中国、ワクチン改良急ぐ

中国、ワクチン改良急ぐ 供給先で接種回避の動き受け
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM175NM0X10C21A8000000/

『中国が自国製の新型コロナウイルス向けワクチンの改良を急いでいる。中国で再び感染が拡大傾向にあることに加え、有効性への不安から、供給した東南アジアや南米などの新興国で接種を避ける動きが広がっている。信頼性を高めなければ、これまで進めてきた「ワクチン外交」にも響きかねないとの焦りが背景にある。

中国の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)は6日、感染力の強いインド型(デルタ型)の変異ウイルス向けに改良したワクチンの臨床試験(治験)と緊急使用を、供給先の国の薬品当局に近く申請する方針だと発表した。3回目の追加接種(ブースター接種)では中国の治験で「強い免疫反応を確認した」という。

中国医薬集団(シノファーム)もデルタ型のワクチンを開発中だ。中国紙・長江日報が16日、報じた。同社の研究所長の段凱氏は「できる限り早く研究を終え、緊急使用を申請したい」と語った。

中国本土でのワクチン接種回数は20億回を超えた。9億人弱が接種を完了したものの、7~8月にはデルタ型の感染者が急増しており、対応が急務だ。

中国は100カ国以上に同国製のワクチンを供給してきたが、相手の国ではいま、欧米製の接種を希望する人が急増しているようだ。

「ファイザーが入荷したと聞いて飛んできた」。22日午後、ブラジル最大の都市サンパウロの薬局に大勢の市民が列をつくり、その中の一人が明かした。同市があるサンパウロ州は接種の直前までワクチンの製造元を明かしていないが、米ファイザー製を扱う接種会場がどこかという情報はSNS(交流サイト)で広がる。この日もファイザー製がなくなると、シノバック製には目もくれず会場を離れる人が目立った。

シノファーム製のワクチン接種が10日に始まったベトナム・ホーチミン市でも、接種会場でシノファーム製を拒否する人々の様子がSNSで拡散する。13日には同市トップのグエン・バン・ネン氏が「本人の同意がなければ(中国製を)接種しない」と表明し、接種を受ける人がワクチンの製造元を選べないというルールを撤回した。

世界保健機関(WHO)によると、いまのシノファーム製ワクチンの有効性は約78%、シノバックは50~84%。90%を超えるファイザーや米モデルナのワクチンに及ばない。中国の感染症専門家、鍾南山氏は20日の国際フォーラムで「中国の(既存)ワクチンはデルタ型への有効性が60%近い」と指摘し、デルタ型に対しては有効性が低下する可能性を示唆した。

インドネシアが調達したワクチンの約8割はシノバック製だ。医師の大半が接種したが、それでも感染による死者が確認された。7月には医療従事者向けにモデルナ製の追加接種を始めた。タイもシノバック製を接種した医療従事者にファイザー製などを追加接種する方針だ。

欧州諸国の多くが入国時に求める「ワクチン証明書」でシノバック製は対象外になっている。トルコでは16日から、中国製を2回接種した人でも、追加でファイザー製を2回接種できることになった。中国製を接種した後で欧州への渡航を求める市民に配慮する。(マニラ=志賀優一、サンパウロ=外山尚之、大連=渡辺伸)』