EU、危機対応へ新組織 情報共有で安保強化

EU、危機対応へ新組織 情報共有で安保強化
欧州委員長が施政方針
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR156NI0V10C21A9000000/

『【ブリュッセル=竹内康雄】欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は15日、EUの安全保障分野の統合を進める意向を表明した。加盟国間で安保情報を共有する新組織を立ち上げ、EUとしての兵力も展開できるようにする考えだ。新型コロナウイルス禍を受け、感染症分野でも新機関を設ける方針も示した。

フランスのストラスブールの欧州議会で演説した。この日の演説は年に1回実施されるもので、これまでの業績を振り返るとともに、今後の施政方針を示す。2019年12月に欧州委員長に就任したフォンデアライエン氏にとって2回目。

同氏は加盟国間で警察訓練から宇宙まで幅広い情報を共有する新組織を設立すると明らかにした。サイバー分野でも加盟国が共同で対応できる新法をつくり、軍事・安保分野での統合を進める考えを示した。

EUでは5千人規模の即応部隊の設置の検討が進んでいる。22年前半にEU議長国に就くフランスとともに、欧州の防衛に関する首脳会議を開き、統合を前進させる考えだ。

フォンデアライエン氏は「欧州は単独でより多くのことができるし、明らかにそうすべきだ」と述べ、EUが安全保障分野で独自の行動を増やすよう訴えた。「北大西洋条約機構(NATO)や国連が参加しないミッションでもEUが参加することはある」とも語り、「欧州防衛連合」としてEUの自立性を高める方針を示した。

これまでも同分野の統合は議論されてきたものの、EUへの権限移譲に慎重な加盟国もあり、進んでこなかった。フォンデアライエン氏は「能力の不足ではなく、政治的な意思が欠如していた」と述べ、加盟国に対応を促した。

背景には、アフガニスタンを巡る混乱がある。フォンデアライエン氏はアフガンから欧州各国が軍を撤収させたことについて、「なぜ任務が突然終わったのか考えなければならない」と語った。

欧州首脳による米軍の撤収延期の要請にもかかわらず、バイデン米大統領は8月末に予定通り撤収した。米国抜きでアフガンにとどまる力のない欧州勢も撤収を余儀なくされた。米国に過度に依存した安保体制を見直す機運が高まっている。

演説の冒頭では、新型コロナ対策も取り上げた。EUの成人の70%が既に2回目のワクチン接種を終えたことに触れ、域内での取り組みを称賛。その上で新たに感染症などに対応する新機関を立ち上げると表明した。

27年までに加盟国に500億ユーロ(約6兆5000億円)を投じるよう提案し「地域的な流行が世界的な大流行になるのを防ぐ」と説明した。22年半ばまでにワクチン接種が進んでいないアフリカなど途上国に2億回分を追加寄付することも明らかにした。

深刻な半導体不足にも言及した。世界的に自動車やスマートフォンの生産に支障が出ている。フォンデアライエン氏は「デジタルは(将来の)成否を決める問題だ」として、アジア製の半導体に過度に依存している状態を改善する必要があると主張した。実現のために半導体の域内での技術開発や生産を推進する新法をつくると明らかにした。

気候変動対策では10~11月の第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)が「国際社会にとっての正念場だ」と強調。中国には石炭事業の停止、米国には途上国への資金支援の増額を求める一方、EUとして40億ユーロの追加の資金拠出をすると表明した。』