「世代と派閥」自民の岐路 総裁選せめぎ合い

「世代と派閥」自民の岐路 総裁選せめぎ合い
衆院選へ「勝ち馬」見定め
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『自民党総裁選の動きが一気に活発になってきた。菅義偉首相(自民党総裁)の不出馬を受け、間近に迫る衆院選を意識した「選挙の顔」を誰にするのか、勝ち馬を見定めようと党内が動く。自民党衆院議員の半数近くを占める当選1~3回生は世論の人気を重視し、派閥の動きは鈍い。

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その時々の政治課題や時流をみて動く新しい世代が総裁候補を押し上げるのか、従来の派閥力学が維持されるのか。世代と派閥がせめぎ合う総裁選は、自民党の今後を決める岐路になる。

総裁選は既に出馬表明した岸田文雄氏、立候補する意向を固めた河野太郎規制改革相、意欲を示す高市早苗氏ら複数の候補で争う。野田聖子氏も模索する。

現職の総裁が出馬せず、圧倒的に優位な候補が見当たらないのが現状だ。

首相が出馬を断念した背景には、党内若手の「菅首相では衆院選を戦えない」との声があった。

2012年、自民党が政権に復帰した衆院選で国政に出た議員は現在当選3回にあたる。3回生は84人に上り、突出して多い。14年、17年などの選挙で初当選した議員を含めると、3回生以下は46%に達する。

厳しい選挙を戦った経験がない若手は首相の不人気に動揺し「菅氏以外なら誰でもいい」との意見が強まっていた。

昨年の総裁選では首相を支持した細田派や麻生派でさえ、今回は「菅氏への支持で派閥はまとまらない」との見方が広がっていた。世代と派閥、2つの要素を満たせない首相には、不出馬しかなかったといえる。

最初に出馬表明した岸田氏は「菅氏以外なら誰でも」の感情を捉えた。党役員任期を「1期1年、連続3期まで」と主張し、二階俊博幹事長の再任を否定した。

中堅・若手の登用を掲げたのも、当選1~3回生の空気を反映したものだ。「首相と事実上の一騎打ちなら、岸田氏有利」との見方もあった。

首相の不出馬で状況を変えたのは、世論調査で「次の総裁にふさわしい人」のトップを走る河野氏の登場だ。

3日、河野氏は麻生太郎副総理・財務相を大臣室に訪ねて出馬の意向を伝えた。

「今回が勝負をかける時期なのか」。麻生氏の問いかけに河野氏は「そうです」と答えた。「わかった。賛成もしないが、反対もしない」と麻生氏が言うと、河野氏は「じゃあ出ます」と語った。

河野氏を主に推すのは若手たちだ。河野氏は58歳で、自民党内ではネット世代の先駆けで派閥の領袖でもない。麻生派は岸田氏と河野氏の支持に割れる。

前回は首相を支持した細田派も対応は定まらない。同派に影響力がある安倍晋三前首相は高市氏を支援する考えだ。高市氏は無派閥で、かつては現在の細田派に所属していた。

細田派では下村博文政調会長も再び、名前が取り沙汰される。最大派閥は一枚岩で動ける状況にはない。

こうした状況をにらみ、河野氏と並んで世論調査で人気のある石破茂氏も立候補を検討する。今回の総裁選は国会議員票と党員・党友票が同じ数になる。石破氏に期待するグループは「今回はチャンスがある」とみる。

12年に政権復帰してから、自民党政権の中枢は7年8カ月にわたって首相を務めた安倍氏、盟友で副総理を続ける麻生氏、官房長官を経て首相になった菅氏、二階氏らが占めてきた。

現在、党所属衆院議員276人の平均年齢は59歳で、60歳未満は半分に迫る。無派閥も2割弱に上る。引退を表明した議員が相次ぎ、さらに世代が若返るのは間違いない。

新たな若手の動きも出てきた。当選3回、30~50歳代の有志20人ほどは9月中に総裁選のあり方や党改革を提言する。細田派の福田達夫氏は「長老の意向に左右される不透明な意思決定というイメージを払拭する」と話す。

昨年の総裁選では「勝ち馬は菅氏だ」とみて、無派閥の菅氏に大派閥が乗って首相の誕生につながった。今回も派閥は主導権をとれない。世代と派閥がせめぎ合い、総裁選は先の読めない真剣勝負となってきた。

(重田俊介)

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