[FT]チェコ「海賊党」、政権奪取うかがう 10月議会選

[FT]チェコ「海賊党」、政権奪取うかがう 10月議会選
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『15年前、既存政党に反旗を翻して欧州政界に突如出現した「海賊党」はその後ずっと政治の主流になれずにいた。だが10月8日に実施予定のチェコ議会選挙で、同国の海賊党は欧州連合(EU)で初めて国政与党になるかもしれない。

ドレッドヘアが特徴のイワン・バルトシュ氏。海賊党を率いて10月の議会選で政権奪取に臨む=ロイター

ドレッドヘアが特徴のイワン・バルトシュ氏(41)が率いる同党は「市長と無所属」党(STAN)と連合を組んでいる。右派政党連合との協力など選挙後の連立工作次第では、実業家出身のバビシュ首相が党首を務める与党「ANO」を政権の座から追い落とす可能性がある。

元IT技術者のバルトシュ氏は他の多くの海賊党員と同様、政治の現状への不満から政界入りを志した。同氏はチェコの既成政党が経済力の高い西欧各国との差を縮めようとする取り組みを妨害していると感じていた。

「政治のプロでもない腐敗した人々が我々の人生を決めることに我慢できなかった」と同氏は首都プラハの同党事務所でのインタビューで語った。「チェコには優れた人々、明敏な頭脳、能力の高い労働者が存在するのに西欧の夢に追いつけない」

チェコ海賊党は2009年に設立。00年代半ばにインターネット上の著作権規制強化への反対運動から欧州各地で生まれた「海賊党」の一つだ。しかし他国の仲間とは異なり、すぐに単一争点の政党から脱皮した。10年と13年の議会選挙では議席を獲得できなかったものの、17年には得票率11%で議会第3党となった。

30%近い支持率

21年に入り、同党とSTANの連合は世論調査で30%近い支持率となり、ANOを抜いて一時は有権者から最も支持される政治グループとなった。

支持率が急上昇した背景には、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)への政府の対応に対する市民の怒りの広がりがあった。21年初めには事態が深刻化し、同国は3月に人口比での累計死者数が世界最悪となった。

「コロナ危機によりこの国の統治がいかに混乱しているか明らかになった」とバルトシュ氏は政府を批判した。「死なずに済んだはずの3万人が亡くなった」

だがパンデミックの影響が落ち着くと、ANOの支持率は回復した。ここ数週間、海賊党・STAN連合の支持率はANOと中道右派連合「SPOLU」に次ぐ3位に下がっている。

実業家出身のバビシュ首相は海賊党を選挙戦最大の標的と位置付けている=ロイター
バビシュ氏は海賊党を最大の標的とし、保守的な有権者への脅威となる革新的イデオロギー主義者だと表現している。6月には同党が広い家に住む市民を移民と同居させようとしていると主張したほか、8月には同党が「イデオロギー的に誤った信念」を宣伝しているとも話した。

ドイツ外交問題評議会のシニアフェロー、ミラン・ニシュ氏は「選挙戦を海賊党への攻撃と位置付けたバビシュ氏に対し、同党は何の対応もできないでいる」と指摘した。「自ら綱領に掲げた課題が争点となるよう演説内容や選挙戦略を再構築できておらず、防戦に回っている」

強気保つバルトシュ氏

バルトシュ氏は強気を保っており、海賊党は他のどの政党より激しく虚偽情報の攻撃を受けていると主張。返す刀で、チェコにとって真のリスクはバビシュ氏が選挙後も政権を維持するため極右政党や共産主義者と手を組むことだと言い募った。バビシュ氏本人は否定するが、同氏には自らの企業グループに関する詐欺や利益相反疑惑があり、主要政党の一部からは嫌悪されているとさえバルトシュ氏は明言した。

バルトシュ氏はさらに、バビシュ氏が政権を維持すればチェコはEU主要国からさらに遠ざけられ、EU内で仲間はずれにされると警告した。「チェコを東欧の元共産主義国の遺物を陳列する博物館にしたくない。進化し、成長し、協力する西欧の一員になりたい。そうした将来への課題を自国だけでは克服できない」とバルトシュ氏は話した。

他の中欧諸国と同様、チェコにとって課題の一つは西欧の多国籍企業に安価な労働力を提供する経済モデルから、自国企業がバリューチェーンの上位に位置するモデルに移行させることだと同氏は主張した。「製品を組み立てる国から経済の中枢を担える国にチェコを変えていきたい」

一方で、依然としてエネルギーの3分の1近くを石炭に依存するチェコをより環境に優しい国にする必要があるとも指摘。そのためにEUが50年までに温暖化ガス排出量実質ゼロを目指す「欧州グリーンディール計画」の一環として加盟国に分配する資金を有効利用すべきだと述べた。

「グリーンディールの資金は50年になっても雇用を創出できる企業を育成するために配分される。環境に責任を持たなければ経済発展の余地は少ない」と同氏は力説した。「それが世の中の流れなら、それに従うのはイデオロギーの問題ではない。賢明な判断だ」

By James Shotter

(2021年8月29日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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