台湾、自主建造の軍艦就役

台湾、自主建造の軍艦就役 「空母キラー」で対中抑止
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『【台北=中村裕、北京=羽田野主】台湾の総統府は9日、自主建造で攻撃能力を大幅に高めた新型の軍艦「塔江艦」が就役したと発表した。空母キラーとも呼ばれ、従来の対艦ミサイルに加えて戦闘機などを狙う対空ミサイルも搭載したのが特徴だ。

台湾東部と日本最西端の沖縄県・与那国島の間や、同県・尖閣諸島周辺で領海侵入などの挑発行為を繰り返す中国への抑止力を高める狙いだ。

台湾海軍の重要基地で、北東部・宜蘭県にある「蘇澳中正基地」で同日、就役式を開いた。蔡英文(ツァイ・インウェン)総統は、軍艦を自主建造した意義を強調し「国防の自主独立に向けた道のりで、どんな困難でも乗り越えられることを証明した」と訴えた。

中国外務省の趙立堅副報道局長は9日の記者会見で「台湾の分裂勢力が軍事手段を用い中国大陸に対抗しようとたくらむのは八方ふさがりの現状を示している」と話した。

塔江艦は、2015年に就役した「沱江」を改良した。従来の対艦ミサイル「雄風2」や「雄風3」に加え、台湾が開発した対空ミサイル「海剣2」も搭載できるようにした。計28基のミサイルを搭載し、対艦と対空の双方に対応した自主建造の艦艇は台湾初となる。

19年の起工から2年あまりを費やした。船体は胴体が2つの双胴型で高速航行を可能とし、高いステルス性能を持つ。全長は約65メートルで、最高速度は約40ノット(時速約74キロメートル)とされる。

台湾北東部の海軍基地に新型の軍艦を配備した背景には、台湾東部で動きを活発化させる中国軍への警戒感がある。

中国大陸からきた中国の艦艇が台湾の東部に回り込み、5日には複数のミサイル駆逐艦が台湾東部と日本の与那国島との間の海域を通過。その後に北上し、東シナ海に向けて航行した。

台湾国防部のシンクタンク、国防安全研究院の蘇紫雲所長は「中国大陸から(九州、沖縄、台湾東部をつなぐ)第一列島線を越えて太平洋に進出するための周辺海域の調査が主な目的だ」と指摘。防衛が手薄とされる東部から台湾本土を包囲して攻め込むための情報収集の思惑もあると見る。

こうした中国の動きに対応するには、東部で艦艇などの配備を急ぐ必要がある。台湾はこれまで高度な艦艇を建造する能力に乏しく米国を中心に海外からの購入に依存してきたが、それにも限界があった。

各種の武器売却は相手国の判断に左右される。特に近年は中国に配慮して台湾への売却に二の足を踏む国が増える状況にあった。米国もオバマ政権時代の17年までは、中国との関係を踏まえて台湾への武器売却を大きく減らした経緯がある。

台湾の軍機や艦艇の老朽化は一段と進み、蔡氏は16年の総統就任当初から武器調達の戦略を一部改め、自前の艦艇の建造などによる軍事力の強化を掲げた。今回建造した塔江艦もその一環だ。

20年11月には、長く計画が進まなかった自前による初の潜水艦の建造もようやく始まった。米国はブッシュ政権(第43代)時代の01年に台湾への潜水艦の売却方針を固めたが、最終的には中国の激しい反発などを受けて実現しなかった。

台湾が現在保有する4隻はいずれも老朽化が進んでおり戦闘能力は低い。自主建造にカジを切り、現在は南部の高雄市で建造中だ。合計8隻のうち1隻は早ければ24年の就役を目指している。』