米英、豪州の原子力潜水艦配備を支援

米英、豪州の原子力潜水艦配備を支援 中国念頭に
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN15ENL0V10C21A9000000/

『【ワシントン=永沢毅】米国、英国、オーストラリアは15日、インド太平洋の安定に向けた新たな安全保障協力の枠組みの設置で合意したと発表した。3カ国による外交・安保担当の高官協議を立ち上げ、協力の第1弾として米英が豪州の原子力潜水艦の配備を支援する。中国を念頭に抑止力を強化する。

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新たな枠組みは3カ国の頭文字を組み合わせた「AUKUS」。バイデン米大統領は15日(日本時間16日午前)、ジョンソン英首相、モリソン豪首相とオンラインを通じて共同記者発表に臨み「21世紀の脅威に対処する能力を最新のものに高めていく」と強調した。

原潜は原子力を動力とした潜水艦で、核保有国である米英が強みを持つ。秘匿性が高く長い時間の潜航が可能な原潜を展開できれば、中国の軍事活動が活発になっている南シナ海などを含むインド太平洋地域での抑止力が高まる。

3カ国はこれから18カ月かけて製造や訓練など必要な計画をまとめて早期の実現をめざす。モリソン氏は非核保有国である豪州が「核兵器の保有をめざすわけではない」と説明した。

軍事分野での重要性が増す人工知能(AI)とサイバー、量子テクノロジーでの協力を推進する。防衛産業における供給網(サプライチェーン)の統合も探る。

米政府高官は「特定の国を対象にした取り組みではない」としながらも「インド太平洋でルールに基づく国際秩序を維持し、平和と安定を推進するものだ」と語った。強権路線に傾斜する中国が念頭にある。バイデン氏は「3カ国の協力を深め、明確にする歴史的な一歩だ」と語った。

バイデン政権は24日に日本、豪州、インドとの4カ国による「Quad(クアッド)」首脳による初の対面式の会談をワシントンで開く。米英豪の新たな枠組みは多国間連携を重視するバイデン政権の取り組みの一環となる。

英国は新たな安保戦略でインド太平洋地域への関与を強めている。豪州は新型コロナウイルスの起源の調査を求めたのをきっかけに中国との対立を深めている。

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渡部恒雄
笹川平和財団 上席研究員

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分析・考察 米英豪の安全保障協力枠組みは歴史を考えると自然な流れだと思いますが、米英が豪州の原子力潜水艦の配備を支援する点が重要だと思います。

中国海軍が南シナ海の軍事基地や海南島の潜水艦基地などから太平洋での行動を活発化させることに対して、米国が警戒していることがわかるからです。

太平洋は米国本土の西海岸に直接繋がっているという地理上の現実は重要です。

アフガニスタンから撤退した内向きの米国は、中国が台湾を武力統一しようとした場合も介入しないのではないかという憶測がありますが、今回の米英豪の協力枠組みは、そのような憶測を否定する根拠となります。

2021年9月16日 8:23いいね
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秋田浩之
日本経済新聞社 本社コメンテーター

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分析・考察 米英豪はすでに同盟国であり、安保枠組みを作るだけなら、さほど大きなニュースではありません。興味深いのは、豪州への原潜支援が目玉になっていることです。中国海軍に対抗するだけでなく、中国の核戦力をけん制する狙いであることは明白です。
 中国は深い南シナ海にICBM搭載の原潜を配備し、米国への核攻撃力を強めようとしています。その動きを封じるには、中国原潜を見つけ、いざとなれば攻撃できる「ハンター原潜」を配備するのがいちばんです。

米英は豪州にその役割を一部、担ってもらうつもりなのでしょう。中国軍からみれば、実に嫌な動きに映るはずです。

2021年9月16日 10:39いいね
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岩間陽子
政策研究大学院大学 政策研究科 教授

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分析・考察 発表を読む限り、単に原潜を売るのではなく、豪州に原潜関連情報を供与することを考えており、その態様について向こう18カ月間で交渉するようです。

かつて1958年に米英相互防衛協定が締結され、イギリスはアメリカから原潜の設計に関する情報を含む、核関連情報を得られるようになりました。詳しくは、拙著『核の1968年体制と西ドイツ』第3章「米英『核同盟』と危機の季節」をお読みください。

今回、世界中でイギリスにしか供与していない原潜関連の情報をオーストラリアとシェアする道を歩み始めたということは、アメリカがオーストラリアを英の次に信頼する重要な同盟国と位置付けたと理解していいと思います。

2021年9月16日 8:39 (2021年9月16日 8:40更新)
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青山瑠妙
早稲田大学大学院アジア太平洋研究科 教授

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ひとこと解説 米英豪による新枠組みの最大のポイントは、米英が豪州の原子力潜水艦の配備を支援するところである。

核技術を他国と共有することはアメリカにとって異例な動きである。それだけに、中国に対抗していくバイデン政権の本気度が窺える。

2021年9月16日 8:32いいね
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菅野幹雄
日本経済新聞社 ワシントン支局長・本社コメンテーター

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分析・考察 「AUKUS」という呼び方が定着するかどうかは別として、米国、英国、オーストラリアという組み合わせの安全保障協力には「対中抑止」の固い連携を露骨なまでに演出する狙いが透けて見えます。

機密情報を共有する英語圏5カ国の「ファイブアイズ」の主要3カ国(残りはカナダとニュージーランド)で協力がすでに進むうえ、豪州による原子力潜水艦の配備支援も対中意識が明白です。「特定国を対象にしていない」という言葉を額面通り信じる人はいないでしょう。

インフラ投資銀などで中国にいち早く接近した英国、深い貿易関係から親中の色合いもあった豪州が、対中国でここまで深く手を組むとは……。国際情勢の変動の激しさを感じます。

2021年9月16日 8:12いいね
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