9.11から20年 米、危機の芽摘めずテロ組織2.5倍に

9.11から20年 米、危機の芽摘めずテロ組織2.5倍に
同時テロ20年 混沌の世界㊤
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN0166R0R00C21A9000000/

『世界に衝撃を与えた米同時テロから11日で20年となる。米国は8月末でアフガニスタン戦争に幕を引いたが、テロとの戦いに終わりは見えない。

イラク北部で4日、過激派組織「イスラム国」(IS)と関係が疑われる男らが検問所で警官13人を銃で殺害した。世界はなおテロの脅威にさらされる。イラク、アフガン両戦争に従事したペトレアス元米中央軍司令官は「イスラム過激派との戦いは20年という期間では十分でない」と語る。

2001年9月11日、国際テロ組織アルカイダ所属のテロリストが民間機を乗っ取り、ニューヨークの世界貿易センタービルに突っ込んだ。その後のアフガン戦争は、テロ組織を根絶やしにするはずだった。

しかし20年に及ぶ戦争で米国は疲弊。イスラム主義組織タリバンの復権を許し、最終局面ではIS系勢力の自爆テロを受けた。投げ出したかのような撤収の失態も新たなリスクになりかねない。

アフガン南部カンダハル。1日のタリバンの軍事パレードでは、米製ヘリコプター「ブラックホーク」が旋回した。ドローンや軍用車両「ハンビー」、自動小銃M16。米国が旧政府軍に提供した武器がタリバンの手に渡った。同国には約20のテロ組織があるとされ、アルカイダなどに流れる懸念さえある。

テロの脅威は「アフガンをはるかに超え、世界中に転移している」(バイデン米大統領)。米国務長官が指定する外国テロ組織は70を超え20年で約2.5倍に増加した。

米ブラウン大によれば、米国は対テロで18~20年に7カ国でドローンを含む空爆を実施し、79カ国で現地治安部隊などを訓練した。

タリバンの勝利で、各地のテロ組織は勢いづく。アルカイダ幹部はタリバン復権について「歴史的勝利だ」と称賛し、米への再攻撃を辞さない構えをみせる。

テロ組織の活動も20年で大きく進化している。

「暗号資産(仮想通貨)の寄付集めを含む洗練されたサイバー技術だ」。米司法省は20年8月、アルカイダやISなどのテロ組織から数百万ドルの仮想通貨を押収したと発表した。

米連邦捜査局(FBI)のレイ長官は6月、ランサムウエア(身代金要求型ウイルス)攻撃の脅威は、同時テロ並みだと危機感も示した。今後、多くのテロ組織がサイバー空間での活動を本格化させる懸念が高まっている。

バイデン米大統領は「テロの脅威はアフガンを超えて世界に広がった」と語り、テロとの戦いは成果が乏しいことを公然と認めた(8月31日、ホワイトハウス)=ロイター

米国が「世界の警察官」の座を降り始めており、世界は一段と混沌とする。中国が米国に対抗し、ロシアも巻き返しを図るなかで、中東やアフリカなどが不安定化する恐れがある。

過去にはタリバンやアルカイダが大国間競争の中で、さまざまな国から支援を受け組織を拡大させた経緯がある。

米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は、テロ対策についてタリバンとの「協力は可能だ」と語った。テロ阻止に向け、宿敵の力も借りたいという言葉が米国の置かれた窮状を示している。

(ワシントン=中村亮)』