援 欧州覆う電力高騰に対応
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『スペイン政府は、エネルギー企業の利益から30億ユーロ(約3880億円)を徴収し、消費者向けに減税を行うと発表した。欧州の各国政府を圧迫している電力・ガス価格高騰が引き起こした政治的なダメージの抑制を目指す。

スペインのサンチェス首相は、エネルギー企業の利益水準について「容認できない」と話す=ロイター

一連の対策は14日、サンチェス首相率いる内閣が閣議決定したが、エネルギー企業側からは怒りの声が上がった。スペインの原子力産業は、計画が実行に移されたら、操業が停止する可能性があると述べた。

電力料金は1年で35%上昇

この夏を通して電力卸売価格は史上最高値を更新し続け、サンチェス氏の中道左派の少数与党政府にとってエネルギー価格高騰が喫緊の問題になった。消費者向け電力料金は8月までの1年間で35%上昇した。

スペイン政府は、天然ガスを使わないにもかかわらず、ガス価格上昇が電力価格上昇をもたらす仕組みから恩恵を受けた公益企業の「超過利益」26億ユーロを対象にしていると述べた。この措置に先駆け、7月には、炭素価格が上昇したために収入が増えたエネルギー企業から約6億5000万ユーロを徴収する同様の対策が発表されている。

政府は、徴収した資金を本来なら消費者の負担になるインフラ整備費用の支払いに充て、それによって家計における電力料金を減らすと話している。

また、サンチェス氏は2021年末まで、電力にかかわる消費者の税負担を14億ユーロ分削減すると述べた。「我々は、すべての市民が18年と同水準の電力料金を(21年に)払うようにすることを固く誓う」。サンチェス氏はこう語り、エネルギー企業の利益水準を「容認できない」とした。

エネルギー業界からは反発も

しかし、再生可能エネルギーを手がけるスペインの電力大手イベルドローラは、この計画は消費者にとって、さらに多くの問題を生み出すと述べた。「また、野心的な気候変動目標を支えるプロジェクトを実現するためにスペインが何十億ユーロもの民間投資を必要としている肝心な時期に、国に対する投資家の信頼感も損なうことになる」としている。

スペイン原子力産業協会は、「法案が(現在の)過剰な税負担の圧力と重なると、すべての原子力設備が運転停止に追い込まれる」と話している。

多くの消費者が固定料金ではなく変動料金を払っているため、スペインの電力小売価格は同国の電力卸売市場と密接に連動している。

エネルギー価格高騰は欧州全体に影響を及ぼしている。石炭に代わる燃料として液化天然ガス(LNG)に向かう中国の需要、炭素価格の上昇、ロシアからの供給減少といった要因によって生じた現象だ。

「スペインでは市民が家計で窮状を感じているが、これはスペインだけの問題ではない。世界中で問題になってはいないにしても、欧州では問題となっている」。英調査会社オックスフォード・エコノミクスの欧州経済部門を率いるアンヘル・タラベラ氏は、こう話す。「スペインの仕組みが他国と異なるために、世界の大部分はまだ気づいていないが、遅かれ早かれ似たような状況が他国でも生じるだろう」

実際、ここ数日で、フランス政府が燃料支払いに対する直接補助金の給付延長を検討すると述べたほか、ギリシャは最近の電力料金上昇を補填するために1億5000万ユーロ規模の基金設立を発表した。

ドイツでは先週、ベンチマークとなる22年引き渡しの電力卸売価格が1メガワット時あたり90ユーロ台を突破した。年初の水準のほぼ2倍で、08年夏に記録した史上最高値を更新した。

フランスの電力大手エンジーの分析部門エナジースキャンを率いるジュリアン・オアロ氏は、この冬の欧州向けのロシア産ガスの供給量がはっきりしないと、市場は今後も逼迫し、価格が高止まりすると警鐘を鳴らす。「9月でこの状況なので、暖房用のガス需要が高まる今後数カ月がかなり心配だ」と話す。

イタリアでも電力料金4割上昇の可能性

イタリアのチンゴラーニ環境相は13日、ガス価格と炭素価格が上昇しているため、イタリアの電力料金が次の四半期に最大で40%上昇する可能性があると警告した。

エネルギー価格の上昇は、欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会にも圧力をかけた。欧州委は7月、自動車燃料と建物の暖房に対する炭素価格の設定を含む温暖化ガス削減に向けた包括案を提案したばかりだ。

この提案はスペインやフランスなどからの反発を招いた。こうした国は、一連の方策は、環境に優しく炭素排出量が少ない燃料に簡単に切り替えられない貧しい人たちを直撃すると主張している。

「エネルギー分野で今生じている価格高騰のためにまひ状態に陥ったり、物事の進め方を遅らせたりするのではなく、すべての人が手ごろな価格の再生可能エネルギーを利用できるように再生可能エネルギーへの移行を加速させるべきだ」。欧州委のティメルマンス上級副委員長(気候変動担当)は、この問題に関して14日開かれる欧州議会の議論に先駆け、こう語った。

欧州委は批判をかわすために、新たな炭素価格制度によって最も大きな影響を受ける世帯を支援するために、数十億ユーロ規模の社会基金を立ち上げることを提案している。

By Daniel Dombey, Mehreen Khan and Tom Wilson

(2021年9月15日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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