「パレスチナ抜き」に限界

「パレスチナ抜き」に限界 米仲介の中東正常化発表から1年
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021081300690&g=int

『【エルサレム、ワシントン時事】米国のトランプ前大統領が、中東のイスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)の国交正常化を電撃的に発表してから13日で1年。歴史的に対立してきたイスラエルとアラブ諸国の米国の仲介による正常化はその後も続いたものの、今年1月の米政権交代で勢いは失速。中東和平の要であるパレスチナ問題について解決の見通しが立たない中、アラブ側が二の足を踏んでいるのが現状だ。

 ◇役者去る

 昨年8月以降、対イスラエル関係で正常化に動いたのはUAE、バーレーン、スーダン、モロッコの4カ国。UAEとバーレーンは9月15日、米ホワイトハウスでイスラエルと共に正常化に関する調印式に臨み、トランプ氏は10月にはスーダン、12月にはモロッコが正常化で合意したと発表した。

 トランプ氏娘婿のクシュナー前大統領上級顧問やイスラエルの対外情報機関モサドのコーヘン前長官は合意に先立ち、イスラエルとアラブ諸国の間を繰り返し往来。アラブ諸国の中でも、イスラエルよりもイランに敵対意識が強い国や、対米関係の改善・発展に意欲的な国が、正常化に前向きな対応を示した。

 トランプ氏とイスラエルのネタニヤフ前首相は一連の合意を「歴史的だ」と自賛し、それぞれ自らの外交実績としてアピール。一方、イスラエルの占領下に置かれたまま、和平の動きから取り残される形となったパレスチナは、一連の合意を「大義への裏切りだ」(アッバス自治政府議長)と非難した。

 米国ではトランプ氏が昨年11月の大統領選で敗北し、今年1月にバイデン政権が発足した。イスラエルでも政局混乱の末、6月にネタニヤフ氏が退陣し、ベネット首相が就任。クシュナー氏やコーヘン氏らを含め、「役者」は去った。

 ◇ほかに優先課題

 クシュナー氏は米紙ウォール・ストリート・ジャーナルへの寄稿で「オマーンやカタール、モーリタニアなどが合意に加わる寸前だった」と指摘した。これに対しバイデン政権は、イスラエルとアラブ諸国との国交正常化支持を表明する一方で、具体的な仲介の動きは見せていない。中国やロシアとの大国間競争を重視し、中東情勢ではイラン核合意の維持に向けた交渉を最優先課題と見なしていることが背景にある。

 また、国務省のプライス報道官は「(正常化合意は)イスラエル・パレスチナ和平の代替にはならない」と強調。バイデン政権は、前政権下で悪化したパレスチナとの関係改善に取り組んでおり、パレスチナを置き去りにする正常化には慎重な構えを示している。

 アラブ諸国の中で主導的な立場にあるサウジアラビアは、サルマン国王がパレスチナの立場に同情的な姿勢を取っている。極右政党出身のベネット首相はこれまでのところ新型コロナウイルス対策など内政課題を重視し、パレスチナ和平で慎重な姿勢を貫く見通しで、サウジやほかのアラブ諸国が正常化に応じるのは難しい状況だ。』