英仏海峡の不法移民で両国対立

英仏海峡の不法移民で両国対立 英、仏への強制送還も
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『【ロンドン=中島裕介】ドーバー海峡を渡ってフランスから英国に入る難民や不法移民への対応をめぐり、両国の対立が深まっている。足元での移民らの急増を受け、英国は自国海域内から押し戻す方針を表明。フランスはこれに猛反発している。

英BBCによると、年初からこれまでに1万2500人以上の不法移民がゴムボートや小型船などでフランスから英国に渡った。2020年は年間で約8500人、19年は2000人ほどだったため、21年は異例の多さになっている。

移民らは内戦や紛争が続くイエメンやソマリア、イラクなどの出身で、アフガニスタン人も含まれる。密航業者に大金を支払い、数時間かけて英仏海峡を渡る。仏北部沿岸の町グランドサントなどには英国への渡航希望者が集まってテントを張り、不法な出航の機会を待っている状況だ。

これに対応するため、英政府は9日までに、パテル内相の承認がある場合に、英海域に入ってきたボートをフランス側に押し返す方針を決めた。措置発動は安全で限られた場合にのみとしているが、方針そのものは政府内で保守系の議員を中心に不法移民の急増に懸念が強まっていることが背景にある。

不満の矛先はフランスにも向く。パテル氏は7月に合意した移民対策向けの約5400万ポンド(約82億円)のフランスへの資金提供の凍結も示唆した。

フランスの反発は強い。ダルマナン内相は8日、ロンドンでパテル氏と会談したが、この問題での進展は得られなかったもようだ。ダルマナン氏は9日には自身のツイッターに「海洋法に反する(英国の)行動や金銭的な恐喝は容認できない。私はそれをパテル氏に告げた」と投稿した。

事態が混迷する背景には英国の欧州連合(EU)離脱の影響もある。国際法や国連の難民条約に基づけば、各国は海域内や領土内にいる不法移民らの保護を求められる。ただEUの「ダブリン規則」では、EU域内で最初に到着した国で難民審査を行うルールがある。このため英国はEU加盟中は、フランスに合法的に不法移民を送還できた。

だが英国は21年1月にEUを完全離脱したためダブリン規則のルールは使えない。英メディアによれば、まだ代わりの難民申請に関する取り決めをフランスやEUと合意できていない。

今後、イスラム主義組織タリバンが制圧したアフガニスタンから流出する市民がさらに増えることも予想される。英仏海峡での不法移民を巡る対立はさらに深まる恐れもある。』