米、海外関与の縮小鮮明

米、海外関与の縮小鮮明 同盟国に問われる自助努力
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『【ワシントン=永沢毅、北京=羽田野主】バイデン米大統領は8月31日、海外での紛争解決への関与をできるだけ減らす方針を鮮明にした。中国とロシアは米国のアフガニスタン撤収の間隙をついて地域での影響力の拡大をもくろむ。再び大国のパワーゲームの舞台となりつつあるアフガン情勢は日本にも重い課題を突きつける。

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「他国を造り変えるための大規模な軍事作戦の時代の終わりだ」。バイデン氏は同日の演説で、アフガン戦争の終結を改めて宣言。アフガンでの民主国家の建設が失敗に終わったと事実上認めた。「アフガンの歴史で民主国家の建設は何世紀もあり得なかったことだ」とも付け加えた。

2001年の米同時テロを受け、ブッシュ政権(第43代)が02年に打ち出した「中東民主化構想」。テロの根源を絶つため、軍事力を背景に中東全域を民主国家に転換させようという野心的な試みだった。その底流には冷戦後に唯一の「超大国」として君臨していた米国の自信がある。

03年のイラク戦争で独裁者フセイン大統領を打倒した。ただ、現地情勢を無視した「民主主義の押しつけ」には反発が広がった。宗派対立の激化や過激派組織「イスラム国」(IS)の台頭を許し、シリア、リビアなどではなお内戦が続く。

「中国やロシアが望むのは米国がこれからさらに10年のアフガンの泥沼にはまり込むことだ」。バイデン氏の発言には「テロとの戦い」に力をそがれ、中国との覇権争いにあたってもはや余裕のない米国の焦りがにじむ。

バイデン政権の内情に通じた関係者によると、バイデン氏の早期撤収の判断にはアフガン政府軍の変わらぬ「米国頼み」の姿勢もあった。「アフガン政府軍が戦う気力のない戦争で米兵は戦うことはできないし、そうすべきでない」。バイデン氏はこう主張する。

米国は最新鋭の装備の提供や訓練などでアフガン政府軍を支援したが、イスラム主義組織タリバンの攻勢にはなすすべもなくほぼ全土の陥落を許した。「もしアフガン政府軍にもっと自助努力の姿勢があれば、バイデン氏は違う判断を下したかもしれない」。バイデン政権のアドバイザーは駐留延長の選択肢もあり得た可能性を指摘する。

バイデン氏はオバマ政権の副大統領を務めていた時から北大西洋条約機構(NATO)に国防費の負担増を求めてきた。このアドバイザーは「日米安全保障条約を交わして正式な同盟関係にある日本とアフガンは同列ではない。ただ、同盟・友好国に応分の自助努力を期待する姿勢は変わらない」と指摘する。

バイデン氏が9月11日までの撤収方針(当時の目標、後に8月末に前倒し)を正式に表明したのは4月14日だった。「日本は安全保障をいっそう強化するために自らの防衛力を強化することを決意した」。その2日後、菅義偉首相との首脳会談の後にまとめた日米共同声明にはこんな文言が盛り込まれた。

バイデン政権は中国の台頭に照準を合わせた米軍の態勢見直しを近く終える。中国の習近平(シー・ジンピン)指導部は台湾統一のためには武力行使も辞さない立場とされ、「台湾有事」への危機感は日米の安保関係者の間で共有されつつある。今後、米国が中国を射程に入れる地上配備型の中距離ミサイル配備で日本に協力を求める可能性がある。

米軍のアフガン撤収をめぐる混乱は、米国の威信を傷つけ、アフガン戦争に加わったNATO諸国との間に溝を生んだ。中国とロシアは9月16、17日にタジキスタンの首都ドゥシャンベで開く上海協力機構(SCO)首脳会議をてこに、アフガニスタンの安定に向けて関与を強める。

SCOには中ロのほか中央アジア4カ国とインド、パキスタンが加盟する。アフガンもオブザーバー参加しており、中ロは巻き込みやすいとみている。アフガンと国境を接する国が多く、イスラム過激派の流入を巡る危機感を共有しやすい。

中国の習国家主席は8月25日にロシアのプーチン大統領と電話協議し「今年はSCO発足20年の契機となる。加盟国とともに団結を強め、地域各国の安全と発展の利益を守らなくてはいけない」と呼びかけた。

プーチン氏は「ロシアと中国はアフガン問題で似た立場にあり、共通する利益も持っている。中国との連携を緊密にしたい」と応じた。中ロが軸となり、アフガンの経済復興とテロ対策を進める見通しだ。

中国は経済力を武器にアフガンへの影響力を確保する戦略を描く。中国外務省の汪文斌副報道局長は31日の記者会見で「アフガンが平和を取り戻し、経済を再建することにできる限りの支持、支援を提供する」と強調。経済支援に前向きな考えを示した。

中国の15~19年の対アフガン投資は計2830万ドル(約31億円)にとどまるが、今後増額する可能性もある。

SCO加盟国は9月11日から25日まで、ロシア南部オレンブルク州で対テロ合同軍事演習を実施する。タリバンに過激派と決別し、テロリストの取り締まりを徹底するように圧力をかける狙いもある。』