[FT・Lex]タリバンはアフガンの鉱物を開発できるか

[FT・Lex]タリバンはアフガンの鉱物を開発できるか
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『「帝国の墓場」は、豊かな資源の揺りかごでもある。鉱物資源帯に位置するアフガニスタンは金、銅、宝石、リチウムなどの天然資源に恵まれる。イスラム主義組織タリバンの政権奪還で、資源へのアクセスが改善するとの観測もある。紛争で荒廃したアフガンは文字通り金鉱の上にあるようなものだ。鉱物の総埋蔵量(の価値)は1兆ドルとみる専門家もいる。これは2010年の推定だが、地質学者や一獲千金に関心のない人はあまりに楽観的だと取り合わなかった。

アフガニスタンの鉱山開発には治安改善が必要だ(7月、カブール近郊で米軍が拠点にしたバグラム空軍基地で)=ロイター

本当のところ、(アフガンの資源に関する)どんな数字も当てずっぽうだ。データの大半は1980年代にロシア(当時はソ連)の影響下で実施された探査に基づく。それでも工業用をはじめ、豊かな鉱脈が存在するのは確かだ。JPモルガン・チェースで投資銀行業務に従事していたイアン・ハナム氏をはじめ、アジアや欧米の野心的な鉱山投資家が、さまざまなライセンス入札に参加した。だが、こうしたプロジェクトの多くは、政争、汚職、紛争の影響で頓挫したり縮小したりという結末を迎えた。

タリバンが支配勢力に返り咲いても、過去の政権に比べ、資源開発が容易になると考えるのは大甘だ。アフガンの歴史のなかで例外として、指導者の関心が政治より経済に関して強くなったとしても、物流の体制がほとんど整っていない。アフガンは海に面しておらず、鉄道網も貧弱だ。リチウム、希土類(レアアース)をはじめとする鉱物の採掘には高度な技術も必要だ。米国防総省が使った「(石油のかわりに)リチウムがあるサウジアラビア」という表現はまったくの的外れだった。

最も価値のあるプロジェクトのいくつかにも課題がある。中国国有の中国冶金科工集団と江西銅業は18年、世界最大級の銅鉱床であるメス・アイナクの(開発)ライセンスを獲得した。ところが、銅鉱石が埋蔵されているのは国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産の下だ。作業員は(遺跡を傷つけないよう)ブルドーザーを使わずに採掘しないといけない。

アフガンにある資源の多くは脱炭素の経済へ舵(かじ)を切る世界が目先、必要としている。タリバンは資金の25%を鉱物から得ているとの見方もある。これは言い過ぎだと思われるが、税金、鉱区使用料、そしておそらくは賄賂がまつわる産業なので、あながちでたらめだとは言い切れない。

それでも資源価値の見積額は当てにならない。採掘や輸送にかかる莫大な費用が含まれていない。資本コストは不安定な政治を勘案する必要がある。アフガンは、政治の揺れ動きの幅が途方もなく大きかった。仮に世界の金がすべて埋まっているとしても、軍閥が割拠して対立する土地ならば、価値があるとはいえない。

(2021年8月24日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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