ワタミ、創業者が前線復帰

ワタミ、創業者が前線復帰 コロナ苦境に募った危機感
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『ワタミの渡辺美樹会長兼グループ最高経営責任者(CEO)が12年ぶりに社長に復帰することになった。新型コロナウイルス禍で外食の再建がままならない中、自身に経営と執行の責任を集中し改革に取り組む。かつて「ワタミには1000%戻らない」とまで公言していた渡辺氏の前線復帰の決断はオーナー経営者の危機感を表している。

10月1日付で渡辺氏が会長兼社長に就任し、清水邦晃社長兼最高執行責任者(COO)は代表権を持つ副社長に就く。COO業務を分散し、居酒屋や宅配弁当、唐揚げ店などファストフード、海外事業といった8つの事業領域に事業責任者を据える。それぞれに意思決定権を持たせ、出店や新業態開発などのスピード感を速めるためだ。

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「想定よりも厳しい状況だ」。渡辺氏は出口の見えない苦境に危機感をあらわにしてきた。2022年3月期の外食事業の売上高はコロナ前の55%程度に回復する前提で営業黒字を達成するべく不採算店の閉鎖や工場再編など合理化を進めてきた。ただ、繰り返される緊急事態宣言の延長で、足元では25%程度で推移。最も打撃の大きい居酒屋業態に限れば10%強という極めて厳しい状況だ。

渡辺氏が政治活動に転身し経営から離れた2011年から程なくしてワタミの業績は悪化。労務問題や外食事業の不振から15年3月期に上場以来初の営業赤字に転落した。業績回復をミッションとして15年3月に社長に就いた清水氏は不採算店舗の閉店や08年に参入した介護事業の売却などを進めて2年後の17年3月期には営業黒字化を達成したが、営業利益でピークだった13年3月期(92億円)の水準は遠かった。

足元ではコロナ禍が外食事業を直撃。収束が見えない中で相対的にコロナに耐性のある焼き肉や唐揚げ業態の拡大、中国といった海外展開などを通じて収益体制を抜本的に改革する。祖業である居酒屋中心の事業モデルからの戦略転換を渡辺氏自らが担うことになる。
社長から副社長になる清水氏は人材開発の責任者も兼務する。ワタミのアルバイト出身である同氏は「ブラック企業」ともやゆされたワタミの働き方改革を進めてきた。有給休暇の取得推進や残業時間の削減といった取り組みを徹底。月あたりの平均残業時間を16年春時点の36.4時間から20年秋に26.1時間に減らす成果をあげた。

「から揚げの天才」100店舗達成セレモニーに出席したワタミの渡辺美樹会長(右)とテリー伊藤氏(7月、東京都板橋区)

渡辺氏の社長復帰で注目を集めるのが長男の渡辺将也氏の処遇だ。将也氏は今年4月、ナンバー3の地位である最高財務責任者(CFO)兼上席執行役員に就任し、事業承継の地盤固めが進みつつあるとの観測が流れた。ただ、ワタミの関係者によると、渡辺美樹氏は「CFOの実績をもっと積まないと(社長は)譲れない」と話しているという。

ワタミの21年4~6月期連結決算は、営業損益が20億円の赤字(前年同期は37億円の赤字)と、4~6月期としては2年連続の赤字が続く。日本政策投資銀行(DBJ)から優先株の第三者割当増資で120億円を調達して財務は改善したが、ワタミの株価は17日の終値で924円と、コロナ前の19年末(1297円)から3割下げている。創業者自らが手腕を発揮し、業績回復に道筋を付けられるか。正念場はこれからとなる。

(安藤健太)

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中村直文
日本経済新聞社 編集委員・論説委員

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分析・考察 コロナ以前から居酒屋の縮小を進め、持ち帰り店の拡大、焼肉業態の確立、換気対策の徹底に取り組んでいましたが、想定をはるかに超えた長期戦になりました。

ワクチン接種者にはビール無料なども掲げましたが、いっこうに経済は正常化しません。
政府の対応遅れ、デルタ株の猛威など、外食の苦境や我慢が無になっている印象です。営業規制をしている業種には、まさに災害級の支援が必要だと思います。

2021年8月18日 7:34いいね
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