米国、9・3兆円もの武器をアフガンに注ぎ込んで。

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「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和三年(2021)9月9日(木曜日)弐
通巻第7046号  
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 米国、9・3兆円もの武器をアフガンに注ぎ込んで。多くがタリバンの手に
  軍用車両、機関銃など武器密輸でタリバンの外貨稼ぎに
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 ハンビー(高性能多機能用途装備車両)が2万2千両。MRAP(対地雷、伏撃防護装甲車)155両。小型軍用車を4・2万台。そして自動小銃が36万丁。重機関銃6万、ピストル13万丁など。

 対空砲、地雷、バズーカ、ゴーグル、通信設備、測定器財など付属する備品や燃料など、計り知れない軍事関係装備品が、タリバンの手にわたってしまった。

 アフガニスタン政府軍に注ぎ込んだ米国の武器供与は総額で850億ドル(邦貨換算で9兆3000億円)。そして育成したアフガニスタン政府軍30万人は武器とともに「闘わずして」、姿を消してしまった。祖国のために死ぬ兵士はいなかった。そのうえ米軍が援助した武器の悉くが「蒸発した」。

米軍は引き揚げるときに多くの武器、車両、軍用機、通信設備などを破壊して去ったが、それは一部であり、すでにタリバンのカブール制圧前から、アフガニスタン政府軍の腐敗は深刻で、武器の横流しから、ガソリンの売却など、軍服や軍帽、軍靴などは、バザールで売られていた。

 タリバン軍事パレードに米国製武装兵(UH60)が登場し空を舞った。米国軍事専門家は、軽攻撃機など軍用機が38機、ヘリが13機。ドローンが7機、すでにタリバンの手にわたったと分析している。

 嘗てソ連との闘いに明け暮れたムジャヒディンの時代、米国はスティンガーミサイルを250基、供与した。それでソ連の敗退が決定的となった。ソ連の武装ヘリも輸送機もスティンガーミサイルの犠牲となったからだ。

 残留武器に目を付けているのは中国、露西亜、北朝鮮、そしてイランである。


 イランは1972年から76年にかけて、米国の武器輸出国ナンバーワン(現在はサウジアラビア)。イスラム革命後、最新鋭ジェット戦闘機などイランに置き去りにされたものが部品供与もなくさび付いた。

 タリバンは麻薬のほかにドルを稼げる輸出品目がない。のどから手が出るほど欲しいドルのために、これら米国製武器を密輸するだろう。

 イランがすでにタリバンから入手したのはハンビーとMRAPと言われる。

 米議会下院ではジム・カマー(共和党、ケンタッキー)とグレー・グロスマン(共和、ワイオミング)が中心となって三十三名の議員が連署して、「すぐさま調査に乗り出し、残留兵器をいかに回収するべきかを検討せよ」とする書簡をまとめ、オースティン国防長官に送った。

 タリバンと高性能武器の引き渡しを狙うのは中国、露西亜、北朝鮮などで、早速中国はワクチン8100万ドル供与を取引条件に米国製武器入手の交渉にはいったとみられる。日本は、ことここに到ってもなおインフラ支援など人道援助のために、決められている200億円余にプラスして新規71億円を、「無条件」でアフガニスタンに供与する方針である。

 日本外交は馬鹿がつくほどのお人好し?

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(読者の声2)タリバンだけ、男だけのアフガニスタン暫定政権が発表されましたが、言ってみれば「テロリスト一覧表」ですね。ウズベク、タジク、ハザラの代表はひとりも加わっていないという意味は、内部分裂、軍閥抗争が収まっていないという証拠では?
   (山根生)

(宮崎正弘のコメント)まず軍閥で言えば「ヘラートの獅子」(イスマイリ・ハーン)は拘束され、マザリ・シャリフのウズベク軍閥のドスタム、嘗ての首相ヘクマチアルが入っておらず、「パンジシールの獅子」の息子(旧「北部同盟」)は依然としてタリバンと戦闘中。くわえてIS─K(イスラム国ホラソン)とは仲違いの様相、アルカィーダが何をしているかも伝わってきません。あまつさえ旧政権のカルザイも、アブドラも閣外。まさにタリバン独裁の始まりです。

 気になるのはハザラ人の行方ですね。かれらはシーア派ですので、イランへ逃げ込んだという情報がもっぱらですが、その後の動静は不明です。

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