ギニアでクーデター 特殊部隊が大統領拘束

ギニアでクーデター 特殊部隊が大統領拘束
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021090600010&g=int

『【ロンドン時事】西アフリカのギニアの首都コナクリの大統領府周辺で5日、激しい銃撃音が聞かれた。現地からの報道では、軍の特殊部隊のグループが同日、国営テレビを通じて声明を発表、憲法を停止し政府を解散したと明らかにした。クーデターとみられ、コンデ大統領の身柄を拘束したもようだ。グループは同夜、全土に夜間外出禁止令を敷いた。
ハイチ大統領暗殺、犯行グループ4人を射殺

 グループは国家和解発展委員会を名乗っている。リーダーとみられる特殊部隊トップの将校ママディ・ドゥンブヤ氏はテレビ声明で「貧困と汚職のまん延」を理由に大統領の排除に踏み切ったと説明した。

 コンデ氏の居場所は明らかでないが、英BBC放送によると、素足にジーンズ姿でソファに座り、兵士に囲まれた同氏とされる未検証の映像が流された。

 ギニアでは昨年10月の大統領選で、改憲して3選出馬を強行したコンデ氏が当選。野党の抗議デモで死者が出ていた。

 グテレス国連事務総長は声明で「武力によるいかなる政権奪取もこれを強く非難する」と述べ、コンデ氏の即時解放を求めた。』

「宮崎正弘の国際情勢解題」 令和三年(2021)9月5日(日曜日)通巻第7040号

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「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和三年(2021)9月5日(日曜日)
通巻第7040号  
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 社債利率が56%の恒大集団って、事実上倒産しているのでは?
  保有物件投げ売り、「共同富裕」以来、中国40社が上場手続きを停止
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 以前から指摘してきたが、中国不動産デベロッパー第二位の恒大集団。9月2日の社債市場で利率56%をつけた。これは事実上の倒産を意味するのではないのか。
 恒大集団はこの僅か四半世紀の間に不動産ブームに乗って躍進、大躍進、超飛躍を続けてきた。董事長の許家印は世界の長者番付に名前を連ねた。

三年ほど前から不動産バブルの破裂に直面した。マンションの半額セールで資金回収を急いだが、下請けなど多くが工事代金支払いをもとめたため銀行が口座を凍結した。(広発銀行)。

 資金繰りの綱渡りの最中、8月19日に事実上の「最後通牒」ともとれる通告が、中国銀行保険監督管理委員会がなされ、「経営安定の維持、債務リスクの解消」を急げとされた。
恒大集団は、将来の発展性を見込んでせっかく設立し、一部は上場もさせてきた多くの子会社を片っ端から切り売りした。

 恒新能源汽車は、上場したばかりのEV開発企業だが、小米集団への売却を交渉している。映画製作と配信を狙った「恒騰網絡」はテンセントへ33億HKドルで売却した。傘下の盛京銀行も10億元で地方政府へ、恒大物業官吏は資産売却をはじめた。

 それでも恒大集団の有利子負債は12兆円(現時点で10兆円以下に減らしたという)。日本のSBGより、ちょっと少ないが、一時はサッカー・チームも所有していたほどの栄光は、瞬間的に終わった。

 中国のデベロッパーのトップは碧桂園だが、マレーシアのジョホールバル開発などが失敗と報じられており、ドル建て社債利率が急騰している。

碧桂園傘下の「博実楽教育集団」(私立校ネットワーク運営)のドル建て社債の利率は13%を更新した。習近平が「共同富裕」を打ち出して、補習斑(予備校など)の教育産業の締め付けを開始したからである。

 同様の債務リスクをかかえていた大連の万達集団(王建林CEO)は、所有していた映画館チェーン、ホテルチェーン、映画スタジオ、テーマパークなどを片っ端から売却して、倒産を回避した。王建林はフォーブスなどで中国一の財閥と言われ、ハーバード大学ビジネススクールの講演では習近平との親密な関係を自慢したこともあった。

 もっと強気の投資を世界で展開してきた海航集団は、事実上倒産している。同集団は王岐山の関与が云々された。

 ▼素晴らしいほどに経済音痴の習近平、「共同富裕」は「共同没落」

 株式市場は不動産関連の下落を筆頭に、教育産業とゲーム産業が敵視されたため、テンセント株などが劇的な下落を演じている。

そして「共同富裕」キャンペーンが開始されるや、「贅沢品は敵」となって、マオタイ酒で莫大な利益をあげてきた貴州マオタイ酒は、二月の絶頂から株価暴落が始まり、時価総額で23兆円が「蒸発」した。

マオタイ酒は宴会で必ず出てくるし、接待では高級品を誇示するのが自慢。贈答品で大量に販売された。その時価総額の「蒸発」分だけでも、サントリーとハイネッケンをあわせての時価総額を超えるから、どれだけの衝撃を株式市場に運んだかが推量できる。
 
 40社の中国企業が上場手続きを停止したことが判明した。
そのなかにはEV大手の比亜油(BYD)の半導体子会社「比亜油半導体」、バイオ医療開発の「和元生物技術」などが含まれる。株式市場の不正一掃キャンペーンと重なった。
 ところがである。習近平は北京に第四の証券取引所を開設すると豪語した。
経済音痴の習近平、「共同富裕」は「共同没落」がメタルの裏側に張り付いていることを認識できないようだ。

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中国、北京五輪の準備急ピッチ

中国、北京五輪の準備急ピッチ 観客入りの開催めざす
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM041M50U1A900C2000000/

【大連=渡辺伸】東京五輪・パラリンピックが幕を閉じる。次の五輪とパラリンピックは2022年2月から中国・北京で開催される。現地では準備が加速している。10~12月に開くスポーツイベントをテストと位置づけ、防疫体制を検証する。国威発揚と新型コロナウイルスの克服をアピールする好機と捉え、東京五輪の対策を参考に観客入りでの開催をめざす。

国家体育総局などによると、北京五輪組織委員会の医療担当幹部、王同国氏は「東京五輪の細かい防疫対策は学ぶべき価値がある」と話した。

具体的には、手の接触を防ぐための足で踏むタイプの消毒設備のほか、ホテルなどで入国から14日間経過しているかどうかで滞在者が過ごす場所を色分けして区別していたことなどを挙げた。

同局などによると、組織委は中国で10~12月、国際・国内大会を含めて15のテストイベントを開く予定。種目はスケートやスキージャンプなどで、海外の選手らも参加する見通しだ。

北京日報によると、組織委は8月30日の会議で「実戦形式で全面的に検証する最後の機会だ」と強調した。入国者に対する隔離体制、交通機関やホテルの防疫、人員の配置、競技の進行などを包括的に点検する。観客も入れる方針とみられる。

北京五輪は来年2月4~20日に開催する。08年の北京夏季五輪以来の世界的なスポーツイベントだけに、コロナ禍からの復活を世界に発信する場にもなる。組織委は東京五輪に34人の視察団を派遣した。現場の体制などを調査した成果を北京五輪でも生かす考えだ。

共産党系の英字紙、グローバルタイムズは8月17日、「多くの競技は屋外で開かれるので、観客を入れられるのでないか。室内競技では選手らと異なる通路を通って観客が出入りするだろう」との衛生専門家の見方を伝えた。

ただ国際オリンピック委員会(IOC)のデュビ五輪統括部長は8月5日、北京五輪を無観客で開催する可能性に触れた。米ブルームバーグ通信が報じた。観客の有無を巡る議論は開催直前まで続きそうだ。

コロナ以外に、人権問題が大きな火種になる可能性がある。中国による香港や新疆ウイグル自治区での人権弾圧を巡っては、反発する米欧の議会では閣僚など政府高官に招待辞退を求める「外交ボイコット」を呼びかける声が出ている。開催が近づくにつれてこうした声が大きくなりそうで、中国側は神経をとがらせている。

中国勢の米IPO、8月ゼロに

中国勢の米IPO、8月ゼロに 米中の市場分断が加速
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB02BJK0S1A900C2000000/

『【ニューヨーク=宮本岳則、上海=土居倫之】新規株式公開(IPO)市場で米中の分断が加速している。ニューヨーク市場では8月、中国勢の新規上場がゼロとなった。米当局が追加の情報開示を要求したためだ。中国政府も2日、北京証券取引所の新設を打ち出すなど本土や香港での資金調達を促す。米中分断は市民の資産を預かる年金など機関投資家の運用リスクを高めかねない。

米調査会社ディールロジックによると、7月の中国企業のIPO件数は1件にとどまり、8月は1年4カ月ぶりにゼロとなった。1~6月期は資金調達額、件数ともに上半期として過去最高だったが、ここにきて急ブレーキがかかっている。7月上旬時点で少なくとも約50社が上場準備を進めていたが、米証券取引委員会(SEC)から承認を得られていない。

SECは中国企業に対し、上場目論見書に記載するリスク情報の拡充を求めている。米上場を計画する中国のホテル運営企業は8月末、目論見書を再提出し、中国政府が事業に影響を及ぼす可能性を詳しく説明した。

既存の上場企業にも圧力をかける。SECは米議会で2020年に成立した「外国企業説明責任法」に沿って上場規定の見直しを進める。中国勢は米国の上場企業会計監視委員会(PCAOB)による監査体制の検査を拒否してきたが、今後も拒み続けると早ければ24年にも上場廃止になる。

米上場の中国企業はこれまで検査拒否を黙認されるなど、事実上特別扱いを受けてきた。有力中国企業の上場誘致によってウォール街の金融機関や取引所は多額の手数料収入を得られるからだ。しかし、米中対立の激化や一部中国企業の不正会計問題で、特別扱いは難しくなってきた。

決定打になったのは中国の配車アプリ大手、滴滴出行(ディディ)の上場問題だ。中国当局は7月、中国企業の海外上場規制を強化すると発表。滴滴出行が6月に米上場を果たしてから6日後の出来事で、米市場関係者は衝撃を受けた。滴滴出行の時価総額は7月だけで180億ドル減った。

中国・滴滴出行の上場問題は米市場関係者に衝撃を与えた=ロイター
SECのゲンスラー委員長は8月、滴滴出行を巡る騒動を念頭に「中国政府はゲームの途中でルールを大幅に変更する可能性がある」と述べ、投資家に注意を促した。中国企業の上場承認手続きを一時的に止めていることも明かした。

米中の証券当局は監査問題を打開するため、断続的に協議を続けている。中国証券監督管理委員会(証監会)が8月20日開いた会議では、易会満主席が「米中間で監査と監督の協力関係を進める」と表明した。ただSECは米議会の対中強硬派から圧力を受けており、安易な妥協は難しい。

中国当局は自国資本市場の強化に動いている。新設する北京証取は上場審査のハードルを下げ、中小企業の資金調達の道を広げる。大手機関投資家とパイプを持つ米系証券には中国での事業拡大を促しており、中国企業が海外マネーを調達しやすくなる環境づくりも進めている。

世界の大手機関投資家は、世界2位の経済大国である中国を資金の振り向け先から外せない。運用資産総額で全米2位の公的年金、カリフォルニア州教職員退職年金基金(カルスターズ)は20年の株式保有上位10社に中国の二大ネット企業であるアリババと騰訊控股(テンセント)が入った。

中国は投資家保護の仕組みが欧米に比べて整っていない。米コンサルティング会社ユーラシアグループのクリフ・カプチャン会長は「中国共産党が統制を重視しており、(中国企業に対し)国内での資本調達を強制しようとする動きが出てくる。より多くの外国資本が規制の緩い環境に存在しなければならなくなる」と指摘する。

【関連記事】習主席「北京証券取引所を設立」 国際交易会で表明 』

中国、台湾防空圏に19機

中国、台湾防空圏に19機 各国のワクチン支援に反発か
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM052YD0V00C21A9000000/

『【台北=中村裕】台湾の国防部(国防省)は5日、中国の戦闘機など19機が防空識別圏(ADIZ)に侵入したと発表した。10機以上の大量侵入は8月17日以来となる。台湾には5日、ポーランド政府から無償提供された新型コロナウイルスのワクチンが到着した。ワクチン不足の台湾に対し、世界で支援の動きが広がっており、中国がこれに反発した可能性がある。

台湾のADIZに5日侵入したのは、中国軍の戦闘機「殲16」10機、爆撃機「轟6」4機、対潜哨戒機「運8」1機など合計19機。台湾の南西空域で侵入を繰り返し、威嚇行為を続けたという。

台湾には同日、ポーランドから英アストラゼネカ製のワクチン約40万回分が到着した。これを受け、蔡英文(ツァイ・インウェン)総統は、自らのフェイスブックに「民主主義のパートナーに感謝する」と投稿した。

さらに「ポーランドは、リトアニア、スロバキア、チェコに続き、欧州連合(EU)加盟国で4番目に、台湾にワクチン提供を発表してくれた。これらの欧州諸国は、台湾と同じ普遍的な価値観を共有しており、重要なパートナーだ」とも語り、欧州との連帯感を強調した。

台湾ではワクチンが依然、不足しており、接種率はいまだ4割強にとどまる。台湾を支援しようと、6月には米国が250万回分を提供したほか、日本もこれまで334万回分のワクチン提供をし、さらに3日には4度目の追加提供も発表した。

日米で始まった台湾への支援の輪が、欧州など世界にも広がっていることに、中国はいら立ち、強い反発姿勢をみせたものとみられる。』

イラクでテロ、13人死亡

イラクでテロ、13人死亡 ISが警察標的
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021090500246&g=int

『【カイロ時事】イラク北部キルクーク郊外で5日、警察の検問所が襲撃され、AFP通信によると警官13人が死亡した。犯行声明は出ていないが、当局者は過激派組織「イスラム国」(IS)による仕業との見方を示した。』

[FT]アフガン撤退、EU軍事力をめぐる議論が再燃

[FT]アフガン撤退、EU軍事力をめぐる議論が再燃
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB0611R0W1A900C2000000/

欧州連合(EU)は、独自の防衛力を築き「ハードパワーの本質」を養う必要性を米軍のアフガニスタン撤退から「身をもって学んだ」。EUの防衛産業問題担当委員のティエリー・ブルトン氏はこう語る。

EUの防衛産業問題担当委員のティエリー・ブルトン氏(右)は、EUが独自の防衛力を築く必要があると説く=AP

プルトン氏はフィナンシャル・タイムズ(FT)紙に、EU加盟国による共同防衛は「もはや選択肢ではない」と述べ、EUは国境などあらゆる場所で「完全に自立した」軍事行動を取れる能力を備えなくてはならないと指摘した。

歩調を合わせられない歴史

米軍のアフガン撤退で、欧州ではどこまで米国政府に頼れるのかという懸念が再燃している。EUは外交でも力を発揮できるのか。経済力に見合うだけの外交・軍事的負担をすべきなのでは、という議論をもたらした。

共同防衛という概念に関して、EUは歩調を合わせられずにいる長い歴史があり、外交官やアナリストの一部は今回も同様の状況になるのではないかと疑問を投げかける。米軍の元欧州総司令官ベン・ホッジス氏はFTに対し、北大西洋条約機構(NATO)と同じような組織を作っても欧州の安全性が高まるわけではなく、資源と人員を浪費するだけだとEUをけん制した。

EU本部は最近、国際危機に即時介入できる体制づくりに議論の焦点を当てている。だがEUは防衛資源を備蓄するというこれまでの試みを活用できていない。

EUが1999年に合意した共同防衛政策には、加盟国が60日以内に5万~6万人の部隊を国外に共同派遣できる体制を整えることが盛り込まれた。07年には世界中の紛争地にいつでも派遣できる1500人の戦闘部隊を2つ構築した。それらが出動したことは一度もない。

ブレトン氏は、EUはNATOを別組織に置き換えるのではなく、存在感が薄い地域でNATOを補強する方策を議論していると強調する。米国のアフガン撤退は、事前協議を受けなかった一部の欧州諸国とって「極めて難しい」決定だったとも話した。

ブレトン氏は「同盟国が中国、おそらくアジアをより重視していくことは理解している」と話す。「アフガニスタンで起きたことも含め、どのみち防衛に関して世界の結束を強めなければならないことを身をもって学んだ」

こうした議論は各国の首都で熱を帯びつつある。フランスのマクロン大統領はNATOの戦略や手段の見直しを主張してきた。

マクロン氏は先月31日、オランダのルッテ首相とエリゼ宮殿で会談した。両国はEUがNATOとの緊密な連携を維持しながらも、経済・軍事で「戦略的自立」を築く必要があると強調した。

共同声明では、両国は「そのために必要な資源を再配分し、欧州が粘り強さを発揮し、安全保障や防衛でもっと大きな責任を負う能力があると証明しなければならないと認識している」と明言した。

NATO依存ならトルコが課題にも

EUレベルでは、加盟国は軍艦や戦闘機も動員できる総勢5千人の初動部隊の新設を提案している。だがEU外相に当たるフォンテレス外交安全保障上級代表は、EU内には懐疑論が広がっていると語る。

「カブール空港を守るために配備された米兵の数は約5千人。(サハラ砂漠南部のサヘル地域)で展開している対テロの作戦「バルカン」に派遣したフランス軍の数は5千~6千人。これはさまざまな場面で状況を変えられるだけの人員規模なのだが」と、EU委員会の上級幹部はこぼす。

EU各国の外相らはスロベニアとの非公式協議でこのテーマについて話し合ったとみられる。22年3月と設定した防衛戦略の合意期限に先立ち、10月の外交政策委員会でも議題になる見込みだ。

前出のEU委員会の上級幹部は、初動部隊案は加盟国によるNATO参加では必ずしもカバーされない新たな紛争地に、EUが関わっていくことを保証するためのものだと説明する。「サイバー、宇宙、海洋といった世界の共用地へのアクセスを確保できるかどうかの問題だ。ここでEUがより大きな役割を果たせるようにする必要がある」

欧州諸国は、中東で発生しうる脅威に対抗する場合、NATOへの依存度を高めれば、NATO加盟國であるトルコの利益がEU加盟国のそれと食い違う状況になることを懸念している。

現在はシンクタンクの欧州政策分析センター(CEPA)に所属するホッジス氏は、欧州が防衛能力を強化することには賛成だが、EUが「『何をするために?』と問いたださなければならないような欧州軍の創設は、馬の前に荷馬車を置くようなものだ」とくぎを刺した。

仏独は選挙で内向きに

ポーランドやバルト三国などのEU加盟国は、欧州圏内での米軍やNATOの役割に疑問が生じるようなあらゆる提案に引き続き消極的だ。エストニア外交政策研究所所長のクリスティ・ライク氏は「エストニア政府からみて、欧州の集団防衛を強化する枠組みとしてNATOが今後も中核であるのは間違いない。アフガンで米国、そしてNATO全体として失敗したとしても、それが覆ることはない」と話す。

NATO自体もこれに同調する。ストルテンベルグ事務総長はFTに対し、欧州の防衛力を担保する上で「大西洋をまたぐ絆」の重要性はこれからも変わらないと語った。

EUを離脱した英国の役割も重要だ。1万人規模の強力な英仏合同遠征軍が設置されたことでも示された。

ドイツ国際安全保障研究所の防衛アナリスト、クラウディア・メジャー氏は、アフガン撤退がEU加盟国がそれぞれの防衛能力を真剣に考える転換点になるかどうかには疑問符をつける。

独仏で選挙が近づき域内の2大国が「内向き」に傾くなか、メジャー氏はこうした議論が下火になると予想する。「動けるようにするため、欧州が主権と能力を強める必要があることは誰もが同意する。だが言うだけではだめだ」

Sam Fleming and Henry Foy and Victor Mallet

(2021年9月3日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/)

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反タリバン勢力との和平促す

反タリバン勢力との和平促す アフガンでの対立拡大懸念―パキスタン
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021090500228&g=int

『【ニューデリー時事】アフガニスタンのイスラム主義組織タリバンに影響力を持つ隣国パキスタンの軍情報機関、3軍統合情報局(ISI)のハミード長官は4、5両日、アフガンの首都カブールでタリバン幹部と会談した。軍当局筋によれば、ハミード氏はタリバンと反対勢力の武力衝突拡大に伴うアフガンの不安定化に懸念を表明し、和平締結を促した。
「対テロ戦」努力むなしく 過激派伸長のリスク再燃―米同時テロ20年

 タリバンが唯一制圧できていない北東部パンジシール州では、崩壊した民主政権で第1副大統領だったサレー氏や、旧タリバン政権との戦闘で名をはせた故マスード司令官の息子アフマド氏らが武装闘争を続けている。8月下旬にいったん停戦が成立したが、その後もタリバンの攻撃はやんでいない。

 パキスタン軍当局筋は、時事通信の取材に対し「タリバンが(反対勢力の意向をくんだ)包括的政府を早急に樹立しない限り、抵抗はアフガンの他地域に拡大する可能性があるとの情報を得ている」と明かした。実際に東部クナール州などで武装蜂起の動きが見られるという。これに対し、タリバン内部では、停戦を訴える派閥と戦闘継続を主張する派閥の対立があるとされる。

 米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は4日、米FOXテレビのインタビューで、アフガン情勢について「内戦に発展しそうな状況にある」との見解を示した。各地で戦闘が生じる事態になった場合、混乱に乗じて過激派組織「イスラム国」(IS)系武装勢力がテロを起こす恐れが強まる。パキスタンにとっても、対アフガン国境地帯での治安悪化は大きな懸念材料だ。』

すべては米国の「お芝居」か

すべては米国の「お芝居」か。アフガン首都陥落と自爆テロに残る“疑念”
https://www.mag2.com/p/news/510197?utm_medium=email&utm_source=mag_W000000001_mon&utm_campaign=mag_9999_0906&trflg=1

『しかし、このISIS-Kなどによる動きが、仮にタリバンとのconcerted action(申し合わせたうえでの共同の行動シナリオ)だったらどうでしょうか?

あくまでも推測に過ぎませんが、どうも腑に落ちないことが多くあるのです。

チェックポイントにいたタリバンの兵士もテロの犠牲になったと言われていますが、真実は謎に包まれています。

かりにConcerted actionであったとすれば、恐怖をあおることで、「タリバンはテロとの戦いを行う」と掲げることで、外交的なコミットを続けると宣言する米・欧との関係構築の機会を探ることが出来、また凍結されている支援の再開にもつなげられる可能性が出てきます。

新たな支配者・後ろ盾の座を狙う中ロにとっては、現在の混乱の中で最も避けたいのは、自国へのテロの伝播と国内情勢の不安定化であり、それを防ぐためにタリバンによるアフガニスタンへの支援の幅もサイズも増える可能性が出てくるかもしれません。

もしそうだったら、誰が(どの国が)この指揮棒を振っているのかなあと、国際政治の怖さを垣間見るのですが…。

タリバンによるカブール陥落は、アメリカ軍の撤退の確定と、アメリカ政府の特使とタリバンのリーダーシップとの協議(@カタール)、そしてカブール陥落後、「タリバンとの対話の準備がある」と繰り返す米国政府という言質によって、決定的になったと考えられます。

メディア上では「アメリカ外交の失敗」と大きな非難を受け、アメリカの同盟国からは「アメリカは本当に有事に守ってくれるのか」という疑心暗鬼を生ずる事態になっていますが、もしこれが、批判はされても、アメリカの負担を大幅に軽減し、厭戦ムードにも応え、そのうえで中央アジアにおける影響力を残すためのお芝居だったとしたら…。

カブール陥落から2週間という短い期間で公言通りに米軍を完全撤退させましたが、その完遂のために、バイデン政権がトランプ政権の遺産ともいえる【タリバンとの対話チャンネル】をフルに活用し、タリバンと米国政府双方にとって結果的にwin-winの結果を導き出すための演出だったのだとしたら…。

そしてISIS-Kによって実行されたと言われているカブール国際空港での自爆テロでさえも、COVID-19のパンデミックで各国の関心が「テロに対する戦い」から離れていると思われる中、テロリズム・テロリストという共通の敵を設定することで、国際協調体制の再構築を測ろうとしているのなら…。

これらはあくまでも私の推論に過ぎないかもしれませんが、先行きが見えない国際情勢を分析にする際に、考えておく必要がある重要な問いなのかもしれなません。

とはいえ、ここでもピュアな被害者は、やはりアフガニスタンの一般市民です。彼らに平和で希望に満ちた毎日が、一日も早く戻ることを心から祈っています。』

中国政策で岸田氏を警戒する米国

中国政策で岸田氏を警戒する米国、希望は河野太郎首相
菅政権崩壊を“予測”していたワシントン、安倍再登板にも期待
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/66808

『日米共同声明という「羅針盤」は残る
 米国の対日専門家たちは、菅義偉首相(自民党総裁)の退陣表明について総じてこう見ている。

「菅氏は、新型コロナウイルス禍が好転せず、局面打開を狙った東京五輪の強行開催は国民の反発を招いた」

「局面打開を懸けて探った衆院解散、人事刷新という延命策も成就せず、万策尽きたためだ」

「ジョー・バイデン政権発足後、最初に対面会談の外国首脳として菅氏をホワイトハウスに招いたのも菅氏個人というよりも最重要同盟国・日本の首相だったからだ」

「その結果、米国の最重要課題になっている対中戦略、特に台湾海峡に対する現状認識の共有を共同声明に明記するなど日本を巻き込んだ」

「菅政権下で強固な日米関係はより制度化された(Institutionalized)わけだ」

「つまり、菅政権下で安倍晋三前政権の対米路線を引き継ぐ日本政府の外交安保当局のスタンスが推進された。菅・バイデン両首脳は共同声明という『羅針盤』を残したからだ」

 ホワイトハウス報道官は、こう述べている。

「バイデン大統領は、新型コロナウイルスや気候変動、北朝鮮、中国、台湾海峡の平和と安定の維持など日米の共通の課題に対する菅首相の指導力に感謝している。日米同盟は強固であり、今後も添い合い続ける」

 米国にとって、菅氏は安倍政権の忠実な継承者としてありがたい存在だった。米有力シンクタンクの日本専門家の一人はこう米国の本音を吐露する。

「菅氏は、Backroom Dealer(縁の下の力もち)であり、とてもではないがMass Leader(大衆を引き付けるリーダー)ではないと見られていた」

「米政府内外の日本専門家たちは、菅氏はあくまでも安倍氏の空席を短期的に埋める『中継ぎ投手』として見ていた。いずれ「本格派投手」に交代することを予測していた」

「その時期が若干早かったか、予測通りだったか。いずれにしても想定外のことではなかった」』

『米情報調査機関:対米戦略公約は弱体化
 その「本格派投手」とは誰なのか。次期自民党総裁、内閣総理大臣は誰なのか。

 全世界の政治、外交、経済などの動きを事前に予測する民間の情報調査機関、「レイン・ネットワーク」(RANE Network)の傘下プロジェクト、「ストラットフォー」*1(Stratfor)は9月3日時点で今後の政局を以下のように予測・分析をしている。

*1=ストラットフォーは、テキサス州プラトノに本社を置く米情報調査機関。全世界に情報網を持っており、各国政府機関、大企業、シンクタンクを顧客にしている。その情報、予測、分析は高く評価されている。

一、菅氏の後任を狙う政治家は数人いるが、そのほかに安倍晋三前首相の再出馬のミステリーがくすぶっている。同氏が総裁選に立候補すれば選ばれることは間違いない。

二、立候補が確実視されている河野太郎改革担当相は、党内でも強力な派閥(麻生太郎副総理兼財務相を領袖とする麻生派、国会議員53人)に属している。安倍内閣の外相として安倍氏の政策に深く関与してきた。有権者にも支持者が多い。

三、ハト派の元外相、岸田文雄・前自民党政調会長(宏池会・岸田派、国会議員46人)はいち早く立候補を表明している。だが世論調査では有権者の支持は芳しくない。

 岸田氏は日本は対米、対中関係でバランスをとるべきだと考えている。2020年の安倍氏退陣の際、安倍氏は岸田氏を推したと信じられている。

四、超タカ派で対中強硬派・無派閥の高市早苗・前総務相も立候補を目指しているが、立候補に必要な国会議員数20人を得るのは難しい状況にある。

五、元防衛相の石破茂氏は世論調査では高い支持率を得ている。貧富の格差是正を唱えているからだ。だが今回もまだ立候補するかどうか態度を留保している。

六、安倍氏の立候補については今のところ噂の域を出ていない。しかし党内での広範囲な支持があることを考えると、出れば容易に選出されるだろう。

七、菅氏の後継者(総選挙で自民党は議席を失うため)が総理・総裁になった場合は、政権運営は極めて難しく、公明党に対する依存度は増大する。

八、前述の候補者が総理・総裁になっても長期的に政権を維持することは困難で、かつてのような「次から次と首相が変わる回転ドア」のような時代」(the era of revolving-door prime ministers)の再来になりそうだ。

九、その結果、長引く経済のスタグフレーション、激化する中国との競争関係に直面している日本の内政・外交政策は不安定化する可能性がある。

 これを防ぐには党内三大派閥が菅政権をサポートしてきたように後継者を一致協力して支える以外にない。日本が一貫性のある内政、外交政策を堅持するにはこれしかない。

十、誰が菅氏の後継者になろうとも11月29日に衆院議員の任期が切れ、同日か、それ以前に総選挙が実施される。自民党(現在276議席)が衆院議席の絶対過半数を割ることになれば、(今まで以上に)公明党(現在29議席)との連立を組む以外にない。

十一、公明党は反核、反武装対立を主張してきた。公明党への依存度が強まれば、自民党はこれまで菅政権が堅持し推進してきた米台の戦略的協力関係の是認や中国の南シナ海、東シナ海への海洋進出、台湾に対する脅威に対抗するための軍事力強化といったスタンスを弱めざるを得なくなるかもしれない。

(https://worldview.stratfor.com/)』

『自民党内に世代交代の波
 菅氏が政権運営に行き詰まった要因について外交問題評議会の、シーラ・スミス上級研究員は、ブログでこう指摘している。

「一向に好転しない新型コロナウイルスによるパンデミック禍に打つ手なしの菅政権に対するフラストレーションは極限に達していた。病棟が不足したから自宅療養を奨励するに至って国民世論の堪忍袋の緒は切れてしまった」

「自民・公明連立政権には、次から次とスキャンダルが襲い掛かった」

「選挙違反で有罪判決を受けた元法相の補欠選挙では野党候補に負け、パンデミック禍の最中には公明党議員が禁じられていた会食に出席、最後のとどめは菅氏が地元・横浜市長選に推薦した候補の惨敗だった」

 さらに同氏は自民党内にくすぶっている世代交代論が菅氏の延命工作を封じてしまったとみている。

「世間一般の通念からすると、これら挑戦者たちはまだ身をかがめて総裁選の行方を見守っている」

「ワクチン接種普及を担当する河野太郎・行革担当相(58)は職務に専念しているように見えるが、いつ総裁選に立候補するか世間の目は彼に注がれている。同氏の新著『日本を前に進める』は各書店の店頭に山積みされている」

「若いが人気抜群の自民党のスター、小泉進次郎・環境相(40)は、次期内閣では重要閣僚として入閣するとのうわさが流れている」

「安倍氏や麻生氏と近い甘利昭・元経産相(72)は(二階俊博氏=82=の後任の)幹事長に色気を見せているらしいし、茂木敏充外相(65)も次は党幹部のポストを狙っている」

「この秋の日本の政治は予想以上に流動化し、面白くなってきた」

(https://www.cfr.org/blog/politics-heat-tokyo)』

『優柔不断な親中派の岸田氏に警戒心
 米国では共通しているのは、今のところフロントランナーの岸田氏に対するネガティブな評価だ。

 同氏は、2012年12月から17年8月まで4年8カ月、安倍第2次、第3次、第3次1次改造、第2次改造時の外相を務め、米政界や国務省関係者にも友人、知人が数多くいるはずなのに、米国の外交・安保関係者からは敬遠されているのだ。

 なぜか。米上院外交委員会関係者の一人はこう指摘する。

「所属する派閥、宏池会は元々、親中派が多く、岸田氏が特に親中派の古賀誠元会長の側近だったことが災いしているのではないか」

 ブルームバーグ通信社のイサベル・レイノルズ記者は岸田氏の対中認識を質した。岸田氏はこう答えている。

「時代は大きく変化している。中国も変わった。中国は今や国際社会で大きな存在になっている。私は中国の権威主義的な態度に懸念している」

「台湾は、米中関係行き詰まりのフロントラインになっている。香港(中国による民主化運動弾圧)や新疆ウイグル(少数民族抑圧)の状況を見ると、台湾海峡は次の大きな問題になるだろう」

「台湾有事は日本にとっても重大な影響を与える。日本はそうした脅威に備えるために防衛費を引き続き増やしている」

「(台湾有事の際に日本はどうするか、との質問には)法律に照らして行動するだけだ」

 レイノルズ記者は岸田氏の答えにこうコメントをつけている。

「麻生副総理は『台湾危機に際して日米はともに台湾を防衛せねばならない』と言った。また岸信夫防衛相の『台湾防衛は日本の防衛に直接リンクしている』と述べていた」

(https://www.bloomberg.com/news/articles/2021-09-03/top-contender-to-lead-japan-warns-taiwan-is-next-big-problem)』

『岸田氏の答えは、明らかに4月、菅首相とバイデン大統領とが署名した共同声明に明記された「台湾海峡の平和と安全の重要性」に対する認識から後退している印象を受ける。

参考:日米声明「台湾海峡」明記 初の会談、中国の威圧に反対: 日本経済新聞 (https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE170BH0X10C21A4000000/)

 岸田氏、河野氏、石破氏の中で米国は誰に首相になってもらいたいのか。

 日本政治に精通する元外交官の一人は「内政干渉はしたくないが」と言いつつ、こう言い切っている。

「岸田氏は長いこと外相だったからワシントンでは名前も顔も売れている。その一方で中国問題など主要な政策では岸田氏はソフトで、煮え切らないというか、決断力に欠けるという評価があった。ある種の警戒心がある」

「誰がどう言ったというわけではないが、私の感覚では、米国では岸田氏よりも河野氏の方が好かれている。ベストな首相候補だ」

「その理由は同氏のバックグラウンド(ジョージタウン大学卒、防衛相、外相歴任)。抜群の英語力。明快な発言。若いし、ルックスもいい」

「米議会やシンクタンクのタカ派は(防衛問題に強い)石破氏が好きなようだが、総裁選の立候補に必要な推薦人を集められるかどうかだ」

 河野氏については、官僚に対するパワハラ疑惑やら閣議決定をタテに官僚の作成した政策素案の撤回を求めるなど物議をかもしているようだ。

 また総裁候補選びでは、選挙基盤の弱い若手議員が「選挙の顔」を求めて、派閥幹部の意向に応じない構えを見せている。情勢は流動化、複雑化している。

 本稿は、あくまでも米国の対日問題専門家たちの「総理・総裁候補評定」を書き留めたもの。

 そこには、誰が首相になっても不安定化する政権が、今後の日米関係に暗い影を落としかねないという米国の危惧の念が感じ取られることは間違いない。』

コロナ対策丸投げされオリパラ開催とともに使い捨てされた菅総理

コロナ対策丸投げされオリパラ開催とともに使い捨てされた菅総理
「感染拡大防止に専念」という嘘とコロナ対策が評価されない理由
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/66815

『「総理」と「草履」は使い捨て――。

 いまから20年前に小泉純一郎内閣が立ち上がった頃に目にしたコラムのタイトルだ。書いたのは心理学者の岸田秀。「ソウリ」と「ゾウリ」の語呂合わせだけでなく、どちらも新品は好まれるが、すり切れてきたらそのまま捨てられておしまい、ということを説いていた。言い得て妙だと記憶に残っている。

安倍政権の「尻ぬぐい」に奔走したのにあっさり使い捨て

 菅義偉首相の突然の退陣表明で、その言葉が浮かんだ。ちょうど1年前、安倍晋三前首相の体調不良による辞意を受けて総裁選への出馬を表明すると、自民党の各派閥は我先にと支持を表明。圧勝の流れができあがってそのまま総裁に就任すると、高い支持率で政権が発足したはずだった。

 それからわずか1年。任期満了が近づく総選挙を前に、「菅では戦えない」という党内の「菅離れ」が加速すると、首相は今月に予定された総裁選前の解散を模索して挫折。すぐさま党内人事の刷新で求心力を回復させようとするも頓挫。総理総裁の権力の源泉である「解散権」と「人事権」を封印されて、あれよあれよという間に総裁選不出馬、退陣へと追い込まれた。これほどまでに見事な使い捨てもあるまい。

 もっとも、ここまでの展開を見る限りは、安倍長期政権の「尻ぬぐい内閣」あるいは「しんがり内閣」と言ったほうが正しいかも知れない。

 任期をあと1年残しての安倍前首相の辞任で、政権発足以来の官房長官を務めていた人物があとを引き継ぐ。そのまま新型コロナ対策に取り組み、1年延期を決めた東京オリンピック、パラリンピックを無観客でも開催して帳尻を合わせる。使い終わったように前政権の任期を満了してお払い箱になる。』

『その一方で、安倍晋三が2006年に最初に首相の座に就いてわずか1年で辞任すると、そこから毎年9月に1年ごとに首相が入れ替わる時代が民主党政権まで続いた。それが再び安倍が復権するまで止まらなかったことからすれば、「安倍の呪い」の再来といったところか。

総裁選不出馬表明会見の「嘘」

 いずれにしても、菅首相がここまで支持率を失い、求心力を失って使い捨てられていく大きな原因となったものが、新型コロナ対策の失敗にある。では、なぜ失敗したのかといえば、根本は菅首相の繰り出す日本語の不正確さと意味不明ぶりにある。菅首相の日本語がおかしいことは、以前から指摘してきたことでもあるが、そこに透けて見えるのが、思考の曖昧さと理念構築の崩壊だ。

(参考)「スピード感をもって」とは?国語力疑わしい菅首相
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/64286

 直近の一例を挙げると、今回の突然の辞任表明。3日の昼過ぎに首相官邸のエントランスで記者たちを前にこう語っている。短いので全文を記す。

「先ほど開かれました自民党役員会において、私自身、新型コロナ対策に専念したい、そういう思いの中で、自民党総裁選挙には出馬しないことを申し上げました。

 総理大臣になってから1年間、正に新型コロナ対策を中心とする、様々な国が抱える問題について、全力で取り組んできました。

 そして、今月17日から自民党の総裁選挙が始まることになっております。私自身、出馬を予定する中で、コロナ対策と選挙活動、こうしたことを考えたときに、実際、莫大なエネルギーが必要でした。そういう中で、やはり両立はできない、どちらかを選択すべきである、国民の皆さんにお約束を何回ともしています、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために、私は専念したい、そういう判断をいたしました。

 国民の皆さんの命と暮らしを守る、内閣総理大臣として、私の責務でありますので、専念して、やり遂げたいと思います。

 また来週にでも、改めて記者会見をしたいと思います。以上です」

 新型コロナ対策に専念したいから総裁選に出ない、総理を辞める、という理由からしてもう既に、とってつけた言い訳であることは明々白々だ。そこでさらに着目すべきは「新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために、私は専念したい」と語っていることだ。文脈からしても菅首相のいう「新型コロナ対策」とは「感染拡大を防止する」ことにあるようだ。』

『だが、感染拡大の防止のなにに専念するというのだろうか。やっていることといえば、緊急事態宣言を繰り返して、毎度の会見を開いては、国民の皆さんに「自粛」をお願いすることくらいしかない。

どこに「感染拡大防止に専念」すべき余地あるのか

 感染が急拡大した先月、政府は17日に新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言に茨城、栃木、群馬、静岡、京都、兵庫、福岡の7府県を20日から追加し、これにあわせてすでに発出されている東京、埼玉、千葉、神奈川、大坂、沖縄の6都府県の期限も8月31日から9月12日まで延長することを決めた。宣言に準じるまん延防止等重点措置については、すでに適用されている北海道、福島、石川、愛知、滋賀、熊本の6道県に宮城、富山、山梨、岐阜、三重、岡山、広島、香川、愛媛、鹿児島の10県を加えた。

 さらに25日には、北海道、宮城、岐阜、愛知、三重、滋賀、岡山、広島に緊急事態宣言を発出、高知、佐賀、長崎、宮崎にまん延防止等重点措置を適用。期間を8月27日から9月12日までとした。

 もうここに書き連ねるだけでも分けがわからなくなるのだが、これで全国の半分以上の都道府県が法律の規制を受けることになり、どちらの対象にもならない県のほうが希少だ。東京だけを見ても、現在4回目の緊急事態宣言が発出中で、それ以前からまん延防止等重点措置をあわせると、今年に入っていずれの対象にもならなかった期間はわずか4週間のみである。もはや規制が常態化していると言える。言い換えれば、今年に入ってこの生活が日常であって、緊急事態宣言も常態化すれば、それは「緊急事態」ではなくなる。いまさらながらに「緊急事態」の言葉が意味を成さない。

 しかも、その時の会見で菅首相が語っていたことは、あらたに対策の「3つの柱」として「医療体制の構築」「感染防止」「ワクチン接種」を打ち出したことだった。このうち「医療体制の構築」とは、自宅療養のための支援の拡充や病床ベッド数の確保、あるいは中和抗体薬の積極投与といったことで、感染してしまった患者への対策を語っている。つまり医療体制の強化を自讃して、感染してもご安心ください、と国民に訴えている。

 次に「感染防止」だが、これこそ従前の人流抑制、テレワークの推進、飲食店の時短営業、酒類提供の停止の自粛を求め、相変わらずの「3密」の回避を呼びかけるに過ぎない。あとの「ワクチン接種」はその進捗状況を良好と語っているに過ぎない。

 これであとどこに首相として感染拡大の防止に専念する余地があるのだろうか。』

『首相が胸を張ったコロナ対策が国民にさっぱり相手にされなかった理由

 こうした会見の度に、質問に立つ記者たちが「危機感が伝わらない」「国民に総理の声が届かない」などと指摘するが、当たり前だ。首相は、医療体制は整っているから安心してください、医療崩壊は起こさせませんよ、と言っているのであって、それだったら感染しても大丈夫だ、と国民を落ち着かせるメッセージを発信しているのだから。その一方で「自粛」を呼びかけても説得力は無い。首相の発言内容そのものに矛盾がある。

 もっとも、東京オリンピックがはじまって東京都の1日の新規感染者数が5000人を超えるとは思ってもみなかったのだろう。その度に場当たり的な対策に終始し、緊急事態宣言を発出して常態化させ、危機感を呼びかけるはずが医療体制の拡充を宣伝して安心を呼びかける会見では、感染防止への国民の士気も高まらない。自分の発言の主旨や会見を必要とする意義も理解できてない。

 こうした見通しの甘さと場当たり的な姿勢は、この1週間で総裁選前の解散に打って出ようとしたり、総裁選直前の党内人事の刷新を図ろうとしたりして、どれも一夜で霧散していくところにも現れている。権力基盤維持もできない権力者に感染拡大阻止という国家事業ができるはずもない。それだけすり切れが早くて脆いゾウリだったということだろう。今年1月の施政方針演説で今夏の東京オリンピック・パラリンピックを「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証」と語っていたはずが、その新型コロナウイルスに打ち負けた首相の言葉の虚実を嗤う。

 これで来月には新しい首相が誕生することになった。政治家は言葉がすべてと言われるように、その発信する言葉のなかに、その正体を探る素地があることをあらため知っておきたい。』

「退陣」決断までの5日間、菅首相は何を考えていたのか

「退陣」決断までの5日間、菅首相は何を考えていたのか
直前まで総裁選に闘志燃やしていた首相の心を折った「情報」
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/66802

『突然の出来事だった。菅義偉首相が3日昼、自民党臨時役員会で総裁選に立候補しないと明言した。9月29日に選出される新総裁が、第100代内閣総理大臣に就任した時点で菅内閣は総辞職する。この間、菅首相は正面突破を何度も図り、続投を前提にした強気の構えを崩さなかった。一夜にして態度が変わった背景は何なのか。「退陣」決断までの5日間を振り返る。

8月30日(月)「恫喝と非情」

 菅首相は8月29日の日曜日、赤坂の衆院議員宿舎で1日を過ごした。外出が一切ない日は5カ月ぶりである。菅首相はもともと休むという習慣がなく、その意識すらも持っていないタイプだが、この日の静養で相当のエネルギーを充填したのは間違いない。翌30日からフルパワーで政局に挑んでいく。

 30日午前11時24分。総裁選出馬に意欲を示していた下村博文政調会長が官邸を訪れ、菅首相と面会した。下村氏は菅首相から出馬断念か政調会長辞任を迫られた。下村氏はあっさり白旗を掲げ、出馬見送りを決めた。菅首相の“恫喝”が炸裂した瞬間だった。面会時間はわずか13分だった。

 菅首相の動きは止まらない。同日午後3時31分、二階俊博幹事長と林幹雄幹事長代理を官邸に呼んだ。経済対策の策定指示、党の人事刷新についての相談だった。経済対策の指示はこの時点で「退陣」する気持ちが0%であったことを意味する。

 驚くべきは、菅首相が二階氏をクビにすることで難局を打開しようと考えたことだ。政権維持のためなら、菅政権の生みの親であり、5年以上幹事長の座に君臨するドンでも容赦なく斬る。勘の鋭い二階氏は菅首相の意向を察知したとみられ、「(自分に)遠慮せずに人事をやってほしい」と答えた。

二階俊博・自民党幹事長(写真:Motoo Naka/アフロ)
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 菅首相はこの1年、「二階氏の言いなり」「二階氏の支持がなければ何もできない」と言われ続けてきただけに、その見方を覆す非情な判断だったといえる。一方で、「二階外し」は党内世論に悪影響ももたらし、二階氏を斬って自らが首相の座にとどまることへの批判が次々に出始める。』

『30日夕、菅首相は官邸裏のザ・キャピトルホテル東急の客室に秘書官と入っている。朝食を取る場所として頻繁に使っていたキャピトルだが、最近はほとんど利用していなかった。客室なので、官邸や議員会館、議員宿舎では面会できない人物と接触していた可能性がある。局面の転換に向けた作戦会議を誰かと行っていたとみていいだろう。

8月31日(火)「謀略と憤怒」

「二階外し」の報道の余波が続いていた日だが、菅首相は来日中のケリー米気候変動問題担当大統領特使の表敬訪問を受け、気脈を通じている長崎幸太郎山梨県知事と面会するなど公務を黙々とこなした。

 何もないまま終わるかと思われた日だったが、夜に入って政局を急変させる衝撃的なニュースが流れた。毎日新聞が午後10時26分、「首相、9月中旬解散意向」と速報したのだ。

「菅義偉首相は自民党役員人事と内閣改造を来週行い、9月中旬に衆院解散に踏み切る意向だ」

 この記事は、政局を大きく動かしていく。党内から「自分が総裁選で負けるから、総裁選をつぶすための解散だ!」との声が次々に出たうえ、「今解散したら討ち死にだ、下野するかもしれない。首相は本気なのか」という恐怖混じりの認識が共有されていった。菅首相に反発しているとされる閣僚経験者のベテランが仕掛けた「謀略報道説」、菅首相側近からの「アドバルーン説」などが深夜まで飛び交う騒ぎとなった。

 後から考えれば、この毎日報道が、菅首相の解散権を実質的に奪い、「退陣」決意のきっかけになったといっていい。

 読売新聞によると、31日夜、安倍晋三前首相が菅首相に解散を思いとどまるよう電話で諫めたという。安倍前首相は「党内で反乱が起こってしまう」と語ったとされる。

 菅首相に近い政治ジャーナリストの田崎史郎氏は9月4日、日本テレビ系の番組で「大きく局面が変わったのは、8月31日の火曜日の夜に、9月中旬に解散、総裁選を先送りするんだという報道が流れて、水曜日朝の毎日新聞にその記事がそのまま出たんですね。それで党内の空気がガラっと変わって、総裁選先送りなんて許されないってことになって、一段と菅離れが進んだ」と解説した。

 さらに「その報道に対して菅さんは、ものすごく怒っていました。『ひどい、ひど過ぎる』と言われていました」と語った(スポーツ報知から引用)。

 田崎氏の指摘の通りだ。菅首相の憤怒は頂点に達していた。「首相には解散するつもりは最初からなかった」との見方があり、それゆえの怒りだったのではないか。少なくとも、筆者にはそう感じられる。菅首相は、その憤怒の気持ちを党役員人事・内閣改造断行の決意へと昇華させていく。』

『9月1日(水)「攻勢と誤解」

 菅政権の目玉政策の代表格であるデジタル庁が発足した日である。新たな組織を1年で整えたことは画期的であり、菅首相の政策実行力の賜物である。

 ただしその感慨に浸るような時間の余裕はなかった。毎日新聞に端を発した「解散」報道が燎原の火のごとく広がったため、菅首相は午前9時25分に記者団の前に姿を見せ、「今のような厳しい状況では、衆院解散はできない」と強く否定した。総裁選も予定通り実施すると明言した。

 おそらく菅首相は、これで党内のざわつきも鎮静化すると思ったのではないか。だが、メディアは「打ち消しに躍起」と報じるばかりで、逆に党内の不信感も一気に増幅されていった。

 それでも、菅首相は再び攻勢に出る。3日11時30分から、党本部で臨時役員会を開催することを決めたのだ。辞表を取りまとめ、6日にも党役員人事・内閣改造を断行する準備を確定させる流れだった。1日午後3時ごろには、臨時役員会開催の連絡がメディア向けに広報されている。菅首相の凄まじい執念を感じざるを得ない。

 しかし、党内から吹く逆風は止まらない。「総裁選前の人事は納得できない」。総裁選前の人事に賛成する声が少ない。「総裁選つぶしをなおも図っている」との観測、誤解も依然、広がり続けていた。

 劣勢下でなぜ攻勢に出たのか。解散権を封じられた菅首相が、人事権を行使して主導権を奪還しようとした、と捉えるのが一番すっきりするが、真相はわからない。ヒントになりそうな公開情報がある。この日夕方、日課のように立ち寄る議員会館の自室で、気心を許せる当選同期の盟友・山口泰明選対委員長と約30分会談している点だ。菅首相は山口氏に本音を漏らしただろうと推測できる。』

『9月2日(木)「包囲と決断」

 攻防4日目、菅首相との対決姿勢を鮮明にしている岸田文雄前政調会長が動いた。午前10時から、コロナ対策を中心とした政策発表の記者会見を開いたのだ。岸田氏は8月26日の出馬表明の記者会見で、党役員の任期制限を掲げ、「二階外し」をぶち上げた。この作戦は好評で、二階氏を疎ましく思う党内の支持を取り付ける切り札になりそうだったが、菅首相が「二階外し」を突然打ち出したため、その効果がなくなっていた。

 岸田氏としては発信を強化する意味でも大事な記者会見となる。「国民には説明が十分でないのではないか。楽観的すぎるのではないかという声が多数ある」と菅首相のコロナ対応をしっかり批判することも忘れなかった。

岸田文雄・前政調会長
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 岸田氏の言動が菅首相の闘争心に火をつけたことは容易に想像できる。菅首相は午後3時53分、官邸を出て自民党本部に入り、二階俊博幹事長に総裁選出馬の意向を伝達した。面会時間は16分。この時点で菅首相は総裁選不出馬を模索したり、検討したりした形跡は一切ない。むしろ、戦闘意欲は満々だった。

 しかし、状況が一変するような情報が菅首相にもたらされる。毎日新聞によると、この日の夜、菅首相は側近の佐藤勉総務会長と電話している。佐藤氏は翌日に控えた臨時役員会で、党役員人事の一任に関し、「文句が出そうだ」と伝えたというのだ。

 菅首相は佐藤氏と親しく、信頼する仲間の1人である。佐藤氏の見通しが、主戦論で押し通してきた菅首相の心を折った可能性がある。そこまで反対論があるのか、と天を仰いだかもしれない。読売新聞は、家族からも退陣を促されたと報じている。いずれにしても、2日夜、菅首相は正面突破を諦めたとみていいだろう。

 さらに注目すべき情報がある。

 自民党関係者によると、菅首相は小泉進次郎環境相から、安倍晋三前首相や麻生太郎財務相が“菅おろし”に関与していたとの情報を得ていたという。小泉氏は8月30日から5日連続で菅首相と面会している。1対1で会った時間は、30日=10分、31日=1分、9月1日=33分、2日=35分、3日=20分。ジャーナリストの田原総一朗氏は、菅首相が小泉氏に幹事長就任を打診し続けた、と言っているが、両者の話はそれだけではない可能性がある。

 小泉氏は青年局長時代に築いた地方議員や若手の有力党員らとの太いパイプを持っている。そこを通じて、安倍氏や麻生氏が地方の自民党筋に“菅おろし”をにおわせる活動、策動をしていることを独自に把握していたフシがある。四面楚歌に陥っている状況を小泉氏は菅首相に何度も報告したのだろう。小泉氏がもたらした情報が「退陣」決断の決定打になった可能性が高い。

 その安倍前首相は、今年5月3日、菅首相支持をBSの番組で明言していた。ただ、その後4カ月間、実質的に沈黙を守ってきた。そして安倍前首相が高市早苗元総務相を推すとの報道が出始めた。菅首相はキングメーカーである安倍前首相が自分を見限ったと考え、万事休すと思ったのではないか。

 いずれにしても、2日夜、どこかの時点で菅首相は正面突破を諦めたとみていいだろう。』

『9月3日(金)「豹変と撤退」

 3日朝、菅首相の動きに目立った変化はなかった。いつものように、8時前に官邸に入り、敷地内を散歩している。だが産経新聞によると、この日朝、政務秘書官らに「(総裁選には)出ない」と語ったという。2日夜に態度を180度変えたのはほぼ間違いなさそうだ。
 四書五経のひとつ「易経」に有名な「君子豹変」という言葉がある。突然態度を変える際に使われる場合が多いが、正確には「君子は日進月歩、日々に善に進化していく」という意味だ(諸橋轍次編「中国古典名言辞典」)。実はこの君子豹変の後に「小人は面を革(あらた)む」と続いている。これは「小さな人物は心にもなく、顔だけ上の人の意に従う態度を取る」という意味だ。菅首相が善に進化したかどうかはともかくとして、衆院選を前にした党の窮地を救う決断を電撃的に下した点は、「君子豹変」と言えるだろう。

 3日午前11時17分、悲壮な表情をした菅首相が自民党本部に入った。二階俊博幹事長と面会し、総裁選不出馬を伝えた。各種報道によると、二階氏は慰留をしたという。午前11時34分、臨時役員会が始まり、菅首相は総裁選不出馬の意向を表明し、約6分で退出した。

 官邸に戻った菅首相はすぐに記者団の前に登場したわけではない。菅政権を全力で支えてきた側近中の側近である武田良太総務相と真っ先に面会している。その後、河野太郎行革担当相とも個別会談した。この2人との面会は見逃せないポイントである。武田氏は党役員人事が行われれば、三役への起用が見込まれていた上、菅首相の主戦論を支持しつつ、何らかの形で軟着陸を図ろうと努力していた。河野氏についても、この場で菅首相が後事を託す意味で、総裁選出馬を後押しした可能性がある。

 菅首相は武田氏と河野氏との面会後、午後1時6分、官邸で記者団に対し、不出馬表明を行った。「コロナ対策に専念したいという思いの中で、総裁選には出馬をしない」「コロナ対策と選挙活動、莫大なエネルギーが必要なのでどちらかを選択すべき」。ややわかりにくい不出馬の理由は、党内や世論を踏まえて身を退いた——とは絶対に言わないという決意がにじんでいる。

 現時点では、「退陣」の決断は2日夜ということしかわからないが、衆院選に向けた自民党の風向きは一気に良くなった。次期衆院選での大敗は回避される気配が濃厚だ。菅首相は衆院選勝利の立役者、功績者として、その身の退き方を含めて、後々評価されるのではないか。』

自民党総裁選、混迷の派閥

自民党総裁選、混迷の派閥 衆院選前で世論重視
細田派、高市氏で統一難しく 麻生派「河野・岸田氏割れる」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA03EKX0T00C21A9000000/

『自民党総裁選を巡る各派閥の対応が混迷を深めてきた。菅義偉首相の不出馬表明で前回首相を支援した最大派閥の細田派と、第2派閥の麻生派は支援候補の絞り込みが難しい情勢だ。次期衆院選を間近に控えて世論重視で「勝てる候補」を探る。中堅若手の動き次第で自主投票になりかねない。

【関連記事】高市前総務相、出馬の意向 自民総裁選
総裁選は17日告示―29日投開票の日程で実施される。1人1票の国会議員票383票と、党員・党友票383票の計766票を競う。

記者会見で自民党総裁選への出馬を表明する岸田氏(8月26日、国会内)

立候補はまず岸田文雄氏が明らかにした。菅政権の閣内にいる河野太郎規制改革相は週内にも出馬表明の記者会見に臨む見通しで、高市早苗氏も立候補する意向だ。

石破茂氏は派内などで協議しており、野田聖子幹事長代行は推薦人集めを急ぐ。

昨年、安倍晋三前首相が辞任表明した後の総裁選は7派閥のうち細田、麻生、竹下、二階、石原の5派が菅首相を支え圧勝を主導した。今回は首相の不出馬で「勝ち馬」が見えなくなり、各派は戦略を再検討している。

細田派は今週前半にも幹部会合を開く。同派に影響力をもつ安倍氏は無派閥の高市氏を支援する考えだ。保守層を代弁する立場を期待するもので、衆院当選4回の高鳥修一氏は支持を明言する。

自民党総裁選に出馬意向の高市氏

高市氏はかつて同派を離れた。細田派幹部は「高市氏で派閥をまとめるのは簡単ではない」と言う。選挙基盤の弱い衆院当選3回以下の議員が3割超を占め、河野氏や岸田氏支持を求める主張が高まればまとまるのは難しい。

同派の下村博文政調会長も出馬を探る。いったん断念したが、首相不出馬で状況が変わったと判断した。推薦人20人の確保に向けて派内の議員らと協議している。

河野氏が所属する麻生派は態度を決めていない。会長の麻生太郎副総理・財務相は3日、会談した河野氏に支援の言質を与えなかった。

出馬検討を表明する河野太郎氏(3日、東京・永田町)

同派の中堅・若手は報道各社の世論調査で次の首相候補で上位の河野氏に出馬を促す。同派幹部は「今回は派内が岸田勢力と河野勢力に二分する。一つに無理やりまとめるのは不可能だ」と話す。

竹下派には昨年に「ポスト安倍」候補にあがった会長代行の茂木敏充外相がいる。衆院の中堅・若手から待望論があがる一方、参院側には距離が残る。

茂木氏「グループまとめるのが重要」

茂木氏は5日のNHK番組で「グループをしっかりまとめるのが何より重要だ」と強調した。
同派は2018年総裁選で衆参両院の対応が割れた。衆院の大勢が当時の安倍首相を支持したのに対し参院側は石破氏に回った。参院竹下派に影響力をもつ青木幹雄元参院議員会長の意向もあった。

河野氏は4日、竹下派の若手議員に電話し「応援よろしく」と伝えた。同派の協力を得るため、幹部との面会も調整する。派としての対応を定められなければ草刈り場になるおそれが出る。

首相の再選支持を表明済みだった二階派と石原派は軌道修正する。首相は3日夜、都内の衆院議員宿舎で二階氏と会談した。二階氏は「俺はまだ旗振りしない。しばらくみんなで勉強すればいい」と周辺に語る。

石破氏、二階氏と会談

石破派は石破氏が出馬を決断するかが焦点となる。同派の議員は17人で出馬に必要な推薦人20人に足りない。石破氏は4日、都内で二階氏と会談し、総裁選について意見交換した。他派閥や無派閥からの賛同を得られるか見極める。

今のところ派閥単位で態度を決めたのは岸田氏が会長を務める岸田派だけだ。告示まで3週間以上ある8月26日に出馬を表明し、党員・党友票の開拓に動く。

国会議員票と党員・党友票が同数となる「フルスペック」の総裁選は世論を代弁する党員票がものをいう。一方で1回目の投票で過半数に届く候補がいなければ上位2候補で決選投票を実施する。

都道府県連票47票と国会議員票の集計となり国会議員票の重みが増す。自民党が野党時代に実施した12年秋の総裁選は決選投票で安倍氏に国会議員票が流れ、1回目トップの石破氏に勝利した。

今回の総裁選で候補が乱立すれば決選投票になる可能性が高まる。主要派閥の領袖は影響力を保つため派内の結束維持に努める。

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竹中治堅
政策研究大学院大学 教授

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分析・考察 現在の政治の基盤にある小選挙区・比例代表並立制という衆議院の選挙制度の下では選挙は政党本位で行われる。

首相は「選挙の顔」として与党の象徴となり、首相の人気は与党の戦績に大きな影響を及ぼす。総選挙の可能性が高まれば高まるほど与党政治家は首相の人気を意識する。2020年9月の総裁選で多くの派閥が菅義偉氏支持で纏まることができたのは、菅氏の人気が高く、派閥の考えと党首の人気重視の自民党政治家の志向が一致したからである。

今回は、出馬表明した岸田文雄・河野太郎両氏、出馬の可能性が注目される石破茂氏はいずれも一定の人気を誇り、派閥が一人の候補に纏めるのは難しい。多くの派閥は自由投票を選ぶことになるだろう。

2021年9月6日 13:57 (2021年9月6日 14:00更新)
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白井さゆり
慶應義塾大学総合政策学部 教授

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別の視点 自民党総裁選の議論の争点のひとつに気候変動を取り上げるべきだと思います。

各候補が「改正地球温暖化対策推進法」で正式に掲げた2050年までに排出量正味ゼロを実現するために、その中間目標である2030年46%減(2013年比)と7月発表の電源構成についてどのようにして実現していくのか具体的なビジョンを示してほしい。

11月に英国グラスゴーで、「国連気候変動枠組条約第26回締約国会議」(COP26)が開催され、日本のリーダーシップが期待されます。

2021年9月6日 8:07いいね
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菅野幹雄
日本経済新聞社 ワシントン支局長・本社コメンテーター

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分析・考察 派閥ってなんだろう。そんな基本的な疑問が浮かんできます。総裁候補がいて、領袖がいる。選挙に負けまいと必死の若手議員と、派閥のグリップを失いたくないボスたち。有権者が一番気にしている政策の立案と実行に内向きの発想は弊害だらけで、むしろ自主投票の方がいいくらいです。

政治ですから数が勝負であり人々が群れるのは当然ですが、危機の最中に首相がまたも一年で替わる事態になった日本には、有権者本位で語り、実行できる強い指導者を選ぶことが必須の課題です。

自民党の方々はその原点を忘れずに戦いに臨んでほしいです。菅首相が衆院解散や幹事長交代を探りムラの論理で迷走した展開を繰り返せば、遠からずそっぽを向かれます。

2021年9月6日 7:33 (2021年9月6日 11:12更新)
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「世代と派閥」自民の岐路 総裁選せめぎ合い

「世代と派閥」自民の岐路 総裁選せめぎ合い
衆院選へ「勝ち馬」見定め
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE03E340T00C21A9000000/

『自民党総裁選の動きが一気に活発になってきた。菅義偉首相(自民党総裁)の不出馬を受け、間近に迫る衆院選を意識した「選挙の顔」を誰にするのか、勝ち馬を見定めようと党内が動く。自民党衆院議員の半数近くを占める当選1~3回生は世論の人気を重視し、派閥の動きは鈍い。

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その時々の政治課題や時流をみて動く新しい世代が総裁候補を押し上げるのか、従来の派閥力学が維持されるのか。世代と派閥がせめぎ合う総裁選は、自民党の今後を決める岐路になる。

総裁選は既に出馬表明した岸田文雄氏、立候補する意向を固めた河野太郎規制改革相、意欲を示す高市早苗氏ら複数の候補で争う。野田聖子氏も模索する。

現職の総裁が出馬せず、圧倒的に優位な候補が見当たらないのが現状だ。

首相が出馬を断念した背景には、党内若手の「菅首相では衆院選を戦えない」との声があった。

2012年、自民党が政権に復帰した衆院選で国政に出た議員は現在当選3回にあたる。3回生は84人に上り、突出して多い。14年、17年などの選挙で初当選した議員を含めると、3回生以下は46%に達する。

厳しい選挙を戦った経験がない若手は首相の不人気に動揺し「菅氏以外なら誰でもいい」との意見が強まっていた。

昨年の総裁選では首相を支持した細田派や麻生派でさえ、今回は「菅氏への支持で派閥はまとまらない」との見方が広がっていた。世代と派閥、2つの要素を満たせない首相には、不出馬しかなかったといえる。

最初に出馬表明した岸田氏は「菅氏以外なら誰でも」の感情を捉えた。党役員任期を「1期1年、連続3期まで」と主張し、二階俊博幹事長の再任を否定した。

中堅・若手の登用を掲げたのも、当選1~3回生の空気を反映したものだ。「首相と事実上の一騎打ちなら、岸田氏有利」との見方もあった。

首相の不出馬で状況を変えたのは、世論調査で「次の総裁にふさわしい人」のトップを走る河野氏の登場だ。

3日、河野氏は麻生太郎副総理・財務相を大臣室に訪ねて出馬の意向を伝えた。

「今回が勝負をかける時期なのか」。麻生氏の問いかけに河野氏は「そうです」と答えた。「わかった。賛成もしないが、反対もしない」と麻生氏が言うと、河野氏は「じゃあ出ます」と語った。

河野氏を主に推すのは若手たちだ。河野氏は58歳で、自民党内ではネット世代の先駆けで派閥の領袖でもない。麻生派は岸田氏と河野氏の支持に割れる。

前回は首相を支持した細田派も対応は定まらない。同派に影響力がある安倍晋三前首相は高市氏を支援する考えだ。高市氏は無派閥で、かつては現在の細田派に所属していた。

細田派では下村博文政調会長も再び、名前が取り沙汰される。最大派閥は一枚岩で動ける状況にはない。

こうした状況をにらみ、河野氏と並んで世論調査で人気のある石破茂氏も立候補を検討する。今回の総裁選は国会議員票と党員・党友票が同じ数になる。石破氏に期待するグループは「今回はチャンスがある」とみる。

12年に政権復帰してから、自民党政権の中枢は7年8カ月にわたって首相を務めた安倍氏、盟友で副総理を続ける麻生氏、官房長官を経て首相になった菅氏、二階氏らが占めてきた。

現在、党所属衆院議員276人の平均年齢は59歳で、60歳未満は半分に迫る。無派閥も2割弱に上る。引退を表明した議員が相次ぎ、さらに世代が若返るのは間違いない。

新たな若手の動きも出てきた。当選3回、30~50歳代の有志20人ほどは9月中に総裁選のあり方や党改革を提言する。細田派の福田達夫氏は「長老の意向に左右される不透明な意思決定というイメージを払拭する」と話す。

昨年の総裁選では「勝ち馬は菅氏だ」とみて、無派閥の菅氏に大派閥が乗って首相の誕生につながった。今回も派閥は主導権をとれない。世代と派閥がせめぎ合い、総裁選は先の読めない真剣勝負となってきた。

(重田俊介)

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