米の人種多様化、分断加速も

米の人種多様化、分断加速も 20年、白人初の減少
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN130IS0T10C21A8000000/

『【ワシントン=鳳山太成】米国の人種構成の多様化が一段と進んでいる。12日発表になった2020年の国勢調査結果によると、白人の人口が10年前に比べて2.6%減り、史上初めて減少した。米国の人口構成の変化は社会の分断を一層深める恐れもある。

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10年に1度の国勢調査で、白人(中南米系のヒスパニックをのぞく)は1億9170万人で、10年の調査に比べて512万人減った。全人口3億3145万人に占める比率は58%と6割を切った。

大都市ロサンゼルスを抱える西部カリフォルニア州は白人の比率が35%と約5ポイント下がり、39%のヒスパニックが初めて多数派になった。人口が増えた地域は都市部に集中しており、仕事を求めて流れこむ人たちが人種構成に変化をもたらしている。

白人が減る背景には少子高齢化がある。米ニューハンプシャー大のケネス・ジョンソン教授(人口学)は「白人は少数派(黒人やヒスパニック)に比べて高齢で、ベビーブーム世代の死亡が今後も増える。出産年齢の白人女性が減り続けるとともに、低い出生率が白人が生まれる数を減らしそうだ」と今後も同じ傾向が続くとみる。

米国で存在感が高まるヒスパニックは23%増えて6208万人と全人口の19%を占めた。全人口の増加分(2270万人)は51%がヒスパニックによるものだ。

南部テキサスや西部アリゾナなど南部国境沿いの州を中心にヒスパニックが移り住み、さらに子供を産んで増える構図だ。米疾病対策センター(CDC)によると、15~44歳の女性1000人当たりの出産数はヒスパニックが63人と白人(53人)を上回る。

多様化が進み、人種や民族でひとくくりにするのも難しくなっている。2つ以上の人種を申告した人は3385万人と10年前の4倍弱に膨らんだ。両親がインド、ジャマイカにルーツを持つハリス副大統領は黒人でありアジア系でもある。

米国は同時に人口成長の鈍化も進む。米人口の伸び率は7.4%と大恐慌期を含む1940年調査(7.3%)に次ぐ低水準にとどまった。今回の調査は新型コロナウイルスによる死者急増の影響はない。

人口構成の変化は長期的には民主党に有利といわれる。20年の米大統領選で黒人の87%、ヒスパニックの65%、アジア系の61%がバイデン大統領に投票した。共和党は各州で非白人が投票しにくくなるよう制度変更を進めている。

短期的には共和党に追い風が吹くとの見方もある。国勢調査の結果は22年の中間選挙以降に活用され、テキサスなど同党が優勢な州では人口で配分される下院議席が増える。同党に有利になるよう選挙区の区割りを決める動きも予想される。

多様化の陰で人種差別問題も根深い。新型コロナウイルス禍でアジア系への憎悪犯罪が多発した。アジア系は全体の6%を占め、伸び率では36%と最も大きい。20年の白人警官による黒人殺人事件は黒人差別への激しい抗議運動を引き起こした。

米国勢調査局は17年に、白人が40年代半ばに少数派になると予測した。米ピュー・リサーチ・センターの20年の世論調査よると、民主党支持者では人種の多様化への肯定派が否定派を34ポイント上回ったが、共和党支持者は否定派が10ポイント多かった。

少数派に転落しつつある白人の焦りが、移民排斥を唱えるトランプ前大統領を誕生させたとの指摘もある。米国社会の分断が解消に向かう兆しは乏しい。』