抗体カクテル、活用急ぐ

抗体カクテル、活用急ぐ 東京など療養施設で投与開始
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『新型コロナウイルスの感染拡大を抑え込めない中、軽症・中等症向けの治療薬「抗体カクテル療法」の活用が始まった。医療現場では重症化を防ぐ効果が期待される一方、発症初期でなければ効果を発揮しないため、迅速に投与できる仕組みが欠かせない。軽症者が滞在する宿泊療養施設で活用しているのはまだ東京都などに限られ、医療機関などと連携した体制作りが急がれる。

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抗体カクテルは中外製薬が製造販売元で、2つの中和抗体を組み合わせた点滴薬。軽症や中等症の患者に発症後、原則7日以内に投与すれば重症化を防止する効果があるとされる。厚生労働省が7月に特例承認した。

広く活用できれば入院が必要な症状にまで至る人を減らし、病床逼迫を防ぐ効果も見込める。

実際に投与を始めた医療現場では、一定の効果を指摘する声が上がる。

十三市民病院(大阪市)では11日までに20代から80代の軽症・中等症患者24人に投与し、うち20人で症状が回復した。西口幸雄病院長は「重症化のリスクが大きく下がっている。解熱や倦怠(けんたい)感からの回復具合も早い傾向にある」と指摘する。

臨床試験(治験)では、入院や死亡のリスクが7割減少したというデータがある。

東京都では都立・公社病院に抗体カクテル療法の専用病床20床程度を確保する。今後、コロナ患者を受け入れる約170の「入院重点医療機関」のうち、120程度の病院でも使えるよう薬剤の確保を進めている。

ただ、重要なのは抗体カクテルをできるだけ発症後、早期に投与することであり、医療機関だけでなく宿泊療養中の感染者にも届くかが今後のカギになる。

実際に一部で取り組みが始まっている。

厚生労働省は13日、入院患者への投与に限るとしていた地方自治体向けの通知を改正し、宿泊療養施設などでの活用を可能とした。

都は13日、医師を常駐させる形で宿泊療養施設1カ所で抗体カクテルの投与を開始した。都の小池百合子知事は「新たな武器となる治療法として重症化を防ぐ効果が期待できる」と強調する。福岡県も16日にスタートし、大阪府も8月下旬には始める。

だが、こうした例はまだ限られている。宿泊療養施設での投与を進めるには、医師の常駐が欠かせないためだ。

抗体カクテルは投与24時間以内に重いアレルギー反応、アナフィラキシーが報告されている。厚労省は十分な経過観察ができる体制を確保するよう求めている。重症患者の対応のため医療機関は逼迫し、難しいとの声もあがる。

千葉県は宿泊療養での活用を検討する一方、医療機関の負担を考慮。宿泊療養者自身が医療機関に行って点滴することも視野に入れる。担当者は「現場の負担が最も軽く、現実的な方向で実施したい」と話す。

厚労省の集計によると、11日時点の自宅療養者は全国で約7万4千人。宿泊療養者は約5分の1の約1万5千人。感染者急増に伴い、希望しても宿泊療養に入れないケースも各地で起きている。

抗体カクテルの活用は重症化を防ぎ病床逼迫の改善につながる可能性がある。病院や宿泊療養施設など幅広い施設での投与に向け、医師の柔軟配置など自治体や医療機関の連携が不可欠となる。

新型コロナ患者の治療にあたる横須賀共済病院の長堀薫院長は「抗体カクテル療法はとにかく早く投与することが重要で、地域の医療人材の活用が不可欠だ」と指摘する。

十分な供給量の確保も欠かせない。薬剤は中外製薬の親会社スイス・ロシュなどが海外で製造し、年間あたり少なくとも200万回分の製造体制を見込んでいる。中外製薬は日本政府と2021年分の供給契約を結び、国の調達予定量は20万回分ほどとみられる。

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