自民党総裁選、混迷の派閥

自民党総裁選、混迷の派閥 衆院選前で世論重視
細田派、高市氏で統一難しく 麻生派「河野・岸田氏割れる」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA03EKX0T00C21A9000000/

『自民党総裁選を巡る各派閥の対応が混迷を深めてきた。菅義偉首相の不出馬表明で前回首相を支援した最大派閥の細田派と、第2派閥の麻生派は支援候補の絞り込みが難しい情勢だ。次期衆院選を間近に控えて世論重視で「勝てる候補」を探る。中堅若手の動き次第で自主投票になりかねない。

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総裁選は17日告示―29日投開票の日程で実施される。1人1票の国会議員票383票と、党員・党友票383票の計766票を競う。

記者会見で自民党総裁選への出馬を表明する岸田氏(8月26日、国会内)

立候補はまず岸田文雄氏が明らかにした。菅政権の閣内にいる河野太郎規制改革相は週内にも出馬表明の記者会見に臨む見通しで、高市早苗氏も立候補する意向だ。

石破茂氏は派内などで協議しており、野田聖子幹事長代行は推薦人集めを急ぐ。

昨年、安倍晋三前首相が辞任表明した後の総裁選は7派閥のうち細田、麻生、竹下、二階、石原の5派が菅首相を支え圧勝を主導した。今回は首相の不出馬で「勝ち馬」が見えなくなり、各派は戦略を再検討している。

細田派は今週前半にも幹部会合を開く。同派に影響力をもつ安倍氏は無派閥の高市氏を支援する考えだ。保守層を代弁する立場を期待するもので、衆院当選4回の高鳥修一氏は支持を明言する。

自民党総裁選に出馬意向の高市氏

高市氏はかつて同派を離れた。細田派幹部は「高市氏で派閥をまとめるのは簡単ではない」と言う。選挙基盤の弱い衆院当選3回以下の議員が3割超を占め、河野氏や岸田氏支持を求める主張が高まればまとまるのは難しい。

同派の下村博文政調会長も出馬を探る。いったん断念したが、首相不出馬で状況が変わったと判断した。推薦人20人の確保に向けて派内の議員らと協議している。

河野氏が所属する麻生派は態度を決めていない。会長の麻生太郎副総理・財務相は3日、会談した河野氏に支援の言質を与えなかった。

出馬検討を表明する河野太郎氏(3日、東京・永田町)

同派の中堅・若手は報道各社の世論調査で次の首相候補で上位の河野氏に出馬を促す。同派幹部は「今回は派内が岸田勢力と河野勢力に二分する。一つに無理やりまとめるのは不可能だ」と話す。

竹下派には昨年に「ポスト安倍」候補にあがった会長代行の茂木敏充外相がいる。衆院の中堅・若手から待望論があがる一方、参院側には距離が残る。

茂木氏「グループまとめるのが重要」

茂木氏は5日のNHK番組で「グループをしっかりまとめるのが何より重要だ」と強調した。
同派は2018年総裁選で衆参両院の対応が割れた。衆院の大勢が当時の安倍首相を支持したのに対し参院側は石破氏に回った。参院竹下派に影響力をもつ青木幹雄元参院議員会長の意向もあった。

河野氏は4日、竹下派の若手議員に電話し「応援よろしく」と伝えた。同派の協力を得るため、幹部との面会も調整する。派としての対応を定められなければ草刈り場になるおそれが出る。

首相の再選支持を表明済みだった二階派と石原派は軌道修正する。首相は3日夜、都内の衆院議員宿舎で二階氏と会談した。二階氏は「俺はまだ旗振りしない。しばらくみんなで勉強すればいい」と周辺に語る。

石破氏、二階氏と会談

石破派は石破氏が出馬を決断するかが焦点となる。同派の議員は17人で出馬に必要な推薦人20人に足りない。石破氏は4日、都内で二階氏と会談し、総裁選について意見交換した。他派閥や無派閥からの賛同を得られるか見極める。

今のところ派閥単位で態度を決めたのは岸田氏が会長を務める岸田派だけだ。告示まで3週間以上ある8月26日に出馬を表明し、党員・党友票の開拓に動く。

国会議員票と党員・党友票が同数となる「フルスペック」の総裁選は世論を代弁する党員票がものをいう。一方で1回目の投票で過半数に届く候補がいなければ上位2候補で決選投票を実施する。

都道府県連票47票と国会議員票の集計となり国会議員票の重みが増す。自民党が野党時代に実施した12年秋の総裁選は決選投票で安倍氏に国会議員票が流れ、1回目トップの石破氏に勝利した。

今回の総裁選で候補が乱立すれば決選投票になる可能性が高まる。主要派閥の領袖は影響力を保つため派内の結束維持に努める。

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・「世代と派閥」自民の岐路 総裁選せめぎ合い
・首相退陣、それぞれの誤算 安倍・岸田・石破各氏ら 』

『多様な観点からニュースを考える
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竹中治堅
政策研究大学院大学 教授

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分析・考察 現在の政治の基盤にある小選挙区・比例代表並立制という衆議院の選挙制度の下では選挙は政党本位で行われる。

首相は「選挙の顔」として与党の象徴となり、首相の人気は与党の戦績に大きな影響を及ぼす。総選挙の可能性が高まれば高まるほど与党政治家は首相の人気を意識する。2020年9月の総裁選で多くの派閥が菅義偉氏支持で纏まることができたのは、菅氏の人気が高く、派閥の考えと党首の人気重視の自民党政治家の志向が一致したからである。

今回は、出馬表明した岸田文雄・河野太郎両氏、出馬の可能性が注目される石破茂氏はいずれも一定の人気を誇り、派閥が一人の候補に纏めるのは難しい。多くの派閥は自由投票を選ぶことになるだろう。

2021年9月6日 13:57 (2021年9月6日 14:00更新)
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白井さゆり
慶應義塾大学総合政策学部 教授

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別の視点 自民党総裁選の議論の争点のひとつに気候変動を取り上げるべきだと思います。

各候補が「改正地球温暖化対策推進法」で正式に掲げた2050年までに排出量正味ゼロを実現するために、その中間目標である2030年46%減(2013年比)と7月発表の電源構成についてどのようにして実現していくのか具体的なビジョンを示してほしい。

11月に英国グラスゴーで、「国連気候変動枠組条約第26回締約国会議」(COP26)が開催され、日本のリーダーシップが期待されます。

2021年9月6日 8:07いいね
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菅野幹雄
日本経済新聞社 ワシントン支局長・本社コメンテーター

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分析・考察 派閥ってなんだろう。そんな基本的な疑問が浮かんできます。総裁候補がいて、領袖がいる。選挙に負けまいと必死の若手議員と、派閥のグリップを失いたくないボスたち。有権者が一番気にしている政策の立案と実行に内向きの発想は弊害だらけで、むしろ自主投票の方がいいくらいです。

政治ですから数が勝負であり人々が群れるのは当然ですが、危機の最中に首相がまたも一年で替わる事態になった日本には、有権者本位で語り、実行できる強い指導者を選ぶことが必須の課題です。

自民党の方々はその原点を忘れずに戦いに臨んでほしいです。菅首相が衆院解散や幹事長交代を探りムラの論理で迷走した展開を繰り返せば、遠からずそっぽを向かれます。

2021年9月6日 7:33 (2021年9月6日 11:12更新)
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