米中、「対話ルート」手探り

米中、「対話ルート」手探り 国防長官は共産党幹部重視
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【北京=羽田野主、ワシントン=中村亮】米国と中国が不測の事態に備えた対話ルートの構築を巡って神経戦を繰り広げている。オースティン米国防長官は習近平(シー・ジンピン)国家主席と近い共産党幹部とのパイプづくりを重視するが、中国は慎重な姿勢だ。

米国防総省のカービー報道官は11日の記者会見で、米国防長官の最も適切な中国の対話相手は中央軍事委員会副主席との認識を示した。「中国との重要な問題での議論という目的においては副主席レベル(が適切)であると明確に言ってきた」と述べた。主席の習氏に次いで軍のナンバー2に当たる許其亮副主席を指しているとみられる。

米国防長官はこれまで中国国務院(政府)に属する国防相と頻繁に対話してきたが、カービー氏は共産党幹部との関係を重視する立場を示した。中国は政府より党が意思決定の主導権を握る。習氏への権力集中が進むなかで国防相と対話しても「あまり意味がない」(元米国防総省高官)との見方が米国で目立つ。

米CNNテレビによると、バイデン政権は台湾有事など米中間の紛争リスクを低減する取り組みの一環で緊急連絡の手段としてホットラインの構築を検討している。7月時点では正式に中国に提案していない。

ホットラインができれば、バイデン政権や国家安全保障チームの高官は習氏やその周辺に暗号化した電話やメッセージを発信できる。突然の軍の動きの情報を共有したり、サイバー攻撃について警告を発したりすることが可能になる。ホットラインの設置構想はオバマ政権のころから浮上していた。米中は軍同士の意思疎通の枠組みはあるが、実際には機能していない。

ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)でアジア政策を束ねるキャンベル・インド太平洋調整官は5月に「米中にはホットラインが確かにある。何回か使おうとしたが、何時間も誰も出ないままだった」と明かしている。

米国と旧ソ連の冷戦下では「赤電話」と呼ばれるホットラインができた。1960年代のキューバ危機に際して米国は迅速な意思疎通が不可欠と判断して作った。バイデン政権は中国を旧ソ連に代わる「唯一の競争相手」と位置づけており、軍事大国化する中国と非常時にやりとりする重要性が高まっている。

米中国防当局は2008年にホットラインの開設を巡る協定を結んだものの、台湾有事のような非常時には首脳同士の決断が求められる場面もでてくるとみられる。

習指導部は米国とのホットライン開設に慎重姿勢をみせる。中国外務省の趙立堅副報道局長は7月15日の記者会見で「中米間にはすでに多くのホットラインがある。長い間、重要な役割を果たしてきた」と発言し、消極的な考えを示した。

中国の外交筋は「バイデン氏は電話をかけたとたんに新疆ウイグル自治区の人権問題で中国を非難するのではないか。政治的アピールのためならいらない」と話す。

中国は台湾を巡る米国の関与に「内政干渉」と猛反発している。海・空・ロケット軍などを増強し、米軍の影響力の排除をめざす。いまほしいのは時間だ。ホットラインの開設は米国の「介入」機会を増やすだけとみている。

中国国防省の報道官は5月27日の記者会見で「米国はホットラインの増設をいう一方で、アジア太平洋の軍事力配備を絶えず強化している。故意に艦艇や航空機の危険接近の事態を作り出している」と述べた。米国が対中軍事圧力を緩和すべきだと批判した。

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