アフガン、市民生活の混乱長期化

アフガン、市民生活の混乱長期化 タリバン支配2週間
「闇経済」依存に懸念
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB26DA40W1A820C2000000/

『【ニューデリー=馬場燃】アフガニスタンの首都カブールで市民生活の混乱が長期化している。29日でイスラム主義組織タリバンの制圧から2週間たったが、住民は仕事に行けず、銀行も閉まったままだ。世界銀行などがアフガン支援を打ち切ったこともあり、タリバンは麻薬栽培といった正式な統計に表れない「闇経済」への依存を強める懸念が出ている。

「タリバンを恐れて誰も外に出たがらない。仕事もお金もない」。首都カブールに住むタクシー運転手の男性(50)は肩を落とす。銀行は閉まったままでお金を引き出せず、物価も2割ほど上昇したという。カブール在住の50代女性も「会社に出社するなと言われた。こうした状況が半年は続くのではないか」とため息をもらす。

「女性に対する影響を懸念している」。世銀は24日、タリバンが制圧したアフガンの事業を巡る支出を一時停止したことを明かした。国際通貨基金(IMF)もタリバンが国際社会から認められないとして経済支援の送金をすでに止めている。アフガンは財政の6割以上を国際社会の支援に頼ってきたが、タリバンは新政権を樹立する前から将来の経済運営に暗雲が垂れ込めている。

タリバンの広報担当者は17日の記者会見で「混乱が収まれば経済インフラをすぐに整えたい」と述べた。最大の資金源としてきた麻薬栽培は「今後は一切しない」と宣言し、アフガンに埋蔵される天然資源を経済立て直しの切り札にする考えを示した。

国連は6月の報告書で「タリバンの資金調達の源泉は、ケシの生産、麻薬密売、鉱物採掘、恐喝、身代金目的の誘拐などの犯罪活動だ」と指摘した。年間収入は最大16億㌦(約1760億円)とみている。

アフガンでケシ栽培をする農家=ロイター

世銀の試算ではアフガンの名目国内総生産(GDP)は2020年に約190億㌦。タリバンの収益はGDPの1割弱にすぎず、国際社会からの支援が期待できない中では「闇経済」に一段と傾斜する可能性は否定できない。

アフガンはケシの世界最大の産地の一つとされている。ケシからアヘンを採取し、それを精製することで依存度が高い麻薬のヘロインができる。

国連薬物・犯罪事務所によると、アフガンのケシ栽培面積は20年に22万4000㌶にのぼる。タリバンの前回政権が崩壊した約20年前に比べると3倍弱の規模に拡大した。アフガン34州のうち、22州で栽培している可能性があるという。

タリバン主導で6300㌧のアヘンが製造されたとみられ、年間収益は3.5億㌦程度と推計している。同事務所は「アフガン東部を除いてすべての地域で栽培量が増えている」とみる。タリバンの新政権が経済運営に行きづまれば、今と同様にケシ栽培を命綱にする公算が大きい。

タリバンが期待を寄せる天然資源の開発も先行きの不透明感が強い。

アフガンは銅、鉄、水銀、レアアース(希土類)、大理石などの資源が豊富に眠り、資産価値は最大で3兆㌦にのぼるという試算がある。米国平和研究所は「アフガンでの多くの天然資源採掘は規制が整備されていないものだ」との見解を示す。「タリバンは違法採掘が麻薬に次ぐ2番目に大きな資金源になっている」としており、年間2億~3億㌦の収益を得ている可能性に言及している。

タリバンはアフガン市民が健全に働ける環境を整えると繰り返すが、その言葉を額面通りに受けとめる人は少ない。アフガン南部のウルズガン州でケシ栽培を営む農家は「ケシは小麦などを育てるよりも簡単で、これからも続けたいと考えている」という。今後のタリバンの経済運営は混迷が必至だ。

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