[FT]世界経済のけん引役から外れる中国(社説)

[FT]世界経済のけん引役から外れる中国(社説)
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『パンデミック後の世界経済の停滞は、もとより避けられなかった。経済活動の回復は段階的に進むことが多く、起きるのは一度限りだ。ロックダウン(都市封鎖)後の経済再開の勢いは猛烈だが、それが繰り返されることはない。多少の規制緩和をしても再開時のような景気押し上げは望めない。それでも、最近の主要経済指標の軟化は懸念材料だ。感染力の強いインド型(デルタ型)変異ウイルスの拡大やサプライチェーンの問題だけでなく、中国経済の減速を反映している。

8月の財新製造業購買担当者景気指数は中国の生産活動の縮小を示している=ロイター
2008年の金融危機後は、政府の景気刺激策を受け、工業化を進めた中国が急速に成長し、世界経済の回復を助けた。20年には再び中国の鉱工業生産は急回復し、世界でもまれな経済成長を実現した。ところが今、その復調の勢いに陰りが見えている。以前から懸念されていた消費者や企業の債務問題が再浮上しているうえ、中国共産党の政策の優先順位が変容していることが背景にある。

中国メディアの財新と英調査会社IHSマークイットが1日発表した8月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は、世界各地でロックダウンが始まった20年4月以来初めて好不調の境目である50を割り込み、生産活動の縮小を浮き彫りにした。この民間版PMIは、中国経済の実態を示す指標として注目度が高い。

中国経済を減速させているマイナス要因には他国に通じる部分もある。デルタ型ウイルスの感染拡大により、中国の多くの地域でロックダウンや移動制限が再導入された。サプライチェーンの問題からメーカーは受注増に対応し切れなくなっている。半導体やコンテナが世界的に不足しているうえ、主要製造拠点であるベトナムで感染が拡大し、工業生産の足かせになっている。

米国でも、デルタ型の広がりが経済減速の原因になっている。感染者数が増える中で、消費意欲が低下しているためだ。欧州では、サプライチェーンの乱れがインフレにつながっている。欧州連合(EU)統計局が先日発表したユーロ圏の7月の物価上昇率は、ほぼ10年ぶりの高水準を記録した。比較対象の前年同月の物価が異常に低かったせいもあるが、部品の供給不足でメーカー各社の生産が進まなかったのは中国と同様だ。

この他、中国独自の要因もある。債務問題に加え、長年の住宅ブームが終わる可能性が懸念されている。同国の不動産開発会社の中で最も重い債務を抱える中国恒大集団は、債務不履行(デフォルト)の危機にある。中国の不動産業者は軒並み、利払い負担の増加に直面している。中国共産党が昨年、経済の不動産への依存度を下げ、不動産開発会社の借り入れを制限する政策に転じたことが影響している。

概して、中国政府はかつての成長最優先の政策から転じ、IT大手による支配や、貧富の差の拡大など、放縦な資本主義の手綱を締めようとしている。それも理解できなくはない。例えば、アルミニウムの減産は政府が環境対策を強化した結果とされる。だが、中国の方針転換は、中国が世界経済にとって、08年の金融危機後のような成長エンジンにはならないことを意味する。世界は今、中国に代わる景気けん引役を探す必要に迫られている。

(2021年9月2日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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