中国景気に減速感、8月生産伸び鈍く

中国景気に減速感、8月生産伸び鈍く 世界経済変調映す
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM155380V10C21A9000000/

『【北京=川手伊織】中国景気の減速感が強まっている。8月の工業生産は前年同月比5.3%増にとどまった。国際物流の停滞や半導体不足に直面するグローバル経済の変調を映す。7月下旬から新型コロナウイルスが再び広がる中、大規模な行動制限を繰り返す対応手法が消費の頭を押さえる。中国景気のもたつきが世界に波及するリスクが高まりつつある。
中国国家統計局が15日発表した8月の工業生産は、新型コロナの打撃から復調し始めた2020年7月(4.8%)以来の低い伸びとなった。季節の変動要因をならした前月比伸び率は0.31%とより鈍い。

背景の1つが海外経済の頭打ちだ。米欧では8月の購買担当者景気指数(PMI、総合、速報値)が悪化した。デルタ型の感染拡大が消費に及ぼす影響に加え、港湾の人手不足など供給網の混乱が長引いている。

浙江省寧波・舟山港の輸出コンテナ価格指数は新型コロナがまん延した昨年から上昇が続く。20年初と比べ4倍超に跳ね上がっている。

港湾手続きも遅れ気味だ。「米ロサンゼルスの港で陸揚げした輸出品が2週間足止めされたままだ」。天津市の貿易会社経営者は気をもむ。顧客が待つメキシコへの鉄道輸送のメドが立たない。

中国では新型コロナの再拡大を背景に港湾の検査が厳しくなっており、生産や輸出入の重荷となっている。「鉄道で欧州などに運び、そこから転送する荷主も出始めた」(物流コンサルタントの趙小敏氏)という。

世界的な半導体不足の影響も深刻だ。8月の自動車生産は前年同月より2割近く落ち込んだ。減少は4カ月連続だ。「半導体の供給拠点であるマレーシアなどで新型コロナの感染が広がり、減産圧力が強まっている」(中国汽車工業協会幹部)。21年の中国国内の販売台数は、前年比7%増の約2700万台とした予測を下回る可能性が大きくなっている。

加えて企業の体力をじわじわと奪うのが原材料高だ。投機資金の流入もあって一部の商品価格が高騰し、中国の中間財や素材に波及している。8月の卸売物価指数は前年同月比9.5%の上昇と、13年ぶりの水準を記録した。中小零細企業の収益を圧迫し、増産投資などを見送る動きもある。

液晶パネルや電池部材などで高い世界シェアを持つ中国の生産減速はグローバル経済の変調を映し出す。PMIの新規海外受注を示す指数は、8月まで4カ月連続で好不調の境目である50を下回る。3~6カ月後の輸出停滞を示唆する。

就業者の8割が働く中小零細企業は資金繰り難に苦しむほどで、雇用や賃金の足かせになっている。1~8月の都市部の新規雇用は938万人と、コロナ前の19年の同時期を5%近く下回る。

振るわない雇用、賃金は内需に波及する。消費動向を反映する社会消費品小売総額(小売売上高)は8月、前年同月比2.5%増にとどまった。全体の1割を占める飲食店が4.5%減と落ち込んだことが響いた。宿泊や運輸を含むサービス業の生産活動指数の上昇率も4.8%に縮まり、7%前後だったコロナ前の水準を下回った。

また、中国は感染者が出た地区の封鎖などでコロナ拡大を徹底して封じ込める「ゼロコロナ」政策を採ってきた。今夏の感染拡大でも省をまたぐ移動の制限や観光地の閉鎖が相次ぎ、接触型消費の重荷になった。

警戒態勢の強化と解除の繰り返しで消費は勢いを取り戻せない。丸紅中国の鈴木貴元・経済調査総監は「瞬間風速でみれば、内需の成長はほぼゼロになった」と語る。

追い打ちをかけるのが政府の規制強化だ。価格高騰に庶民の不満が強い不動産は、住宅ローンの総量規制やマンション取引の制限策を導入してきた。主要70都市の中古住宅価格は8月、前月比で下落した都市が上昇した都市を上回るなど需要は冷え込み始めている。

中国政府は地方政府のインフラ債発行を加速させて、公共事業で21年後半の景気を下支えする構えだ。ただ、グローバル景気の変調を背景にした踊り場から抜け出せなければ、影響はまた世界経済に跳ね返りかねない。

【関連記事】中国生産、8月5.3%増に減速 コロナ再拡大が重荷

多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

中空麻奈のアバター
中空麻奈
BNPパリバ証券 グローバルマーケット統括本部 副会長

コメントメニュー
ひとこと解説 中国の景気回復が冴えないが、背景にはいろいろありそうだ。

「共同富裕」を第二の100年目標として掲げ、不動産バブルを封じ込めるためデベロッパーには財務内容で厳格な縛りをかける。

金融システムの健全性を確保することも進めるなど、構造改革にも着手している。

いくつか大手の企業経営が不安視されているが、中国はこれまでも、CITIC、ITICなどの問題、理財商品の問題、華融資産管理の問題など、さらに大きな問題に発展しそうな局面でも乗り切ってきた。目先のリスクをどこまでコントロールするか、が鍵なのではないか。

2021年9月16日 9:01いいね
24

永浜利広のアバター
永浜利広
第一生命経済研究所 首席エコノミスト

コメントメニュー
ひとこと解説 中国は8月の総合PMIで見ても拡大縮小の分岐点である50を下回ってましたからね。

記事中にある不動産セクターの調整に加えて、炭素削減を背景とする生産規制も景気減速に大きく加担している模様です。

特に、個人消費については、コロナ感染拡大が収まってこないと厳しい状況が続くかもしれません。

2021年9月16日 8:10いいね
15

志田富雄のアバター
志田富雄
日本経済新聞社 編集委員

コメントメニュー
分析・考察 感染の再拡大に加え、中国政府が不動産市場の過熱を抑制したり、環境問題への対応を強めたりする政策(意図)的な影響も大きいと思います。生産量を抑えるよう求められた鉄鋼の原料、鉄鉱石の国際スポット価格は5月に記録した最高値から4割以上も急落しました。

商品市場全体を見れば米国の生産減の影響で原油相場が1バレル70ドルを再び超え、銅やアルミなどの非鉄金属も将来の需要増への期待や電力不足の影響で高値にあります。記事にある原材料高の影響は当面解消しそうにありません。

2021年9月16日 7:28 (2021年9月16日 7:31更新)
いいね
17

白井さゆりのアバター
白井さゆり
慶應義塾大学総合政策学部 教授

コメントメニュー
ひとこと解説 世界経済は今年4-6月期に比較的強い回復力を示していたが、7月からデルタ株の感染拡大もあって回復にもたつき感が見られる。

世界的にサービス産業の景況感が低下しているが、中でも中国では夏場の水害台風の影響と厳しい感染対策もあり、中小企業の景況感が製造業・サービス業ともに悪化が目立つ。
高騰するコモディティ価格を十分消費者物価に転嫁できず利益が下押しされる企業も多い。今後インフラ投資を増やしたり、銀行による中小企業支援を拡充する予定だが、開発不動産業者の債務不履行問題もありシステミックな債務も問題に発展しないか注目している。

2021年9月16日 7:28いいね
23 』