米、アフガン治安維持へタリバン頼み

米、アフガン治安維持へタリバン頼み 自爆テロ防げず
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『【ワシントン=中村亮】26日にアフガニスタンの首都カブールで起きた自爆テロは、空港周辺でのテロ防止をイスラム主義組織タリバンに頼るバイデン政権の苦境を映す。米政権はタリバンによる電光石火のカブール制圧を予測できず後手に回り、米兵13人を含む多数の死者を出す悲劇につながった。

米軍によると26日、カブールの国際空港の入り口付近で過激派組織「イスラム国」(IS)系勢力の戦闘員が自爆テロを仕掛けた。それに続いて複数の戦闘員が米兵やアフガン市民に対して銃撃した。空港に近いホテルでも爆発があり、少なくとも米兵13人が死亡、18人が負傷した。

自爆テロがあった空港の入り口付近は、米軍が国外退避を望むアフガン人らが武器を所持していないかどうかを確かめるポイントとして活用していた。

中東地域を管轄する中央軍のマッケンジー司令官は26日の記者会見で「武器の有無を確かめるには人に近づかざるをえない」と語り、米兵が自爆テロ攻撃を受ける可能性が高い地点だったと認めた。マッケンジー氏は「ISによる攻撃は続くと予想している」とも語り、追加攻撃に備えるとした。

なぜ複数のIS戦闘員が空港に近づけたのか。国際危機グループのイブラヘーム・バヒス氏は、空港周辺の治安維持をタリバンが担っていることを理由にあげる。

タリバンは空港周辺に検問所を設けている。アフガン人らが暴行を受けるなど空港への移動をめぐり負の側面が指摘されている半面、米軍は検問所をテロ組織の戦闘員流入を防ぐ施設として重視してきた節がある。

マッケンジー氏はタリバンに対し、ISなどによるテロの手口を指南していたと明らかにした。バイデン政権は空港に対するテロのリスクが高まったと判断すると、防止策としてタリバンがそれまでよりも空港から遠い地点に検問所を設けていると説明。戦闘員の流入を防ぐためタリバンと連携していることを伺わせた。

米軍が空港周辺に出て検問所を設けるべきだとの見方もあるが、実行すれば検問所で米軍に対するテロが起きるリスクが出てくる。バイデン政権は一部の米国民の移動支援を除き、空港外に米軍は出ないとの方針を貫いてきた。

バイデン大統領は26日、ホワイトハウスで記者団に対して空港周辺でのタリバンとの協力について「タリバンは彼らの利益のために動いている」と語った。タリバンはこれまでISを敵視して掃討を目指してきた。米国とタリバンはISを共通の敵とみなしており、協力できるとバイデン氏はみている。

だがバヒス氏は「タリバンは治安部隊でも政府軍でもなく反乱分子だ。米国はタリバンに多くの信頼を置くべきではない」と指摘する。

2001年9月に起きた米同時テロ後、当時のブッシュ大統領(第43代)は首謀者である国際テロ組織アルカイダのウサマ・ビンラディン容疑者を引き渡さなかったとしてタリバン政権を打倒した。そのタリバンを米軍に対するテロ対策で頼らざるを得ないところに米政権の苦しさがある。

この状況に陥ったのは、タリバンによるカブール制圧がバイデン政権の想定よりもかなり早く起きたことが根底にある。現状では米軍に対するテロのリスクを抑えるうえで最善の策がタリバンに頼ることだった。

米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は21年8月中旬の記者会見で「兵力30万人のアフガン軍がわずか11日間で消滅するとの報告は記憶していない」と指摘。アフガン戦争に従事してきたミリー氏にとってもタリバンの攻勢はサプライズであったことを認めていた。

アフガンには米国民1000人程度が残っているとみられ、テロを受けて今後の国外退避は不透明になっている。バイデン政権は31日までに米軍を撤収させた後に米国人らの国外退避に向けてタリバンと協力する構えを見せているが、具体策を示しておらず実効性も見えない。 』