中国、東南ア・韓国で「上書き」外交

中国、東南ア・韓国で「上書き」外交 米に対抗
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『中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相は15日、10日からの東南アジア3カ国と韓国の訪問日程を終えた。米政府高官が直前に訪れたベトナムなどに重点的に足を運び、米国と各国との関係強化の動きを上書きするかのような外交活動を展開した。韓国には2022年2月に開幕する北京冬季五輪への協力を要請し、日米韓の結束にくさびを打ち込むことを狙った。

王氏は15日、ソウルで韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と会談した。韓国大統領府によると、文氏は「冬季五輪の直前開催国として北京五輪の開催を成功させるため協力する」と発言。王氏は「中韓両国は互いに離れられぬ関係で、ウィンウィンを実現するパートナーだ」と応じた。中国外交筋によると、中国は北京五輪の開幕式への文氏の招待を検討している。

王氏が北京冬季五輪への協力を求めたのは、欧米を中心に人権問題を理由とした「ボイコット論」が拡大しているためだ。英下院は7月、北京冬季五輪に政府代表を派遣しないように求める決議を採択した。欧州議会も同月、中国が香港や新疆ウイグル自治区での人権問題を改善しない限り、政府代表や外交官の招待を辞退するよう加盟各国や欧州委員会に求める決議を採択している。米上院も6月、北京冬季五輪への政府当局者の派遣を目的とした連邦予算の支出を禁じる法案を可決した。

中国共産党の習近平(シー・ジンピン)指導部にとって、北京冬季五輪の成功は極めて重要だ。22年秋には党最高指導部の人事を決める5年に1度の党大会があり、習国家主席は異例の3期目の続投を視野に入れている。先進国の一角を担う韓国の協力を取りつけて、ボイコット論の拡大に歯止めをかけようとしているのは間違いない。

日米韓の結束を阻む狙いも透ける。5月には文氏が訪米し、バイデン米大統領とホワイトハウスで会談し、関係強化を確認していた。日米韓3カ国の高官は9月14日にも北朝鮮情勢をめぐり都内で会談したばかりだ。

王氏は韓国訪問に先立ち、ハリス米副大統領とオースティン米国防長官が7~8月に相次ぎ訪問したベトナムとシンガポールを訪ねた。ハリス氏が100万回分の新型コロナウイルスのワクチンの追加供与を表明したベトナムでは、その3倍にあたる300万回分のワクチンを年内に追加で提供すると約束した。

ベトナムは新型コロナの感染拡大が続く一方で、深刻なワクチン不足に陥っており、接種率も低迷する。ワクチン外交をテコに根強い反中姿勢の軟化をもくろんだ。中国外務省の発表によると、ベトナムのブイ・タイン・ソン外相は「人権や香港、新疆ウイグル、台湾などの問題で中国を支持する」と発言したという。

シンガポールでは、中国が環太平洋経済連携協定(TPP)への参加を検討していることについて、歓迎の意向を取り付けた。日本などには中国の参加への警戒感が強いが、東南アジア諸国連合(ASEAN)では多国間貿易協定を通じた中国との経済関係の強化への期待は大きい。ASEANの支持を得て、アジアの貿易秩序づくりの主導権を握りたい考えだ。

親中国で知られるカンボジアでは、王氏は中国の経済援助で完成した競技場の引き渡し式に出席した。中国側の発表によるとフン・セン首相は「台湾、香港、新疆など中国の核心的利益に関わる問題で中国を断固支持する」と表明した。(北京=羽田野主、ソウル=恩地洋介、シンガポール=中野貴司)』