【社説】日本の中国を巡る新たな現実

【社説】日本の中国を巡る新たな現実
岸防衛相が太平洋における米国の相対的衰退を認める発言
https://jp.wsj.com/articles/japans-new-china-reality-11629185002

『米国の最も重要なアジアの同盟国が、中国の軍事的台頭に関する懸念の声を高めている。日本の麻生太郎副総理は先月、中国による台湾侵攻が日本の「存立」を脅かす恐れがあると警鐘を鳴らした。今度は岸信夫防衛相が、西太平洋地域における米国の相対的な衰退と、その空白を埋めるために日本が軍事面で存在感を高める必要性があることを率直に認めた。

 この発言は、豪紙シドニー・モーニング・ヘラルドとのインタビューの中で行われたものだ。岸氏は、「米中の力関係の変化が『非常に目立ってきた』一方で、台湾を巡る軍事的争いが『中国に有利な方向に大きく傾いている』と述べた」と同紙は報じた。さらに、同氏は中国が「力と威圧を後ろ盾に一方的に現状を変えようとしている」とし、「われわれは自衛できる構造を構築しなければならない」と述べた。

 日本の政府当局者は通常、公の場での物言いが穏やかだが、中国の甚大な軍備増強は無視できなくなっている。軍事アナリストのトーマス・シュガート氏が作成した豪シンクタンク、ローウィー研究所の新しいリポートによると、中国は「ほとんどの尺度で世界首位のシーパワー(海洋勢力)」となっており、過去5年に中国が追加した軍艦は80隻であるのに対し、米国は36隻にとどまる。

…(※ 無料は、ここまで。)』

〔法人数(※ 国税庁の資料)〕

※ と言うことで、「資本金10億円以上」の会社(製造業、非製造業を含む)は、全体の0.3%くらいだ…。

※ そいつらが、巨額の「税金」を納めている…。

※ 国政上、何かと「優遇されている」のも、宣べなるかな…、だ…。

※ やはり、「10億円以上」は、「機械工業」が多いな…。「電気通信公益事業」とは、何だろう…。ドコモとか、ソフバンとかの「携帯キャリア」か…。

※「サービス業」とかは、漠然とし過ぎて、実態がよく分からんな…。

※ まあ、圧倒的に「株式会社」形態が多い…。

※ 「合名会社」も、2社あるな…。

危機後回復に「K字」格差 的絞った支援カギに

危機後回復に「K字」格差 的絞った支援カギに
コロナ予算 2年目の難題㊤
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA164EN0W1A810C2000000/

 ※『税収を押し上げたのは大手製造業だ。資本金10億円以上の製造業の営業利益はコロナ前の19年1~3月期を3割近く上回った。景気の回復で先行する米国や中国への輸出が伸びている。』…。

 ※ と言うことで、実は、税収は伸びているらしい…。

 ※ 「資本金10億円以上の製造業」なんて、全体の何割を占めるんだろう…。

 ※ まあ、一般庶民の「肌感覚」とは、かけ離れた話しだな…。

 ※ さりとて、「内需」が盛り上がるには、「ワクチン接種率」が上がらないと、どうしようもない…。

 ※ そこの肝心の「庶民層」「若者・中年層」が、「デマ」「風評」に左右されて、「ワクチン忌避」に走っている向きも、あるらしいからな…。

 ※ ヤレヤレな話しだ…。

『新型コロナウイルスの感染拡大下で2年目の予算編成が始まる。政府・与党内では衆院選をにらんだ経済対策を求める声が浮上する。経済の回復は業種によって差が開く「K字」の構図が鮮明で、支援策はメリハリが必要になる。2020年度から30兆円も繰り越した執行の目詰まりを解消し、成長につなげる効率的な配分が求められる。

財務省は22年度予算編成に向けて8月末、各省庁の概算要求を締め切る。当初予算でも21年度に106兆円と過去最大に膨らんだ危機モードがなお続く公算が大きい。

「もう限界だった」。東京都内で複数の居酒屋を経営する30代の男性は7月からの緊急事態宣言下で、都の休業要請に従わず酒類を提供した。今春までは要請に応じ、協力金や家賃支援の給付金を受け取っていた。それではしのぎきれなくなった。「道義的問題よりも事業の継続を優先せざるを得ない。支援がもう少し手厚ければ」と漏らす。

コロナ1年目の20年度は、家計消費が持ち家の家賃換算分を除き約224兆円と前年度から20兆円近く減った。ところが税収は60.8兆円と過去最高を更新した。緩やかに連動してきた二つの数字の分離は、経済の持ち直しが一様ではなくK字に割かれた実相を映す。

財務省の法人企業統計によると、資本金2000万円未満の非製造業は21年1~3月期の営業利益がコロナ前の19年同期より7割少ない。コロナで打撃を受けた中小飲食業はもともと赤字体質で法人税を払っていない場合が多い。苦境は必ずしも税収に反映されない。

税収を押し上げたのは大手製造業だ。資本金10億円以上の製造業の営業利益はコロナ前の19年1~3月期を3割近く上回った。景気の回復で先行する米国や中国への輸出が伸びている。

これまでコロナ対策は1人10万円の特別定額給付金や実質無利子・無担保融資など幅広い対象への支援が中心だった。救済策の長期化は企業が政策依存に陥り、生産性を低迷させるリスクと背中合わせ。2度目の予算編成は困窮者に的を絞る必要がある。

線引きは難しい。「飲食だけ支援が手厚いのはおかしい」。酒販店やエンタメ関連産業からは既に不満が漏れる。同じ業種でも、店舗数など規模の違いによる支援の過不足が不公平感を生む。

家計支援策も同様だ。20年春の給付金は当初は困窮世帯に限り、30万円を配る案が検討された。「額の大きさが不公平感を際立たせて反発を招いた」(財務省幹部)。結果、広く薄く10万円という方式に落ち着いた。

第一生命経済研究所の星野卓也氏は「『住民税非課税世帯』など政府が所得を基準にした区切りしかできず、それぞれの保有資産額を把握できない現状では、本当の困窮世帯に絞った政策はそもそも難しい」と指摘する。

支援の長期化はすでにひずみを生んでいる。企業の休業手当を支援する雇用調整助成金は中小企業が自己負担なしで1人あたり1日最大1万5000円受け取れる特例が続く。失業者の増加を抑えた半面、成長産業への転職の意欲までそいでいるとの指摘が絶えない。

雇調金は巨額の支払いが続き、すでに財源が底をつきつつある。雇用保険の積立金は19年度の4.5兆円から21年度の見込み額は0.2兆円まで減っている。

ここにきて再び感染が急拡大し、経済の持ち直しが鈍る懸念が強まる。必要な支援を維持・強化しながら、長くは続けられない危機対応の出口を探る必要もある。コロナ2年目の難題への解答が今後の予算編成では求められる。 』

「Air Force C-17 rescues hundreds of Afghans crowded onto cargo bay floor」

Chad Garland 記者による2021-8-17記事「Air Force C-17 rescues hundreds of Afghans crowded onto cargo bay floor」
https://st2019.site/?p=17326

 ※ 『『誰も後へは残さない』の著者であるマット・ゼラーは元陸軍軍人で、アフガンからの大量エバキュエーションが必要になるときがまちがいなく来るから政府は準備を頼むと、何年も前から具体的な計画書とともに提言を繰り返してきた。「誰も耳を貸してくれなかった」とゼラー氏。

 先月に本腰を入れておけばこんなザマにはならなかったのに、バイデン政府は、外聞が悪くなるからとおそれて、エバキュエーションをスローペースでしか進めさせなかったのだ。』…。

 ※ いつの世でも、現場の「肌感覚」に基づく提言は、「上層部」の「頭の切れるお方達」の「大所高所からの、ご判断」によって握り潰される…。

 ※ そして、その「失態」を覆い隠すための「広報」「宣伝」がなされ、そういう「取り繕い」に長けた人材が、出世して行く…。

 ※ どっかの外資に飲み込まれた自動車会社において、パワポによるプレゼンと、英語得意のヤカラばかり出世して、肝心要の「製品」が、全く「魅力の無いもの」に成り下がった事例が、いい例だ…。

『ハリドカルザイ空港から1機のC-17「グローブマスター3」がエバキュエーション飛行した。アフガン人640人を床に座らせて離陸した。土曜日。空軍が撮影したその機内写真は、サイトの『ディフェンスワン』が月曜日に特だね公開。

 その記事いわく、おそらくC-17がいちどに運んだ人間の数としては新記録になったろうと。

 航跡追尾ソフトによるとこの機体は、第436空輸ウイングに所属する。原隊所在地はデラウェア州のドーヴァー空軍基地。「リーチ871」というコールサインを使っていた。

 どうしてこんなに詰め込んだかだが、もともとこんなに乗せる予定はなかったという。
 しかし「C-17」のカーゴランプドアは完全に上げた状態にしてもまだ半分隙間があるという構造なので、その隙間からどんどんアフガン人が入ってきた。それを、米兵は敢えて阻止しなかったのだという。

 640人強のアフガン人は、最初の着陸地で降ろされた。

 C-17には102席の座席が備わっている。

 同機のクルーは、乗り込んだ総人数を800人だとカウントしていたようである。無線でそのように地上に伝えていた。

 2つのメディアは、1機のC-17が近隣某国の空港に着陸したとき、タイヤ収容スペースから「人体」がひとつ発見されたと言っている。
 ※荷室内を与圧しないC-17は、お客を積んでいるときは、それほど高く飛ばぬはずだが……。国境山地を越えるときに6000mくらいに上昇し、そこで凍死でもしたのだろうか。

 空港警固のために急派された部隊には、海兵隊も含まれている。火曜日には総勢4000人に増えただろう。
 空港内で米兵が射殺した武装アフガニスタン人は2名である。それは月曜日の事件であった。

 火曜日の情報。これから24時間は、1時間に1機の割で軍用機がカルザイ空港を離発着する。そして、毎日、5000人から9000人をエバキュエートするつもり。

 9機のC-17が、ひとばんで1000人の兵隊と必要装備を運んでくる。
 7機のC-17が、700人の脱出者(非アフガン人の諸外国人を含む)を運び出す。その700人の中に、165人の米国人が含まれる。

 7月後半、米軍機は2000人のSIV(特別移民ビザ)所有者を脱出させた。収容先はヴァジニア、テキサス、ウィスコンシン州で、バイデンの腹積もりでは総勢2万2000人の予定だった。

 『誰も後へは残さない』の著者であるマット・ゼラーは元陸軍軍人で、アフガンからの大量エバキュエーションが必要になるときがまちがいなく来るから政府は準備を頼むと、何年も前から具体的な計画書とともに提言を繰り返してきた。「誰も耳を貸してくれなかった」とゼラー氏。

 先月に本腰を入れておけばこんなザマにはならなかったのに、バイデン政府は、外聞が悪くなるからとおそれて、エバキュエーションをスローペースでしか進めさせなかったのだ。』

ストラテジーペイジの2021-8-17記事

ストラテジーペイジの2021-8-17記事
https://st2019.site/?p=17326

『アフガン内に派遣されているトルコ軍による観察。

 タリバンは、「われわれのカネを受け取るか、われわれに殺されるか」という選択を、アフガン軍警の幹部に迫り、その作戦が機能している。

 非パシュトゥーン系の軍警は、立哨していたチェックポイントから、武器だけ持って、立ち去った。

 アフガニスタン国民の12%はトルコ系であり、その保護に、トルコは関心がある。

 タジク族はトルコ系ではない。タジク族はアフガン国民の27%を占める。
 モンゴル系のハザラ族は8%を占める。ハザラ族はシーア派である。

 ガニ大統領以下、逃亡者を受け入れているのは、隣国のタジキスタンである。

 イランはことしに入って、アフガニスタン内のシーア派に武器を援助し、タリバンやアルカイダなどのスンニ派に対抗する組織に育てようとしている。

 トルコ系のアフガン難民がイラン国境に逃れてきた場合、イランは、その難民がトルコへ行くことを許している。

 8-16、トルコ航空機が、324人のトルコ国民を、カブールから運び出した。なおまだ500人のトルコ兵はカブール空港の警備についている。その他にどのくらいのトルコ市民が残留しているのかは不明。

 トルコ政府とタリバン幹部の間には既に連絡がある模様。

 8-7、トルコ政府は、トルコ兵が9月までカブール空港を警備してやってもよいが、アメリカ政府はそのコストとして年額にして1億3000万ドル払ってくれ、と求めた。』

「Uzbekistan in contact with Taliban, warns against border spillover」

AFPの2021-8-17記事「Uzbekistan in contact with Taliban, warns against border spillover」
https://st2019.site/?p=17326

『ウズベキスタンは火曜日にタリバンに警告した。国境には近づくなと。

 ウズベキスタン政府は月曜日に認めた。1機のアフガン軍用機が不法に越境し、ウズベキスタン国内に墜落したと。死者は出ていない。

 その1日前には、すでに84人のアフガン政府軍人がウズベキスタン国境を越えて逃亡してきていると。

 ウズベキスタンの法務長官は、月曜日、その前の政府発表を取り消した。すなわち、将兵を合計で600人近くを乗せた46機のアフガン航空機が越境してきたので強制着陸させた、というもの。

 アフガン軍用機が墜落したとされる現場はウズベキスタンのシェラバド州。国境のテルメズ市からは180kmである。
 現地民の目撃証言によると、機体の残骸がトラックによって運び去られたという。
 残骸は広い範囲に散らばっていたのを、ウズベキスタンの兵隊たちが拾い集めたという。

 AFP記者が取材した地元農民一家。納屋が焼けてしまった。墜落機から貰った炎のために。それは日曜日の夜の出来事であったと。爆発音が聞こえた。

 墜落のあと、地元民が救急車を呼んだ。そこにウズベキスタン国軍の兵隊たちも来た。
 日曜日の夜、病院に、2名のアフガン人パイロットが担ぎこまれた。飛行機からエジェクトして、その際に負傷したという。2名ともに、重症ではないという。

 ※スーパーツカノにはエジェクションシートがあるので、SAMに射たれても乗員は死なずに済むのである。

 隣のタジキスタン。火曜日の広報によると、すでに100人以上のアフガニスタン軍人が、南部のBokhtar空港へ逃げてきているという。

 タジク軍は8月17日から20日にかけて、中共軍と合同演習を予定している。山岳地帯での対テロが演目。

 タジキスタン国内には、ロシア軍の駐屯地もある。そこにはロシア兵が1000人、常駐している。』

台湾周辺で上陸演習実施 侵攻想定

台湾周辺で上陸演習実施 侵攻想定、回数増加―中国
2021年07月19日
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021071900714&g=int

『【北京時事】19日付の中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報英語版は、中国軍が台湾に近い福建省の沿岸地域で上陸作戦を想定した実弾軍事演習を16日に行ったと報じた。同紙は「(演習によって)米国や台湾独立派に対する警告を発した」という専門家の見方を載せた。

中国、東シナ海で「武器使用訓練」

 演習は陸軍と海軍が合同で実施。揚陸艦で運ばれた多数の水陸両用装甲車が沿岸を攻撃した。演習は夜間にも行われたという。

 一方、香港紙サウス・チャイナ・モーニング・ポスト(電子版)は19日、過去10年の中国海軍の演習を調べたところ、2017年以降、「台湾を奪う能力」を試すものが増えていると伝えた。海軍の演習回数が増える中、台湾侵攻を仮定した訓練に重点が置かれ、中国本土から離れた海域の演習は減っているという。

 中国海軍は17年に上陸作戦を担う陸戦隊の強化に着手。今年4月には初の強襲揚陸艦「075型」が就役するなど、上陸作戦能力の向上を急いでいる。』

台湾周辺で軍事演習 中国

台湾周辺で軍事演習 中国
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021081700668&g=int

『【北京時事】中国軍東部戦区は17日、台湾の南西と南東の海空域で統合作戦能力を確認するため実戦的な軍事演習を行ったと発表した。発表文は「今回の演習は台湾海峡の安全と国家主権を守る必要な行動だ」として、米国と蔡英文政権をけん制した。

台湾周辺で上陸演習実施 侵攻想定、回数増加―中国

 演習には艦艇、対潜哨戒機、戦闘機が参加。発表文は「最近、米国と台湾は頻繁に共謀して挑発を行い、台湾海峡の平和と安定を著しく損なっている」と主張。さらに「訓練を強化し、主権と領土保全を断固として守る」と強調した。』

極限のカブール、欧米は市民・協力者の救出に奔走

極限のカブール、欧米は市民・協力者の救出に奔走
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR17DE20X10C21A8000000/

『【ベルリン=石川潤、パリ=白石透冴】イスラム主義組織タリバンが全土を制圧したアフガニスタンで、欧米が自国民やアフガン人の協力者の救出に奔走している。米軍などが維持する首都カブールの空港に各国が輸送機などを派遣しているが、市街がタリバン支配下となる中で救出作戦は難航気味だ。協力者に犠牲が広がる事態になれば、民主主義陣営への大きな打撃となる。

ドイツのマース外相は17日、市民と協力者らをドイツに運ぶための「空の架け橋を建設する」と表明した。同日、ドイツ人、アフガン人ら125人が乗り込んだ輸送機がカブールの空港を飛び立った。次々に後続の飛行機を送り込み、できるだけ多くの市民・協力者を国外に退避させる方針だ。

「空の架け橋」は第2次大戦後の旧ソ連による西ベルリン封鎖時に米国など西側が生活物資を空輸した作戦名で、ドイツにとって特別な言葉だ。陸の孤島となった当時の西ベルリンとカブールの現状を重ね合わせたところにドイツ側の意気込みがにじむ。

ただ、作戦はいばらの道だ。タリバン支配下のカブール市街から協力者を空港まで連れてくることは簡単ではない。ドイツが最初に送り込んだ輸送機はわずか7人しか運び出せなかった。タリバンが想定外の速度でアフガニスタンを制圧したことで多くが逃げ遅れ、難しい状況に追い込まれている。

カブールの国際空港で米軍の輸送機と並走する人々=AP(16日)
英国は16日、緊急時に関係閣僚が協議するCOBRA(コブラ会議)で英国民と協力者の退避策を議論した。BBCによると、17日昼時点で300人をアフガニスタンから退避させた。だが、英軍幹部は英国人と英国と関係のあるアフガン人の計6000~7000人の退避を望むとの見解を明らかにした。

バイデン米政権は約2万人の協力者を対象に「特別移民ビザ」の発行手続きを進めている。米軍の撤収期限が8月末に迫り、米政権は経歴調査を終えていないアフガン人を第三国の米軍施設などにいったん移送し、手続きを進める方針だ。ポーランドも同国や欧州連合(EU)に協力していたアフガン人や家族ら45人に対し、人道的査証(ビザ)を発給した。
一方、米軍当局者はカブールの空港から1時間に1本のペースで飛行機を離陸させ、米国人や協力者を国外に運び出すことを目指していると明らかにした。一日あたりに運び出す人数を近く5000~9000人まで引き上げる計画という。

EUは17日、アフガニスタン情勢について協議する臨時外相会合を開いた。ボレル外交安全保障上級代表は会合後の記者会見で「EU市民とEUに協力したアフガン市民の脱出が優先課題だ」と語った。

ボレル氏はタリバンを新政府と認めるかについて「そうは言っていない。だが対話はしなくてはいけない」と言葉を濁した。「EUによるアフガンへの支援継続には条件を課す」と説明し、経済支援などと引き換えにタリバンに基本的人権などを重視させる可能性もほのめかした。

「EUは誤った政策を取っている。お願いだからタリバンを政府と認めないでほしい。昔に戻りたくない」。会見の最後にはアフガン人の女性記者が涙ながらに訴える場面もあった。

【関連記事】
・タリバン、人心掌握急ぐ アフガン新政権樹立へ
・アフガン難民、EUなど対応議論 人道との両立に苦慮
・アフガン空港、脱出求める市民殺到 7人死亡か
・バイデン氏「外交で人権確保」 アフガン撤収堅持 』

非難合戦は終わるか 新型コロナウイルスの発生源論争

非難合戦は終わるか 新型コロナウイルスの発生源論争
編集委員 滝順一
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD1370M0T10C21A8000000/

『米国で新型コロナウイルスの発生源をめぐる論争が再燃し激しさを増している。野生動物から人間に感染が広がったのか。中国湖北省武漢市にある中国科学院武漢ウイルス研究所からウイルスが流出したのか。1年前には「動物感染説」が大勢を占めた科学界からも「流出説」を排除せず調査を求める声が上がった。バイデン米大統領は5月26日、情報機関に対しウイルスの起源の再調査と90日以内の報告を指示した。まもなく公表される見込みだ。世界保健機関(WHO)も再調査に動こうとしている。

Nikkei Views
編集委員が日々のニュースを取り上げ、独自の切り口で分析します。

「嘘つきはあなたの方だ」。バイデン政権の首席医療顧問で、米国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長は強い言葉で言い返した。7月半ばの米上院公聴会で、共和党議員がファウチ氏にパンデミック(世界的大流行)の責任があるとほのめかしたためだ。

米上院公聴会で発言する米国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長(21年7月)=ロイター

アレルギー感染症研究所の上部組織である米国立衛生研究所(NIH)の資金が武漢ウイルス研究所の研究に使われていた。共和党議員は、ファウチ氏らが支援した研究がウイルスの流出源になったとファウチ氏を責めた。ファウチ氏は流出説には否定的な立場だ。2人の言い分はウイルスの発生源を巡ってまったく相いれない。共和党の一部の議員は流出説を裏付けるとする「最終報告書」を議会で公表している。

新型コロナウイルスが、感染力や病原性が強いウイルスを研究対象として扱う武漢ウイルス研究所から流出したとの仮説は、アウトブレーク(感染拡大)直後から取り沙汰されてきた。所員の感染などで市内に広がったとする見方だ。

当時のトランプ米大統領は、流出を隠蔽していると中国政府を強く非難、ポンペオ国務長官(当時)は「証拠もある」とした。中国は反発、非難合戦となった。

しかし米国の科学界は、新型コロナウイルスはコウモリ由来のコロナウイルスが突然変異し何らかの媒介動物を経て人間に感染するようになったと考える動物感染説を支持、研究所からの流出説を否定する声が大勢だった。ニューヨーク・タイムズ紙やワシントン・ポスト紙などリベラルな立場の主要メディアも科学界の見方を追認した。一部では流出説を科学的な根拠のない「陰謀論」として強く非難する見方すらあった。トランプ政権からは確固たる証拠は出なかった。

再燃した論争

こうして表面上は収まっていたかに見えた論争が2021年春以降、再燃した。今回は科学界からも流出説を退けずに「ありうるケース」として考えるべきだとの主張が前面に出ている。

米国の著名な免疫学者ら18人が米サイエンス誌(5月14日付)に、動物感染説と流出説の扱いが「バランスを欠いている」と指摘する書簡を公表し、公正な調査を求めた。「はっきりとした情報が得られていないのに(流出説はないと)決めつけるのは早すぎる」と、書簡に署名した米エール大学の免疫学者、岩崎明子教授は話す。

6月15日には、米国の科学、工学、医学の3つのアカデミーのトップが連名で「科学の原則に照らして新型コロナウイルスの起源について調査を求める」声明を公表した。米科学界の主流が流出説の可能性も排除しない姿勢を示した。

報道では、流出説の可能性を昨年から指摘してきた米ブロード研究所(マサチューセッツ州ケンブリッジ)のポスドク(博士研究員)、アリーナ・チャン氏に大手メディアのスポットライトが当った。同研究所は生命科学研究の有力拠点の一つ。チャン氏は新型コロナウイルスが人間の細胞に侵入することに最初から適応し過ぎているとし、研究所で培養されていた可能性を指摘した。若い研究者が科学界での孤立を恐れず自説を主張し続けたことを称賛する声がある。

ニューヨーク・タイムズ紙などの記者を長年務めたベテランのサイエンス・ジャーナリストであるニコラス・ウェイド氏が学術誌「ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ」に長文の記事を掲載。20年に流出説を否定した複数の科学者グループの主張には確かな根拠がないとし、流出説を陰謀論と決めつけて退ける考え方に疑問を呈した。同誌は人類滅亡までの残り時間を示す「終末時計」の発表で知られる。

米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、未公開の米情報機関の報告書に基づくとして、武漢ウイルス研究所の3人の研究者が19年11月に入院して治療を要するほど体調を悪化させていたと報じ、ウイルス流出を示唆した。こうした報道や論評はいずれも流出説を裏付ける確定的な証拠を示したわけではない。ただ流出説を根も葉もない陰謀論と片付けてきた流れを変えたのは間違いない。

なぜ今になって流出説への支持が高まってきたのか。医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)の記事は2つの要因を指摘した。一つはトランプ前大統領の退陣だ。前大統領が流出説を声高に唱え中国を非難していたことから、トランプ支持と受け取られたり党派対立に巻き込まれたりするのを避けたい配慮があった。その呪縛が解けた。

もうひとつはWHO国際調査団の不首尾だ。1月に武漢入りした調査団は中国政府の監視下に置かれ十分な事実解明ができたとは言えない。「極めて可能性が低い」と流出説を事実上否定した調査団の報告書に対し、WHOのテドロス事務局長も失望を隠さず再調査を指示した。

中国政府が調査団を受け入れたのは、感染拡大から1年以上経過した後だ。調査に非協力的な印象を与えた結果、中国政府による隠蔽への疑念を広げ、流出説への同調者を増した。流出説に否定的なファウチ氏も中国にはさらなる情報開示を求めている。

「機能獲得」への懸念も

また流出の可能性を口にする科学者には「機能獲得(ゲイン・オブ・ファンクション)」研究のリスクを懸念する勢力もある。遺伝情報に手を加えるなどしてウイルスの能力を変える研究のことで、ウイルスの性質を解明しワクチン開発につなげるため必要だが、危険なウイルスをつくりだす恐れが指摘されてきた。一部の科学者は新型コロナの場合に限らず、機能獲得研究への規制強化を求める文脈で流出説の精査を求めている。

武漢ウイルス研究所は、中国南部、雲南省の洞窟に生息するコウモリから多数のコロナウイルスを採取して調べる研究に取り組み、1万以上の試料を保有するとされる。機能獲得の手法で、コロナウイルスを人間に感染できるよう手を加え、新型コロナが生まれたのではないかとの疑いが指摘されている。

武漢ウイルス研究所でコロナウイルス研究を率いる石正麗研究員(2017年2月)=AP

これに対し、同研究所でコロナウイルス研究を率いる石正麗研究員は、ニューヨーク・タイムズ紙の記事(6月14日付)で「ウイルスの毒性を高めるような機能獲得研究はやっていない」と強く否定した。「機能獲得研究」という言葉の定義が科学者の間で違っている可能性もある。

石氏はまた流出説自体を昨年から否定し続けているが、十分なデータが公開されない現状では確認しようがない。新型コロナウイルスはこれまでに世界で2億人以上に感染し400万人以上の命を奪った。しかし発生源についてはわからないことばかりだ。

武漢ウイルス研究所はエボラ出血熱など危険な病原体を安全に扱える、最も高い安全基準の施設であるBSL(バイオセーフティーレベル)4の実験施設を備える。BSL4施設は中国に2つしかない。石氏らは03年の重症急性呼吸器症候群(SARS)のパンデミックを契機にコウモリ由来のコロナウイルスの研究をしていた。石氏は安全基準の緩いBSL2レベルの実験室でウイルスを扱っていたとしている。ただ研究所からウイルスが流出した明確な証拠はない。

一方、武漢市の華南海鮮卸売市場で動物から人間に感染が広がったと当初から考えられてきたが、中国政府の調査では新型コロナウイルスが検出された動物は見つかっていない。コウモリの生息地から武漢までウイルスを運ぶ役割の動物がいるはずだが、特定できていないのだ。

いったいどこからどうやって現れたのか。すべてを明らかにするのは非常に困難だろう。真相に近づくのにすらまだ時間がかかるのかもしれない。米国側が科学的根拠に基づく真相を突きつけたとしても、中国側が認めるかどうかもわからない。その間、「嘘つきだ」「陰謀だ」と不信の応酬が続くのでは、科学や医学への不信を増幅させるばかりだ。

「物事の不確実性が大きく、自らが属する社会システムが脅かされていると感じる時、人間は陰謀論を信じやすい」と社会心理学者の唐沢かおり東京大学教授は話す。誰かの悪巧みだとする見方は、理解し難い状況にわかりやすい解釈を与え、善悪をはっきりさせたいという心情にも沿う。

終わらない論争の背景には問題が政治化していることもあるが、米国社会の分断も影を落とす。またインターネットの情報環境は、自分が信じることに符合する情報ばかりが目に入る「確証バイアス」に陥りやすいこともあるだろう。

「未来のパンデミックを防ぐためにも新型コロナウイルスの起源を知ることは大切だ」とエール大学の岩崎教授は話す。今回のパンデミックの経験から学ばなければならないことは多い。短兵急な政治的論争を避け、データに基づき事実が明らかになるまで忍耐強く調べ続ける。そこにしか道はないように思える。

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詫摩佳代
東京都立大学 法学部教授

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分析・考察 発生源解明は次のパンデミックを予防する上で極めて重要です。このままだと「Covid-26とCovid-32が起こりうるだろう」とCNNのインタビューで米医学者ピーター・ホッテズ教授は語っていました。

問題はそのための調査が米中対立にどっぷり組み込まれていることです。科学的な論拠を積み上げ、中国に真相を迫る米国。その米国に米中対立の構図の中で反発し、自国のメンツを守ろうと奮闘する中国。この問題は米中に任せていては埒があきません。地道に科学的な証拠を積み上げ、中国に対して国際社会として、発生源解明の意義とそれにむけた協力を、必要があれば圧力をかけていく必要があると感じます。

2021年8月18日 9:23いいね
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ワタミ、創業者が前線復帰

ワタミ、創業者が前線復帰 コロナ苦境に募った危機感
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC176PH0X10C21A8000000/

『ワタミの渡辺美樹会長兼グループ最高経営責任者(CEO)が12年ぶりに社長に復帰することになった。新型コロナウイルス禍で外食の再建がままならない中、自身に経営と執行の責任を集中し改革に取り組む。かつて「ワタミには1000%戻らない」とまで公言していた渡辺氏の前線復帰の決断はオーナー経営者の危機感を表している。

10月1日付で渡辺氏が会長兼社長に就任し、清水邦晃社長兼最高執行責任者(COO)は代表権を持つ副社長に就く。COO業務を分散し、居酒屋や宅配弁当、唐揚げ店などファストフード、海外事業といった8つの事業領域に事業責任者を据える。それぞれに意思決定権を持たせ、出店や新業態開発などのスピード感を速めるためだ。

【関連記事】ワタミ会長、12年ぶり社長に復帰 外食再建へ構造改革
「想定よりも厳しい状況だ」。渡辺氏は出口の見えない苦境に危機感をあらわにしてきた。2022年3月期の外食事業の売上高はコロナ前の55%程度に回復する前提で営業黒字を達成するべく不採算店の閉鎖や工場再編など合理化を進めてきた。ただ、繰り返される緊急事態宣言の延長で、足元では25%程度で推移。最も打撃の大きい居酒屋業態に限れば10%強という極めて厳しい状況だ。

渡辺氏が政治活動に転身し経営から離れた2011年から程なくしてワタミの業績は悪化。労務問題や外食事業の不振から15年3月期に上場以来初の営業赤字に転落した。業績回復をミッションとして15年3月に社長に就いた清水氏は不採算店舗の閉店や08年に参入した介護事業の売却などを進めて2年後の17年3月期には営業黒字化を達成したが、営業利益でピークだった13年3月期(92億円)の水準は遠かった。

足元ではコロナ禍が外食事業を直撃。収束が見えない中で相対的にコロナに耐性のある焼き肉や唐揚げ業態の拡大、中国といった海外展開などを通じて収益体制を抜本的に改革する。祖業である居酒屋中心の事業モデルからの戦略転換を渡辺氏自らが担うことになる。
社長から副社長になる清水氏は人材開発の責任者も兼務する。ワタミのアルバイト出身である同氏は「ブラック企業」ともやゆされたワタミの働き方改革を進めてきた。有給休暇の取得推進や残業時間の削減といった取り組みを徹底。月あたりの平均残業時間を16年春時点の36.4時間から20年秋に26.1時間に減らす成果をあげた。

「から揚げの天才」100店舗達成セレモニーに出席したワタミの渡辺美樹会長(右)とテリー伊藤氏(7月、東京都板橋区)

渡辺氏の社長復帰で注目を集めるのが長男の渡辺将也氏の処遇だ。将也氏は今年4月、ナンバー3の地位である最高財務責任者(CFO)兼上席執行役員に就任し、事業承継の地盤固めが進みつつあるとの観測が流れた。ただ、ワタミの関係者によると、渡辺美樹氏は「CFOの実績をもっと積まないと(社長は)譲れない」と話しているという。

ワタミの21年4~6月期連結決算は、営業損益が20億円の赤字(前年同期は37億円の赤字)と、4~6月期としては2年連続の赤字が続く。日本政策投資銀行(DBJ)から優先株の第三者割当増資で120億円を調達して財務は改善したが、ワタミの株価は17日の終値で924円と、コロナ前の19年末(1297円)から3割下げている。創業者自らが手腕を発揮し、業績回復に道筋を付けられるか。正念場はこれからとなる。

(安藤健太)

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中村直文
日本経済新聞社 編集委員・論説委員

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分析・考察 コロナ以前から居酒屋の縮小を進め、持ち帰り店の拡大、焼肉業態の確立、換気対策の徹底に取り組んでいましたが、想定をはるかに超えた長期戦になりました。

ワクチン接種者にはビール無料なども掲げましたが、いっこうに経済は正常化しません。
政府の対応遅れ、デルタ株の猛威など、外食の苦境や我慢が無になっている印象です。営業規制をしている業種には、まさに災害級の支援が必要だと思います。

2021年8月18日 7:34いいね
18 』

民主主義、繁栄もたらせず タリバン復権招いた米国

民主主義、繁栄もたらせず タリバン復権招いた米国
アフガンの蹉跌 試練の世界秩序(上)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB152BM0V10C21A8000000/

 ※「選挙やって、大統領を選出しました。」と言うだけじゃ、「民主主義」の実現とは、言えんだろう…。

 ※ 大体、国会議員になって国政に参加したり(被選挙権)、そういう大統領や国会議員を選んだり(選挙権)するに足りる「資格」を備えた「国民」なのか…。

 ※ 空港に押しかけて、民間航空機の上に乗ったり、離陸する軍用機の車輪や尾翼に「掴まったり」している様子を見ると、「航空機」がなんで空中を飛ぶことができるのかの原理を、理解しているものとは思えない…。「自動車」と同じものだと、思っているような感じだ…。

 ※ そういうこと、じゃあな…。

『20年に及んだ米国のアフガニスタン戦争が事実上、幕を閉じた。米国の敗北とイスラム主義組織タリバンの復権は、民主主義の試練を象徴している。

「市民は家で過ごすしかない」。首都カブール在住の30代のアフガン人男性は17日、日本経済新聞の電話取材にこう答えた。タリバン進攻直後はレストランや商店が休業し、開いているのは一部の病院くらいだった。タリバンは街のあらゆるところをパトロールし、市民に監視の目を向け始めたという。

ブリンケン米国務長官が「これはサイゴンとは異なる」と否定しようと、1975年のベトナム戦争終結に重ねざるを得ない歴史となった。米世論が兵士と血税を投入し続けることを許さない中、20年かけても民主主義の豊かさをもたらせなかったことが敗因だ。

「飢餓のホットスポット」。世界食糧計画(WFP)などが3月に公表した報告書は、アフガンではアフリカなどの一部の国とともに飢餓が増加していると警告した。子どもの約半数は学校に通えていない。米国は実効性のある経済復興策を提示できなかった。

選挙に勝った勢力は米軍を後ろ盾に旧政権協力者への復讐(ふくしゅう)に走り、国の富をむさぼった。大統領のガニ氏が多額の現金とともに国外へ逃げたとの一部報道まで出た。

米国が貧困や経済発展に対応しなかった不作為が、タリバン復権という逆戻りを招いた。イスラム過激派は「みずからの手でアフガンから米国を放逐した」と宣伝をはじめており、過激派組織「イスラム国」(IS)などが今後勢いづく恐れもある。

米ソ冷戦終結時、少なくとも東欧市民の目には民主主義や資本主義が輝いて映った。ベルリンの壁崩壊で、民主化へ踏み出し、欧州の共同体に組み込むという外交上の戦略もあった。民主主義が共産主義に打ち勝ち、世界全体に広がるとの見方が台頭した。

しかし世界の民主化への流れは逆回転を始めている。

2010年代前半に中東地域で広がった「アラブの春」の民主化運動は多くの国で頓挫し、唯一の成功例とされたチュニジアでも経済低迷から政治不信が高まっている。

米国が21年中に駐留米軍の戦闘任務を終わらせる方針を示すイラクも豊かさを享受できていない。世銀によると、同国の米ドル建ての名目国内総生産(GDP)は13年をピークに低下している。

欧州連合(EU)内では、かつて共産国だったハンガリーのオルバン首相が強権体制を強める。直近ではLGBT(性的少数者)への差別的な政策を打ち出し、域内で摩擦を生んでいる。背景にはドイツやフランスとの経済格差が埋まらない不満がある。

アフガンでの米国の蹉跌(さてつ)は、民主主義が抱えている負の側面を映し出した。イスラム過激派を生んだ貧困や富の偏在、不公正などの土壌はそのまま残っている。民主主義陣営が問題を解決できなければ、大きな禍根を残すことになる。

(ドバイ=岐部秀光、馬場燃)

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伊藤さゆり
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究理事

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別の視点 EUは、2004年に中東欧の加盟を認めるにあたり、市場経済と民主主義、法の支配、人権の尊重というEUの基本的な価値の共有のため、EUの法規制への適合を進めることを条件としました。

加盟後も、基本的な価値を遵守することが義務づけられていますが、この記事にあるハンガリーのほか、ポーランドでも、法の支配の根幹である司法の独立を侵害し、EU法が遵守されない事態が生じています。他の中東欧諸国にも西側が「教師」のように振る舞い続けることに反発があります。

EU内では南北の経済力の格差が注目されることが多いものの、経済力と価値観をめぐる東西の格差も深まっており、統合の舵取りを難しくしています。

2021年8月18日 8:44いいね
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池内恵
東京大学先端科学技術研究センター 教授

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分析・考察 民主主義は制度や手続きであり、それ自体は世界のどこにでも多かれ少なかれある。アフガニスタンの土着の合議制度なども広い意味ではその一種だろう。

問題は、民主主義を通じて何を実現するか。民主主義を通じて個人の人権や自由といった近代的なリベラリズムの価値を実現するという目標が当然視され、米国の軍事力や富、西洋世界の先進性を背景にした指導力によって民主主義の制度を人権や自由といった価値とともに各地に植え付けられる、ポスト冷戦期の国際秩序において当然とされてきた基本動作が、アフガニスタンでは人口の数%の協力者以外には全く浸透せず、協力者にしても大部分は面従腹背していたことが暴露された。

2021年8月18日 8:12いいね
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渡部恒雄
笹川平和財団 上席研究員

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分析・考察 第二次世界大戦後、米国の軍事力と経済力が世界で圧倒的な力を持つようになり、かつソ連を中心とする社会主義陣営と対抗する上で、自国の優位性の正統性を誇示するため、米国は民主主義の理念を世界に広げる努力をしてきました。

冷戦終結後も中東欧の旧共産圏の国家に民主主義が広がり、またアラブの春でも中東を中心に民主化の波が押し寄せました。

しかし人々の暮らしに豊かさをもたらさなかったり、米国の軍事支援などが無理に支える民主化は持続的でないことを改めて見せつけられたのが、アフガニスタンの現状だと思います。民主主義自体の価値が否定されたわけではないのですが、世界のトレンドとして、民主主義の苦戦は続きそうです。

2021年8月18日 7:58いいね
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アフガン情勢
アフガニスタンでイスラム主義組織タリバンが首都カブールを制圧し、大統領府を掌握しました。米国は2001年の米同時テロをきっかけにいったんはタリバンを打倒しましたが、テロとの戦いは振り出しに戻ります。アフガニスタン情勢を巡る最新の記事をこちらでお読みいただけます。

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