EU、台湾との関係強化

EU、台湾との関係強化 「インド太平洋戦略」に明記へ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR13BOQ0T10C21A9000000/

『【ブリュッセル=竹内康雄】欧州連合(EU)は近くまとめる初の「インド太平洋協力戦略」で、台湾との関係強化を打ち出す。人権や民主主義を巡ってEU中国関係が悪化するなか、経済面や地政学的観点から台湾の重要性は高まっている。半導体の調達や貿易投資関連の協力相手として台湾を明記し、事実上の関係格上げに踏み出す。

【関連記事】EU、日韓などにデジタル協定呼びかけ AI国家利用に制限

中国は台湾への軍事圧力を強めており、EUの新方針への反発は確実だ。日米豪印4カ国による「Quad(クアッド)」を軸に中国に向き合う日本政府もEUが台湾海峡の安定を重視する姿勢を歓迎している。アジア太平洋地域で欧州が関与を深めることで、対中国の抑止力が高まる効果を期待する。

インド太平洋協力戦略は外相に当たるボレル外交安全保障上級代表が近く公表する。4月にEUの閣僚理事会が大枠を示し、ボレル氏と欧州委員会が具体化を進めていた。4月段階の大枠では台湾に関する記述はなかった。

日本経済新聞が14日までに入手した戦略の原案によると、世界的に不足している半導体の供給網強化を巡っては、台湾と日本、韓国の名前を挙げて協力を深める意向を示した。貿易や投資協定を結んでいない国・地域との関係を強化するとも表明し、台湾を例示した。
貿易を多様化し、しなやかな供給網(サプライチェーン)を整備する狙いがある。国際貿易の保護に向けて、不公正な補助金や強制的な技術移転、知的財産権侵害などに対する規制強化でもこうしたパートナーと協力すると明示した。

加えて、EUと相手先の個人データの自由な流通を認める「十分性認定」の協議に入る可能性にも言及した。EUは一定の基準を満たさなければ、域外へのデータ移転を認めておらず、既に合意済みの日本を含め、自由なデータ流通圏をつくる狙いもある。

EUでは台湾との関係強化を求める声が強まっている。欧州議会の外交委員会は1日、EUと台湾との関係強化を求める報告書を賛成多数で採択した。台湾を「重要なパートナー」と位置づけた上で、出先機関の名称を現在の「欧州経済貿易オフィス」から「EUオフィス」と改称したり、EU・台湾の投資協定締結に向けた影響評価を実施したりするよう求めた。

背景にはEUと、中国との関係が悪化していることがある。EUは3月、少数民族ウイグル族の不当な扱いが人権侵害にあたるとして、中国の当局者らに約30年ぶりとなる制裁を決めた。

中国はこれに即座に反発し、欧州議員らに報復制裁を発動。中国の人権や民主主義への取り組みに批判が高まり、EUは2020年12月に中国と大筋合意した投資協定の批准に向けた手続きを事実上凍結した。

この記事の英文をNikkei Asiaで読む
Nikkei Asia

多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

伊藤さゆりのアバター
伊藤さゆり
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究理事

コメントメニュー
ひとこと解説 EUは中国を「戦略的なパートナーであり、競争相手であり、体制上のライバル」と位置付けるようになっています。

米中対立では、歴史や価値観を共有する米国に近い距離にあるものの、米国追随ではなく、欧州の価値と利益を守るための自律的な判断を下す方針です。

EUのインド太平洋戦略には、中国への過度の傾斜の是正という意味があり、産業面での「戦略的自立」のため、輸入依存度が高く、調達先の多様化が進んでいない戦略分野で、志を同じくするパートナーと協力を追求する方針も示しています。

台湾との関係強化は、こうした流れの延長上にあるものと思われます。

2021年9月14日 14:00いいね
27

鈴木一人のアバター
鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授

コメントメニュー
別の視点 アメリカのアフガン撤退で欧州はNATO軍として協力していたのに、アメリカに振り回される形で撤退させられることとなり、同盟のあり方に関する議論が高まっているが、それでもアメリカに引っ張られる形でインド太平洋戦略を描き、台湾問題に関与することになる。

悪いことではないのだが、同盟というのは、一方でうまくいかなくても他方ではうまくいくというもので、アメリカのアフガン撤退が「アメリカのCredibilityの終わり」のような話にはならないのだろう。

2021年9月14日 15:14いいね
10 』