ブッシュ氏、結束復活訴え 前政権以降の社会分断を批判

ブッシュ氏、結束復活訴え 前政権以降の社会分断を批判
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『【ワシントン=中村亮】米国のブッシュ元大統領(第43代)は11日の演説で、2001年9月の米同時テロ後に国が結束したと強調し「あの日々は遠い昔のことになったようだ」と語った。トランプ前政権から続く米社会の分断を批判し、結束の復活を訴えるものだ。

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東部ペンシルベニア州シャンクスビルで開いた同時テロから20年の式典で演説した。シャンクスビルはテロリストにハイジャックされ、首都ワシントンに向かっていたとされる民間機が墜落した現場だ。テロは国際テロ組織アルカイダが実行した。

01年9月11日の同時テロが起きた際に大統領を務めていたブッシュ氏は「9月11日の後、すばらしく強固で結束した国民を率いたことを誇りに思う」と語った。

「米国で宗教に関する固定観念がはびこっていたころに米国人は偏見を排除し、イスラム教を信じる人々を受け入れた。それこそが私の知る国の姿だ」と強調した。奉仕の精神や助け合いをあげて「それこそが我々の本来の姿であり、再び取り戻すことができるものだ」と述べ、国の結束を訴えた。

結束を妨げている要因として政治をあげた。「政治の多くは怒りや恐怖、恨みを露骨に主張するものになっている」と語った。「日常生活であらゆる意見の違いを論争に変え、あらゆる論争を文化の衝突に変える悪い力が働いているようだ」と述べた。人種や文化の違いを強調し社会の分断をあおって、支持を集める政治手法を批判したものだ。

「国に対する危険は国境を越えてくるだけでなく、国内で結集した暴力というものもある」とも指摘した。「海外と国内の過激派に文化的な重なりはほどんどない。ただ多様性や人間の生活を軽蔑し、国家のシンボルを汚す決意を持つという点で両者はともに邪悪な魂の子だ」と非難した。

発言は同じ共和党に属するトランプ前大統領を念頭に置いたものとみられる。トランプ氏は大統領在任中に一部のイスラム諸国からの入国制限措置を導入。不法移民対策としてメキシコとの国境沿いで壁の建設を推進し、米国の分断を助長した。21年1月には陰謀論を信じる支持者などを扇動して複数の死者を出した連邦議会占拠事件を起こしたとの批判が根強い。

トランプ氏は11日朝に公開したビデオメッセージで、アフガニスタンからの米軍撤収をめぐる混乱について「バイデン(大統領)と彼の無能な政権は敗北して降伏した」と非難した。党派を超えて同時テロの犠牲者を追悼する20年の節目でも政敵の批判を続けた。

米メディアによるとトランプ氏は同日、同時テロに対処したニューヨークの警察署や消防署を訪れて職員に謝意を伝えた。20年の大統領選でニューヨーク市最大の警察労組から支持を得たことに触れて「大変光栄だ」とも述べた。ニューヨークでは同時テロの追悼式を行っておりバイデン大統領らが参加したが、トランプ氏が合流することはなかった。

ブッシュ氏に続いて演説したハリス副大統領は「(テロ後を)振り返ってみると大半の米国民が家族を癒やし、コミュニティーを復活させ、国を守り、安全のために結束したことを我々は覚えている」と語った。「結束こそがお互いの繁栄や安全保障、世界での我々の立場において不可欠なものだ」と強調した。

バイデン氏はシャンクスビルで記者団に対し、ブッシュ氏の演説を評価。「どのように結束を取り戻すのか」と問われると「素直さが重要だ」と応じた。トランプ氏の帽子をかぶった子どもたちと写真撮影をしたと明らかにして、分断の修復を目指す立場を強調した。
犠牲者の碑に献花するバイデン米大統領(11日、ペンシルベニア州)=AP

バイデン氏は10日に公開したビデオメッセージで「団結は我々の最大の強みだ」と訴えていた。

オースティン国防長官は国防総省で開いた式典で同時テロについて「記憶することが我々の責任であり、民主主義を守ることが我々の任務だ」と強調した。米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は言論の自由や法の統治、投票の権利などを米国の理念としてあげて「地球上のいかなるテロリストもその理念を破壊することはできない」と断じた。

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