韓国大統領選挙に早くも大国が介入

韓国大統領選挙に早くも大国が介入 中国は「貿易」で、米国は「通貨」で恫喝
https://www.dailyshincho.jp/article/2021/08161701/?all=1&page=1

 ※ 久々の鈴置さんの記事だ…。

 ※ 読んでおいて、ソンは無い…。

※ 袁世凱の肖像だそうだ…。

『中国と米国が韓国の大統領選挙に干渉する。「大国の間を右往左往したあげく滅びた李氏朝鮮の姿を思い出す」と、韓国観察者の鈴置高史氏は言う。

保守の最有力候補に「拒否権」
鈴置:2022年3月9日に投開票の韓国の大統領選挙。半年以上先の話というのに、自らの国益に合う政権を作ろうと、米中が動き始めました。

 まず、仕掛けたのは中国です。米韓同盟の堅持を訴えた、保守の最有力候補、尹錫悦(ユン・ソンニョル)前検事総長に「拒否権」を発動しました。

 7月14日、尹錫悦氏は中央日報のインタビューで親米路線を明確に打ち出しました。「<大統領候補インタビュー>尹錫悦氏『韓米同盟が隙間なく強固でこそ、中国も日本も韓国を尊重』」(7月15日、日本語版)から発言を引きます。

・韓国の外交安保は強固な韓米同盟から出発しなければならない点で韓米関係は定数。ところが文在寅(ムン・ジェイン)政府は韓米関係を変数にしてしまった。
・韓米関係には隙間があってはならず、それでこそ中国など他の国々がわれわれを尊重する点を忘れてはいけない。強固な韓米同盟の基本の上に、価値を共有する国家と協力関係を強化しなければならない。強固につながった国際的共助と協力の枠組みの中で対中国外交を行ってこそ「水平的対中関係」が可能。
・(中国が米韓に対し)THAAD(地上配備型ミサイル迎撃システム)配備撤回を主張するためは自国の国境付近に配備した長距離レーダーを先に撤収しなければならない。

 確かな米韓同盟の下、西側に残ってこそ、中国と「水平的な関係」を維持――中国の圧迫から逃れられる、と訴えたのです。典型的な親米保守の主張です。

 在韓米軍のTHAADに関しては、中国はこのレーダーが自国の脅威と言うが、それなら中国も韓国を監視するレーダーを撤去すべきだ、と中国の主張の矛盾を突いたのです。これも保守の一般的な言説です。

巨大な中国市場を捨てるのか?
 すると翌16日、邢海明・駐韓中国大使が尹錫悦氏への反論を中央日報に載せました。「韓中関係は韓米関係の付属品ではない」(日本語版)です。ポイントを引用します。

・韓米同盟が中国の利益を害してはいけない。私たちは歴史的に数千年の東方価値観を共有してきており、毎年貿易投資額は数千億ドルに達する。
・中韓関係は決して韓米関係の付属品ではなく、両国関係の発展は他の要素によって影響されてはいけない。
・米国が韓国にTHAADを配備したことは中国の安保利益を深刻に損ない、中国人民が不安を感じている点を強調したい。インタビューでは中国レーダーに言及したが、この発言を理解することはできない。韓国の友人から中国レーダーが韓国に威嚇になるという言葉を一度も聞いたことがないためだ。
・中韓両国は戦略的協力パートナー関係である以上、敵ではなく友好的な隣国だ。中国は防御的な国防政策を行ってきており、韓国を仮想の敵だと考えたことがない。

 邢海明大使の主張は中国の公式見解――米韓同盟を否定はしないが、中国の不利益になることは一切許さない――をなぞっています。

 しかし結局は「米韓同盟をやめろ」と言っているに等しい。米韓同盟の象徴たる韓国に配備された米軍のTHAADレーダーは中国の安保を損なう、と撤去を要求しているのですから。衣の下から鎧(よろい)をのぞかせた論文です。

 邢海明大使は最後の段落で「(大統領選挙は)韓国の内政であり大統領選走者は皆、私たちの友人だ」と書きました。「内政干渉」との批判が起こるのを予防したつもりでしょう。

 しかし、普通の韓国人がこの論文を読んだら「親米保守の大統領を選んだら、中国依存度の高い韓国経済を破綻させるぞ」と脅されたと感じるでしょう。少し前に、以下のくだりがあるからです。

・中国はすでに5億人に近い中産層の人口を有していて、今後10年間で22兆ドル規模の商品を輸入する計画だ。中韓貿易額はすでに韓米、韓日および韓-EU間の貿易額をすべて合わせた水準に近くなっている。』

『中国の尻馬に乗る左派
――なるほど!しっかりと韓国を脅していますね。

鈴置:もっとも、左派の与党「共に民主党」の宋永吉(ソン・ヨンギル)代表は内政干渉と中国を非難するどころか、中国と一緒になって尹錫悦氏を叩きました。

 マネートゥディの「宋永吉『にわか勉強では外交できぬ』…尹錫悦の『中国THAAD発言』叩き」(7月16日、韓国語)によると、以下のように語りました。

・THAADを配備した朴槿恵(パク・クネ)政権は中国に対し備えたのではなく北朝鮮用とし、その後も政府はこの見解を維持してきたのに、中国を狙ったものと自白したのは相当にまずい。

 この批判は明らかに筋違いです。「中国を狙った」と言い出したのは中国であり、尹錫悦氏は「それなら、中国のレーダーはどうなのか」と反問したに過ぎないからです。

 宋永吉代表は「中国も批判しているぞ」とは言っていませんが、中国大使を非難もせずに無理筋の尹錫悦批判に乗り出したのですから、中国の「尻馬」に乗ったと見なされても文句は言えません。

「韓国人の悪い癖が出てきたなあ」というのが率直な感想です。外国から内政干渉された際に怒るのではなく、その力を借りて国内の敵を潰そうとする。韓国人が自戒を込めて言う「外勢依存」です。これを見てとった外国は干渉の度を深めるでしょう。

130年ぶりの「袁世凱」

 保守系紙、朝鮮日報は社説「他国の大統領候補まで攻撃した中国大使 これに同調する与党」(7月17日、韓国語版)で、中国に対してだけでなく「外勢依存」の与党をも批判しました。

 中国の力が強まるに連れ、駐韓中国大使は宗主国から派遣された総督のように振る舞い出した、と韓国人は不満を強めています。

 朝鮮日報の中国専門家、宋義達(ソン・ウィダル)先任記者が書いた「130年ぶりに復活した『袁世凱の亡霊』…今度は大韓民国の主権を揺るがす」(7月31日、韓国語版)は、見出しだけ見ても韓国人の慨嘆が伝わってきます。「袁世凱の亡霊」とあるのは、この人物が1885年から1894年まで事実上の「朝鮮総督」だったからです。

 韓国外交部は3月17日、当局者の発言として「駐在国の政治家の発言に対する外国公館の立場表明は、両国関係の発展に否定的な影響を及ぼすことのないよう、慎重に行われる必要がある」と表明しました。

 反中ムードが高まる中、外交部も重い腰をあげたのです。が、中国政府に直接抗議する勇気は出ず、韓国記者に不満を漏らすにとどめたのでしょう。

 そんな弱気の韓国を、中国はかさにかかって攻め立てます。7月21日、中国外交部の定例会見で「駐韓中国大使の発言を内政干渉と考える向きが韓国にはあるが、どう見るか」との質問に対し、趙立堅報道官は「海外に駐在するすべての中国外交官は、中国の主要な国益に関し明快な立場を表明する責任がある」と答え、韓国の小声の抗議を一蹴したのです。

北京五輪で南北首脳会談

 さらに、8月6日のASEAN地域フォーラム(ARF)のオンライン外相会談で、王毅外相は8月10日に始まる米韓合同演習に関し「現情勢下で建設性を欠いている。米国がもし北朝鮮との対話を回復したいのなら、緊張を招くいかなる行動もすべきではない」と中止を求めました。中国外交部のサイト(中国語版)で読めます。これも選挙干渉の一端です。

――なぜ、合同演習が大統領選挙に影響するのですか?

鈴置:文在寅政権は合同演習を中止することで北朝鮮の歓心を買い、南北首脳会談に応じて貰う方針でした。首脳会談が実現すれば、来年3月の大統領選挙で左派候補に追い風が吹き、退任後の文在寅氏が監獄に行くリスクも減るとの計算です。

 左派が政権を取る――つまりは、親米保守派がさらに5年間、政権の座から追いやられるわけですから、中国にとってもありがたい話です。

 それに南北が首脳会談を実施するとしたら、来年2月の北京五輪の場を使う可能性が高い。習近平主席が南北のトップを呼んで和解させる映像は「米国に代わって朝鮮半島を仕切る中国」とのイメージを世界に広めるでしょう。もちろん、中国はこんな本音はチラとも見せず、「緊張緩和」の大義名分を前面に押し出しています。

――でも、米韓合同演習は始まってしまいました。

鈴置:合同演習が実施された後も中国は介入可能です。北朝鮮が米韓合同演習を嫌がるのは、極度の食糧不足からです。米韓が演習を始めれば、北朝鮮も対抗演習を実施する必要がある。軍にもきちんと食糧を供給できない今、下手に対抗演習をすれば反乱が起きかねない。

 中国には、食糧援助をエサに金正恩(キム・ジョンウン)総書記を北京五輪に呼びつける手があります。監獄行きを何とかして逃れたい文在寅大統領はいつでも、どこでもホイホイ応じるわけですし。』

『「李在明大統領」なら同盟破壊
――「中国の陰謀」を米国は黙って見ているのですか?

鈴置:中国の動きには神経を尖らせています。例えば、「Foreign affairs」に「A grand Bargain With North Korea」(7月29日)を寄稿したV・ブルックス(Vincent Brooks)前在韓米軍司令官。

 大統領選挙に関し「韓国は狡猾で陰険な勢力の標的になる可能性が高い」「大衆迎合的な候補者らが反米・反同盟的な政策を維持する兆しがすでに見える」と危機感を募らせました。

「反米・反同盟で大衆に迎合する候補者」とは、左派候補の中で一番人気の李在明(イ・ジェミョン)京畿道知事のことでしょう。米国が最も警戒する候補者です。ただ、米国は中国のように露骨に圧力をかけるのではなく、水面下で動くと思われます。

「面従腹背の文在寅 ソウルに戻ると即、金正恩に“詫び状” 米国でも始まった『嫌韓』」でも指摘しましたが、アジア専門家のG・チャン(Gordon Chang)氏は「米国は韓国の大統領選挙に介入する力はない」としつつも「何もしないことで結果を出せる」と主張しました。

「文在寅・野たれ死に」作戦
 米政治専門メディア『The Hill』に寄稿した「Bad Moon falling: South Korean leader falters in summit with Biden」(5月24日)から引用します。

・Washington cannot be seen as interfering in next March’s presidential contest. Nonetheless, Biden can influence the outcome by just doing nothing.

 要は「安易な米朝交渉など文在寅政権に点数を稼がせることをしなければ、韓国の左派政権に終止符を打てる」との意見です。

 米国との緊張を激化させる核・ミサイル実験に、食糧難の北朝鮮は動きにくい。それなら「北」はとりあえず放置する一方、「南」の反米左派政権の除去に動いた方が合理的です。反米左派が執権する韓国こそが対北交渉のかく乱要因となり、また、対中包囲網作りの障害物になっているのですから。

 米朝交渉に慎重なところから見て、バイデン政権も「反米左派政権を野たれ死にさせ、次の芽も摘む」路線を採用したと思われます。文在寅政権が米韓合同演習をいかに嫌がろうと実施して、南北首脳会談の可能性を閉ざしたのも「野たれ死に」路線の一環でしょう。

韓国の接種完了者は日本の半分
――中国が北京五輪を舞台にした南北首脳会談を主宰し、韓国の左派支援に動いたら?

鈴置:米国は搦め手から「左派候補には投票するな」と韓国人に警告を出せます。今なら、新型コロナのワクチンの供給を絞ればよいのです。

 実際、その作戦は発動済みに見えます。日本と比べると、国交のない台湾と比べてさえも米国は韓国へのワクチン供給に冷淡です。韓国では7月以降、感染者が急増するというのに、ワクチン不足により接種が足踏みを続けています。

 英オックスフォード大学の「Our World in Data」によると、8月14日時点で日本の接種完了者は全人口の36・70%。これに対し韓国は18・99%と大きく差が付いています。

 1回でも接種した人は日本が48・82%、韓国が43・63%とさほど差はありません。韓国政府が2回目の接種を考えずに、手持ちのワクチンを打ちまくって「見せかけの接種率」を上げようとしたためです。

 その結果、韓国ではワクチン輸入が滞るたびに接種が1日数万回に留まったうえ、2回目の予約が大量にキャンセルされました。政府は1回目にアストラ製ワクチンを接種した人に対しても2回目にはファイザー製を打ったり、接種の間隔を本来の3週間から6週間に延ばすなど苦肉の策に走っています。』

『『ワクチン不足で支持率が急落
「韓国は世界で最高の防疫体制を持つ」との文在寅政権の宣伝を信じ「K防疫」と自己陶酔していた韓国人も、ワクチン不足が表面化すると、さすがにおかしいと気付きました。メディアは政府に対し怒りをぶつけています。

 中央日報は「韓国、ワクチン接種完了率でOECD最下位…コロンビアにもリードされた」(8月9日、日本語版)で、韓国の接種率がOECDで最下位であるうえ、世界の平均に達しない唯一のOECD加盟国でもある、と嘆きました。

 朝鮮日報は「モデルナがパンク…「問題無し」と言っていた韓国は空手、日本はファイザーに直行して代替」(8月14日、韓国語版)で、日韓の接種率の差は両国政府のワクチン獲得能力の差である、と断じました。

 読者の書き込み欄も「無能な文在寅政権」への非難一色です。中には「日本と異なり、米国との外交的な立地条件が異なる。文在寅の自業自得だ」といった、韓国の反米路線がワクチン不足の原因だと指摘したコメントもありました。

 韓国ギャラップの8月第2週の世論調査(調査期間は8月10―12日)によると、文在寅大統領の職務遂行への肯定的な評価は前週の41%から36%へと一気に5%ポイントも急落しました。否定的な評価は51%から53%に上昇しています。もちろん、ワクチン不足が原因です。

新たな悪材料「メモリー不況」
――しかし、大統領選挙までには韓国でも希望者全員にワクチンを打ち終わるでしょう。

鈴置:その時は「通貨」で攻める手があります。「『金融危機がやって来る』と叫ぶ韓国銀行 年内利上げを予告、バブル退治も時すでに遅い?」で詳しく説明しましたが、韓国は通貨危機に陥る可能性が高まっている。

 その際、米国は見殺しにすることによって「反米政権は許さない」とのメッセージを韓国人に送ることができるのです。金泳三(キム・ヨンサム)政権末期、1997年の通貨危機が最たるものですが、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権に対しても国の格付けを下げて脅したことがあります(『米韓同盟消滅』第2章第4節「『韓国の裏切り』に警告し続けた米国」参照)。

 韓国は新型コロナで景気が失速するのを防ぐために2020年春以降、金融を猛烈に緩めた。その結果、株価が日米以上に急騰。もともと投機の対象になっていた不動産はさらに値上がりしました。バブル状態です。

 しかし、新型コロナの流行が下火になるとともに、世界的な金融緩和の時代が終わるとの見方が次第に広がりました。韓国バブルを目指し流れ込んでいたおカネが一気に米国に逆流しかねない。これを恐れた韓国銀行が今年初めから国民に「株を買うな。大けがするぞ」と呼びかけていたのです。

 ここに新たな悪材料が加わりました。8月中旬以降、メモリー不況に突入するとの見方から、韓国株・ウォン売りが始まったのです。予想外の出来事でした。

10カ月ぶりのウォン安
「韓国売り」の引き金となったのは米投資銀行、モルガン・スタンレーが発表したレポート「Memory-Winter is coming」(メモリーの冬がやって来る)」でした。

 なぜ、メモリーの値崩れが予想されるのか――。理由は大きく分けて2つです。まず、新型コロナによる巣ごもり需要が一段落し、パソコン向けメモリーの在庫が積み上がってきたこと。さらに、ロジックの供給不足により完成品の生産は未だ低迷しており、それに組み込むメモリーの需要も頭打ちとなっているからです。

 世界中でメモリーを製造する企業の株が売られました。ことに大きな影響を受けたのは韓国でした。この分野で世界1位の生産量を誇るのはサムスン電子、2位はSKハイニックスです。

 8月12,13日の2日間で外国人投資家は前者を4兆ウォン、後者は1兆ウォン売り越しました。その結果、2日間でそれぞれの株価は5・23%、3・79%下がりました。

 この2社は韓国証券市場で時価総額1位と2位の超大型株です。KOSPI(韓国総合株価指数)も12日は前日比0・38%、13日は1・16%も下げました。

 それにつれてウォンも売られ、8月13日は1ドル=1169・0ウォンと10カ月ぶりの安値を付けました。昨年末の1086・3ウォンと比べ7・6%、週初の8月9日と比べても2・4%安です。

反米政権が呼ぶ第2のIMF危機
――このまま「韓国売り」が本格化するのですか?

鈴置:それは分かりません。金融監督院の発表によると7月、外国人は上場株式を3兆7780億ウォン売り越しましたが、上場債券は9兆2280億ウォン買い越しています。まだ、「韓国を見限った」とは言い切れないのです。

 ただ、韓国金融市場のリスク要因がさらに増えた、との認識が韓国人投資家の間にも深まったのは事実です。朝鮮日報は「『3本の矢』が突き刺さる韓国…ウォン・ドル相場、10カ月ぶりの安値」(8月13日、韓国語版)で、テ―パリングとワクチンの接種不足に加え、メモリー不況がリスク要因に浮上したと断じました。

 この記事には読者が「文在寅や李在明のようなポピュリズム売国奴のために第二のIMF危機が来るだろう」と書きこみ、多くの賛同を得ています。李在明氏も文在寅氏と同様、反日反米路線で人気を得てきました。米国はそんな左派政権の韓国を許さないだろう、との悲鳴です。 「メモリー不況説」が米国のお仕置きのムチをより強力にすることは間違いありません。

核武装の準備を完成

――韓国は反米政権を続けるのか、それとも親米政権に戻るのでしょうか?

鈴置:韓国人にとって悪魔の選択でしょう。反米を続ければ米国に叩かれる。親米に戻れば中国に叩かれる。どちらを選んでも不幸な未来が待っているのです。これまでは双方にいい顔をする二股外交で誤魔化してきましたが、米中対立が激しくなった今、そうはいきません。

 朝鮮半島を舞台に海洋勢力と大陸勢力が覇権を争った19世紀末から20世紀初めが再現したのです。当時、李氏朝鮮は清、ロシア、米国、日本と庇護してくれる国を探してさまよったあげく、どの国からも信頼を失い、最後は滅びました。

 韓国人は核武装中立を選ぶかもしれません。「昔は力がなかったから大国にいじめられた。だが、21世紀の韓国は核兵器を運用する経済力を付けた。核さえ持てば中立が可能だ」と心の底で考えている韓国人が案外と多いのです。

 8月13日、韓国海軍は初めてSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)を撃つための垂直発射管を備えた潜水艦を就役させました。この「島山安昌浩」(オサン・アンチャンホ)は3000トン級と大きくはありませんが、6基のSLBMを撃てると韓国紙は伝えています。

 核保有国にとって、敵の先制攻撃に耐え核弾頭を載せた弾道ミサイルを撃ち返せる潜水艦は必須の兵器です。核弾頭は韓国の技術水準から6カ月もあれば開発できると見られています。ついに韓国は「いつでも核保有国になれるぞ」とのメッセージを世界に発したのです。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)

韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95〜96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

デイリー新潮取材班編集 』