日本は「北朝鮮の金づる」になってはならない

日本は「北朝鮮の金づる」になってはならない
過去の有償支援の精算だって必要だ
(2018/06/25)
https://toyokeizai.net/articles/-/226736

『6月12日にシンガポールで開かれた米朝首脳会談で北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長が「安倍首相と会ってもよい」と述べたと伝えられて以降、安倍晋三首相は日朝首脳会談に意欲を見せている。

22日に超党派の拉致救出議員連盟の古屋圭司会長らが経済支援などが拉致問題解決に先行しないように陳情した時も、安倍首相は「相互不信の殻を打ち破り、日本と北朝鮮が直接向き合い解決していかなければならない」と述べた。

拉致、核、ミサイルの3つの問題解決は国交正常化の前提であるというのが日本政府の見解で、2002年9月17日の日朝平壌宣言にも明記されている。また同宣言では、国交正常化を実現するにあたって、1945年8月15日以前に生じた事由に基づく両国およびその国民のすべての財産および請求権についてを相互に放棄するとの基本原則に従うこともうたっている。

北朝鮮は日本に200億ドル請求?

では日本は、北朝鮮への経済支援にいくら負担すべきなのか。

中央日報電子版によると、韓国のサムスン証券サーチセンターの北朝鮮投資戦略チームが13日に出した報告書では、北朝鮮が日本に請求できる金額を200億ドルと計算。この数字は2002年に日本側から提唱したといわれる「100億ドル」などを基礎に現在値に計算したものだという。

そもそも「100億ドル」が妥当な金額なのかは疑問だが、それを支払う前に考慮しなければいけないものがある。今の時点で日本が北朝鮮に持っている債権をどう扱うのかという問題だ。』

『たとえば日本は北朝鮮に1995年に有償35万トン、無償15万トンの米援助を行い、2000年には世界食糧計画(WFP)を経由する形で、50万トンの国産米を供出している。

こうした対北援助について河村たかし衆議院議員(当時。現・名古屋市長)が2006年2月13日に提出した質問主意書に対し、政府は「1996年以降」に限定して「国際機関等を通じて北朝鮮に対し無償の人道支援を行ってきた」と答弁。以下に具体例を示した。

1996年6月:525万ドル相当の食糧約1.5万トンおよび75万ドル相当の医薬品
1997年10月:2700万ドル相当の米約6.7万トンおよび約9400万円相当の医薬品
2000年3月:約38億4000万円相当の米10万トン
2000年10月:約1億6000万ドル相当の米50万トン
2004年4月:10万ドル相当の緊急医療物資
2004年8月:約4000万ドル相当の小麦5万トン、米4万8000トン、トウモロコシ1万8500トン、大豆5000トン、砂糖2000トンおよび食用油1500トン、500万ドル相当の基礎医薬品および医療器具、並びに約200万ドル相当の病院用キット

答弁書はさらに北朝鮮に対する有償支援については債務不履行の事実を認め、日本政府としては弁済を強く求めているものの、北朝鮮から理由を明らかにされない旨を認めている。

日本側は幾度も督促したが・・・

なお1995年の有償分35万トンは、日朝間に国交がないために食糧庁と朝鮮国際貿易促進委員会との間の契約となり、朝鮮民主主義人民共和国対外経済委員会委員長名の保証が付けられた。しかし日本側が幾度も督促したにもかかわらず、利子も含めて支払われた形跡はない。

そのような状態で一部の政治家の強い押しで決定したのが2000年の50万トンの援助米だが、そもそもWFPが支援として要請していたのが日本以外も含めて19万5000トンにすぎなかった。にもかかわらず、日本が単独でそれをはるかに上回る援助を行ったのは不思議以外の何ものでもない。

そのほかにも北朝鮮に対する援助米には疑惑が付きまとう。

1995年の援助米は価格の安い外国産米で賄われたはずだったが、その一部が国産米にすり替えられ、極秘に日本に戻されて、一部の政治家の資金となったという話が出た。また日本からの援助米について、当時権力を振るった金容淳書記(故人)は1995年8月に「米は畜産にも軽工業にも使えるので多いほうがよい」と発言したとも伝わっている。』

『要するに、日本からの援助米は飢えた北朝鮮の人民の口に入らなかったという可能性があるのだ。

こうした米支援が日本国民の負担で行われたのは言うまでもないが、いまなお負担額が増えているという実態がある。2000年にWFPを通じて北朝鮮に拠出されたのは高額な国産米だが、WFPに対しては安価なミニマムアクセス米として計上。その差額が国民負担になっているのだ。

これについて緒方林太郎前衆議院議員は2015年7月24日に、「ミニマムアクセス米の運営等に関する質問主意書」を提出。政府は「平成43年(2031年)度までに償還される」と答弁したが、返済は国際価格になる。

「日本はインドネシアと北朝鮮に米を貸し付けていますが、2015年度決算時点でその金額は1529億円にも上ります。その多くは北朝鮮に対するものだと思われますが、この赤字分の補填として、一般会計から年間105億円が投じられており、すべて国民の負担になっています」(緒方氏)

政治が「先走り」するとツケが残る

このような債務関係は、平壌宣言で相互に放棄することを認めた「1945年8月15日以前に生じた事由に基づく両国およびその国民のすべての財産および請求権」ではない。北朝鮮と国交正常化する際には、きちんと清算しなければならない問題だ。さらになぜこうした“援助”が行われたのかという当時の政治の構造についても、検証しなくてはならないだろう。

このような日本が北朝鮮に有する債権について、菅義偉官房長官は6月22日午後の会見で「我が国が一貫しているのはまず拉致、核、ミサイルの諸懸案を解決することで、それらが解決した後で経済交流を行う。そうした問題についてはその時点で検討していきたい」と述べた。

日本と北朝鮮には根深い問題が数多く横たわるが、これらはひとえに政治が問題を先送りしてきたツケが積もった結果といえる。こうした過去を教訓として、政治が先走りすることがないように願いたいものである。

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