コロナ発生源で応酬、米共和党「武漢から」

コロナ発生源で応酬、米共和党「武漢から」 中国は反発
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『【大連=渡辺伸、ワシントン=中村亮】新型コロナウイルスの発生源を巡って、米中が火花を散らしている。米国は野党・共和党が「中国の研究所から流出した証拠がある」と主張し、バイデン米大統領の指示で別の調査も進む。中国は対抗措置として米起源説を持ち出して国内外で宣伝工作を展開し、情報戦の様相を呈してきた。

「コロナウイルスは中国湖北省武漢市の中国科学院武漢ウイルス研究所から流出した。多くの証拠がある」。米下院外交委員会の共和党トップ、マコール議員らは8月1日に発表した報告書で主張した。

報告書では武漢の研究者らが誤って感染し、ウイルスを外部に広げた流出説を裏付ける理由を列挙。「19年9~10月、研究所近くの病院を訪れる人が急増した衛星写真がある」「19年9月、研究所でウイルスに関するデータベースが説明なく削除された」「研究所の空調設備には不備がある」などとした。

米国では別の調査も進む。バイデン氏は5月、研究所からの流出説を含め、コロナの起源を調査し、90日以内に報告するよう情報機関に指示を出した。将来のパンデミック防止に注力するとしたそれまでの方針を突然転換した。バイデン政権に近い関係者は「バイデン氏が中国の非協力的な態度に不満を持っていた」と指摘する。

米CNNテレビは8月5日、米情報機関が武漢ウイルス研究所で扱っていたウイルスの遺伝情報などの膨大なデータを入手したと報じた。起源を解明するカギになる可能性があるとみて解析を進める。

中国は反発を強める。外務省の趙立堅副報道局長は7月30日の記者会見で、米メリーランド州にある陸軍の医学研究施設「フォート・デトリック」などからウイルスが漏洩した可能性にふれ、調査すべきだと訴えた。中国はもともと自国以外の起源調査を求めており、米国に矛先を向けた。

中国政府は国内外で宣伝工作に動く。趙氏は7月20日の会見で、世界規模の調査を支持し、調査の政治化に反対する手紙を世界保健機関(WHO)に送った国は「55カ国に達した」と主張した。中国が友好国に働きかけたとみられる。

共産党系メディア、環球時報はフォート・デトリックに対する調査をWHOに求める署名運動をネット上で展開し、すでに約2500万人分が集まった。中国国営中央テレビ(CCTV)も8月1日、フォート・デトリックの内幕を描く番組を放送した。

「誤報」騒動も起きた。国営新華社など官製メディアは7月下旬以降、スイス人の生物学者だと名のる人物のフェイスブックへの投稿を引用し、米国を非難した。だが、在中国スイス大使館がこの学者の存在を否定し、記事の削除と訂正を求めた。

新型コロナの起源特定を巡っては、19年12月に世界で初めて感染が広がった中国・武漢市で21年1~2月、WHOの専門家チームと中国の研究チームが共同調査を実施。3月末に発表した調査では「動物から人間への感染が最も可能性が高い」とし、ウイルス研究所からの流出説はほぼ否定していた。

だが、WHOのテドロス事務局長は7月、武漢の研究所を含めた再調査を加盟国に提案した。「中国には関連データのすべてを提供することを期待したい」と話した。1~2月の調査では中国当局が感染初期の患者データの提供を拒否した。

国家衛生健康委員会の曽益新副主任は7月の記者会見で、WHOによる中国での追加調査を拒否する意向を表明。研究所からの流出説は「科学に反する」と否定した。別の幹部も、患者データについて「プライバシー保護のため提供しなかった。(WHOの)専門家チームも理解していた」と反論した。

米情報機関は8月下旬に報告書をまとめるとみられ、その内容が当面の焦点だ。米シンクタンク、ジャーマン・マーシャル・ファンドのボニー・グレイザー氏は、バイデン政権が決定的証拠をつかむのは難しいとみるが、「中国が協力しなかった」として中国包囲網をつくると指摘。「かなり大きな米中摩擦を引き起こす」と分析する。 』