アフガン撤収強行、バイデン政権に批判

アフガン撤収強行、バイデン政権に批判 中間選に影響も
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『【ワシントン=永沢毅】バイデン米大統領は米国史上最長のアフガニスタン戦争に終止符を打つ公約を実行に移した。米軍の撤収を望む世論に応えたが、身内の民主党からも不手際への批判があがる。政権への逆風が強まれば、来秋の中間選挙に影響を与えかねない。

バイデン米大統領を再選を逃したカーター元大統領になぞらえる向きもある=ロイター

「退避計画にあたって著しく対処を誤っている」。民主党の下院外交委員会のワイルド議員はバイデン政権の一連の対応をこう酷評した。米CBSの世論調査では有権者の53%がバイデン政権の対応を評価せず、肯定的だった47%を上回る。

バイデン氏が撤収を強行した目的の一つは若い米兵の犠牲を防ぐことがあった。にもかかわらず、首都カブールで撤収の混乱を狙った26日のテロでは13人の米兵が亡くなった。31日の撤収期限にこだわった末に新たな犠牲をもたらした責任から同氏は免れない。

民主党関係者によると、党内には外交・安全保障政策の司令塔となるサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)らを更迭し、アフガン政策の仕切り直しを印象づけるべきだとの意見もあるという。

半面、世界各地の紛争解決への米国の関与に否定的な立場をとる党内の急進左派からは声高な非難はでていない。気候変動や投票権拡大などで政権に圧力をかける若手の代表格、オカシオコルテス下院議員もこの問題では発言を抑え気味だ。国防予算を減らせば、教育や医療など左派が重視する格差是正に振り向ける余裕が生まれるとの計算がある。

共和党や保守系には、今回の混乱を民主党のカーター元大統領が直面したテヘランの米国大使館人質事件となぞらえる向きがある。「カーター政権にみられた空論と無能ぶりがバイデン政権の特徴を形作っている」。共和党のテッド・クルーズ上院議員はカブール陥落前、バイデン政権のアフガン対応をこう断じた。

1979年に親米政権の崩壊を受けて反米に傾くイラン人学生の動きを見誤ったカーター政権は、大使館の占拠を未然に防げなかった。米軍の救出作戦は失敗に終わったうえ、参画した米兵8人が死亡した。これらは80年大統領選で同氏の再選を阻む一因となったとの評価が定着する。

バイデン氏はイスラム主義組織タリバンの攻勢を読み違えてカブール陥落を許し、退避作戦で自らの政権では初となる米兵の犠牲を生んだ。その姿はカーター氏と重なる。

再選がかかるバイデン氏の24年大統領選まで3年以上あるが、政権の信任を問う中間選挙までは1年2カ月にすぎない。共和党が機会をとらえてバイデン氏の拙劣な対応を「弱腰」と決めつけ、攻撃材料にするのは確実だ。

「バイデンはいったいどれだけのテロリストを米国に連れてくるんだ?」(トランプ前大統領)。共和党にはアフガン難民の受け入れで保守層の危機感をあおり、支持に結びつける思惑も透ける。

現在はかろうじて民主党が主導権を握っている連邦議会上下両院でいずれも共和党に過半数を許せば、バイデン政権はレームダック(死に体)に陥る。

ブリンケン国務長官は現時点で出国を希望する米国人が100~200人規模でアフガンに残るとみる。その過程で新たな犠牲が出れば、政権への打撃は計り知れない。「世界の警察官」の役目を終えても、当面は米国外でおきたテロの責任を問われるリスクをバイデン氏は抱え込んでいる。』