中国恒大、2兆円のドル建て債が国際金融市場揺らす

中国恒大、2兆円のドル建て債が国際金融市場揺らす
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB088950Y1A900C2000000/?n_cid=NMAIL006_20210910_H

『【上海=土居倫之】中国の不動産大手、中国恒大集団の2兆円を超える米ドル債が国際金融市場を揺らしている。リゾート開発など無謀な投資で資金繰りが厳しくなり、社債利回りが9日時点で50~470%まで上昇(価格は下落)しているためだ。仏アムンディやスイスのUBSグループなど世界の運用会社が恒大債を保有しており、破綻すれば投資家は損失を免れない。中国政府が救済するかどうかは不透明で投資家は売却を急いでいる。

リフィニティブによると、恒大の債券残高は266億ドル(約2兆9000億円)。このうち主に外国人向けに販売された米ドル建てが195億ドルと約7割を占める。残りは人民元建てが70億ドル相当と香港ドル建てが1000万ドル相当だ。通貨や年限、担保の有無などによって流通市場で売買される社債の利回りは大きく異なる。例えば、2025年満期のドル建て債は9日時点で60%だが、22年満期では400%を超える債券もある。

米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスとフィッチ・レーティングスは相次ぎ恒大を格下げした。Caa1(トリプルCプラスに相当)からCa(同ダブルC)としたムーディーズは「今後6~12カ月に大量の債務償還期限が到来し、流動性とデフォルトリスクが上昇しているため」(黎錦雄アナリスト)と説明している。

8日は一部メディアが「ローンの利払い停止を銀行2行に通知した」と報道。この報道を受けて、深圳証券取引所に上場する人民元建て債の価格が9日、20%安と急落した。深圳証取は一時売買を停止し、投資家に理性的な取引を求めた。

恒大の経営が窮地に陥った背景には、過去の無謀な投資で積み上げた巨額の負債がある。1996年に従業員10人弱で誕生した恒大は、地方政府から開発用地を仕入れ、各地でマンションを建設し急成長。20年の住宅販売面積で中国2位だった。

江蘇省にイタリアのベネチアを模した別荘地リゾートを開発したほか、サッカークラブ運営や電気自動車(EV)開発、ミネラルウオーターの販売にまで手を広げるなどした結果、6月末の有利子負債は5717億元(約9兆7000億円)に達した。

リフィニティブによると、ドル建て債は仏アムンディやスイスのUBSグループ、米ブラックロックなど世界の幅広い運用機関が保有する。ハイイールド(高利回り)債で運用するファンドなどで投資しているとみられ、債務不履行(デフォルト)に陥れば、投資家の損失は避けられない。

焦点は中国政府の対応だ。8月19日には中国人民銀行(中央銀行)と中国銀行保険監督管理委員会が「経営安定の維持と債務リスクの解消が不可欠だ」と監督対象ではないはずの恒大に直接経営を指導する異例の事態となった。

恒大は中国東北部を中心に支店を展開する地方銀行、盛京銀行の筆頭株主で4割近い株式を保有する。盛京銀行の総資産は約1兆元(約17兆円)。万一、恒大が破綻すると盛京銀行を通じて中国の金融システムを動揺させかねない。

経営難に陥っていた中国国有の不良債権受け皿会社、中国華融資産管理は、中国中信集団(CITIC)などが資本参加を決め、破綻を免れた。ただ中国政府は住宅価格上昇の元凶として不動産会社に規制の矛先を向けており、恒大を救済するかどうかは不透明だ。

過剰債務問題は中国の不動産会社に共通する課題となっている。住宅価格の先行きに対する強気な見方から各社は借入金を膨らませて開発用地を取得してきた。香港取引所に上場する不動産開発会社、広州富力地産の債券利回りは9日時点で13~200%の水準となっている。

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南川明
インフォーマインテリジェンス シニアコンサルティングディレクタ

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ひとこと解説 中国の不動産市場が動揺しているようだ。中国政府は最近、アリババなどの技術開発を伴わない企業や超裕福層への締め付けを厳しくしている。格差で溜まった不満解消をしなければ中国内部からの共産党批判を抑えられないのだろう。

不動産価格下落、株価下落が伴い、これまでの中国成長の牽引役を引きずり下ろす程の大胆な戦略に見える。短期的な消費低迷がエレクトロニクス業界に与える影響は計り知れない。最大限の注意が必要に感じています。

2021年9月10日 12:00いいね
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梶原誠
日本経済新聞社 本社コメンテーター

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分析・考察 このテーマを読み解くヒントは「日本の1990年」です。不動産融資規制、不動産業者の経営危機、金融危機懸念。構図はすべて同じです。違う点は、「失われた20年」を耐え抜いた日本より富の蓄積が遅れていること。年金や保険などの整備が遅れ、人々の老後の心配は強いです。

見かけは成長していても人々が不安になって景気がハードランディングする成長率「失速速度」は何%でしょうか。エコノミストや投資家と会う度に聞くようにしていますが、最近は4%という数字も聞きました。来年の成長率は5%台とも言われていますから、あまり余裕はありません。

2021年9月10日 12:38 (2021年9月10日 12:44更新)
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青山瑠妙
早稲田大学大学院アジア太平洋研究科 教授

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ひとこと解説 中国政府は本腰を入れて不動産価格を抑え、過剰債務などの問題に向き合っているが、巨大企業を破綻させても金融システムと不動産市場をどう安定化させるか、社会に激震を与えないで済むのか、頭を悩ませているようだ。

安定を最重視している中国では、企業の規模が大きいと、政府は余波を恐れて怖くて手がつけられない。こうしたジンクスを破ることができるのか。恒大を通して、中国の今後進む道が示されようとしている。

2021年9月10日 12:32いいね
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