民主主義、繁栄もたらせず タリバン復権招いた米国

民主主義、繁栄もたらせず タリバン復権招いた米国
アフガンの蹉跌 試練の世界秩序(上)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB152BM0V10C21A8000000/

 ※「選挙やって、大統領を選出しました。」と言うだけじゃ、「民主主義」の実現とは、言えんだろう…。

 ※ 大体、国会議員になって国政に参加したり(被選挙権)、そういう大統領や国会議員を選んだり(選挙権)するに足りる「資格」を備えた「国民」なのか…。

 ※ 空港に押しかけて、民間航空機の上に乗ったり、離陸する軍用機の車輪や尾翼に「掴まったり」している様子を見ると、「航空機」がなんで空中を飛ぶことができるのかの原理を、理解しているものとは思えない…。「自動車」と同じものだと、思っているような感じだ…。

 ※ そういうこと、じゃあな…。

『20年に及んだ米国のアフガニスタン戦争が事実上、幕を閉じた。米国の敗北とイスラム主義組織タリバンの復権は、民主主義の試練を象徴している。

「市民は家で過ごすしかない」。首都カブール在住の30代のアフガン人男性は17日、日本経済新聞の電話取材にこう答えた。タリバン進攻直後はレストランや商店が休業し、開いているのは一部の病院くらいだった。タリバンは街のあらゆるところをパトロールし、市民に監視の目を向け始めたという。

ブリンケン米国務長官が「これはサイゴンとは異なる」と否定しようと、1975年のベトナム戦争終結に重ねざるを得ない歴史となった。米世論が兵士と血税を投入し続けることを許さない中、20年かけても民主主義の豊かさをもたらせなかったことが敗因だ。

「飢餓のホットスポット」。世界食糧計画(WFP)などが3月に公表した報告書は、アフガンではアフリカなどの一部の国とともに飢餓が増加していると警告した。子どもの約半数は学校に通えていない。米国は実効性のある経済復興策を提示できなかった。

選挙に勝った勢力は米軍を後ろ盾に旧政権協力者への復讐(ふくしゅう)に走り、国の富をむさぼった。大統領のガニ氏が多額の現金とともに国外へ逃げたとの一部報道まで出た。

米国が貧困や経済発展に対応しなかった不作為が、タリバン復権という逆戻りを招いた。イスラム過激派は「みずからの手でアフガンから米国を放逐した」と宣伝をはじめており、過激派組織「イスラム国」(IS)などが今後勢いづく恐れもある。

米ソ冷戦終結時、少なくとも東欧市民の目には民主主義や資本主義が輝いて映った。ベルリンの壁崩壊で、民主化へ踏み出し、欧州の共同体に組み込むという外交上の戦略もあった。民主主義が共産主義に打ち勝ち、世界全体に広がるとの見方が台頭した。

しかし世界の民主化への流れは逆回転を始めている。

2010年代前半に中東地域で広がった「アラブの春」の民主化運動は多くの国で頓挫し、唯一の成功例とされたチュニジアでも経済低迷から政治不信が高まっている。

米国が21年中に駐留米軍の戦闘任務を終わらせる方針を示すイラクも豊かさを享受できていない。世銀によると、同国の米ドル建ての名目国内総生産(GDP)は13年をピークに低下している。

欧州連合(EU)内では、かつて共産国だったハンガリーのオルバン首相が強権体制を強める。直近ではLGBT(性的少数者)への差別的な政策を打ち出し、域内で摩擦を生んでいる。背景にはドイツやフランスとの経済格差が埋まらない不満がある。

アフガンでの米国の蹉跌(さてつ)は、民主主義が抱えている負の側面を映し出した。イスラム過激派を生んだ貧困や富の偏在、不公正などの土壌はそのまま残っている。民主主義陣営が問題を解決できなければ、大きな禍根を残すことになる。

(ドバイ=岐部秀光、馬場燃)

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伊藤さゆり
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究理事

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別の視点 EUは、2004年に中東欧の加盟を認めるにあたり、市場経済と民主主義、法の支配、人権の尊重というEUの基本的な価値の共有のため、EUの法規制への適合を進めることを条件としました。

加盟後も、基本的な価値を遵守することが義務づけられていますが、この記事にあるハンガリーのほか、ポーランドでも、法の支配の根幹である司法の独立を侵害し、EU法が遵守されない事態が生じています。他の中東欧諸国にも西側が「教師」のように振る舞い続けることに反発があります。

EU内では南北の経済力の格差が注目されることが多いものの、経済力と価値観をめぐる東西の格差も深まっており、統合の舵取りを難しくしています。

2021年8月18日 8:44いいね
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池内恵
東京大学先端科学技術研究センター 教授

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分析・考察 民主主義は制度や手続きであり、それ自体は世界のどこにでも多かれ少なかれある。アフガニスタンの土着の合議制度なども広い意味ではその一種だろう。

問題は、民主主義を通じて何を実現するか。民主主義を通じて個人の人権や自由といった近代的なリベラリズムの価値を実現するという目標が当然視され、米国の軍事力や富、西洋世界の先進性を背景にした指導力によって民主主義の制度を人権や自由といった価値とともに各地に植え付けられる、ポスト冷戦期の国際秩序において当然とされてきた基本動作が、アフガニスタンでは人口の数%の協力者以外には全く浸透せず、協力者にしても大部分は面従腹背していたことが暴露された。

2021年8月18日 8:12いいね
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渡部恒雄
笹川平和財団 上席研究員

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分析・考察 第二次世界大戦後、米国の軍事力と経済力が世界で圧倒的な力を持つようになり、かつソ連を中心とする社会主義陣営と対抗する上で、自国の優位性の正統性を誇示するため、米国は民主主義の理念を世界に広げる努力をしてきました。

冷戦終結後も中東欧の旧共産圏の国家に民主主義が広がり、またアラブの春でも中東を中心に民主化の波が押し寄せました。

しかし人々の暮らしに豊かさをもたらさなかったり、米国の軍事支援などが無理に支える民主化は持続的でないことを改めて見せつけられたのが、アフガニスタンの現状だと思います。民主主義自体の価値が否定されたわけではないのですが、世界のトレンドとして、民主主義の苦戦は続きそうです。

2021年8月18日 7:58いいね
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アフガン情勢
アフガニスタンでイスラム主義組織タリバンが首都カブールを制圧し、大統領府を掌握しました。米国は2001年の米同時テロをきっかけにいったんはタリバンを打倒しましたが、テロとの戦いは振り出しに戻ります。アフガニスタン情勢を巡る最新の記事をこちらでお読みいただけます。

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