[FT]デルタ型急増で高まる中国製ワクチンへの懸念

[FT]デルタ型急増で高まる中国製ワクチンへの懸念
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『中国では新型コロナウイルスの感染が再拡大し、湖北省武漢市で最初の感染が確認されて以来、最悪の状況に陥っている。国産ワクチンの有効性に関するデータが不足するなかで、その品質を巡る懸念も高まっている。

中国製ワクチンの変異ウイルスに対する持続的な有効性は現時点で証明されていない=ロイター

中国国家衛生健康委員会が9日発表した新型コロナの新規市中感染者数は94人となり、中国本土で確認された感染者数は計1603人に達した。

このうち数百人は7月に東部の江蘇省南京市の国際空港から広がったインド型(デルタ型)の変異ウイルスの感染が疑われている。中国ではこの1年間、クラスター(感染者集団)を小規模かつ局所的に抑え込んできたが、ここに来て新たな感染が全土に急拡大している。

中国では国有医薬大手の中国医薬集団(シノファーム)と民間の中国科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)の2社が新型コロナワクチンを製造しているが、急増するデルタ型ウイルスに対する有効性を証明する厳密な研究は公表されておらず、実際に効くのかどうかに注目が集まっている。

新たに出現する変異ウイルスに対する有効性が低下するとなれば、すべてのワクチンにとって問題だ。だが、「独ビオンテック・米ファイザー」や「英オックスフォード大・アストラゼネカ」、米モデルナ製のワクチンと異なり、中国製ワクチンのデルタ型への有効性に関する研究結果は専門家の厳格な査読を受けた国際的学術誌には発表されていない。
公の場での議論は禁物
武漢市では再び感染者が確認されたのを受け、全住民への抗体検査が実施された=ロイター

しかも中国ではこの問題を公的な場で議論することがタブー視されている。

中国共産党の機関紙、人民日報の記者は先週の記者会見で南京市の保健当局に対し、最近発生した感染者のうちワクチン接種後に感染する「ブレイクスルー感染」は何件あったか質問した。

当局はその内訳を公表しなかったばかりか、事情に詳しい関係者によると、この記者はそれから1時間もたたないうちに上司から懲戒処分を受けた。

米外交問題評議会(CFR)のグローバルヘルス担当上席研究員、黄厳忠氏は南京市当局が当該データを保有していたはずだと指摘する。中国政府はワクチンの接種状況を詳細に追跡し、個人の行動履歴情報をデジタルで管理する「健康コード」システムとリンクさせているからだ。

「デリケートな話題」だからこそ、当局が質問への回答を避けたと黄氏はみている。

発症予防率は低下

中国の公衆衛生の専門家は中国製ワクチンについて新たな変異ウイルスにも有効だと主張する。だが一方で、発症予防率が低下している点は認めているため、今後の接種推進活動に支障を来す恐れもある。

黄氏は「有効性の低下を示すデータを公表すれば、集団免疫を獲得する時期が遅れるかもしれないとのメッセージを国内に発信することになる」と語った。

中国の感染症専門家である張文宏氏は先週、上海の空港で最近発生した感染にブレイクスルー感染者が含まれていることを認めた。ただ、濃厚接触による感染者が出なかったため、引き続きワクチンはまん延防止に有効だと強調した。

中国国務院(政府)高官によると、過去1年以内にワクチン接種を受けた人には3度目の接種(ブースター接種)はほぼ必要ないことがこれまでの研究で示されている。とはいえ、高齢や基礎疾患など高いリスクを抱える人には追加接種を検討するという。

中国のワクチン接種率は当初低調だったが、政府のインセンティブや感染再拡大への不安を背景に足元では急速に進み、7日時点で17億7000万回分が投与された。

5億7000万回分を100カ国に輸出

北京を拠点とする調査会社ブリッジ・コンサルティングによると、世界保健機関(WHO)がシノバック製とシノファーム製のワクチンを今年承認したのを機に、5億7000万回分が100カ国以上に出荷された。

しかし、新たな変異ウイルスに対する持続的な有効性が証明できていないため、途上国にワクチンを供給する中国政府の取り組みが頓挫する可能性もある。中国本土以外で行われた初期の研究をみても一致した結論は出ていない。

7月に米医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに掲載されたチリのワクチン接種に関する研究によると、シノバック製ワクチンはブラジルで最初に確認されたガンマ型を含む変異ウイルスに対して66%の発症予防効果、88%の重症化予防効果を発揮した。

一方、査読を経ずに発表されたスリランカの別の研究では、シノファーム製ワクチンを282人の被験者に接種したところ、デルタ型については自然感染と同程度の抗体反応が得られた。

それ以外の研究結果は望み薄だ。中国政府の委託で香港大学が医療従事者を対象に実施した最近の研究では、ビオンテック製ワクチンを2回接種した方が、シノバック製を2回接種したより約10倍の中和抗体を獲得できた。

接種戦略を修正する国も

インドネシアではシノバック製ワクチンの接種を受けた医師数百人が感染したのを受け、モデルナ製の追加接種を開始した=ロイター

確実なデータが十分に得られないなかで、ワクチン接種計画の大半を中国製が占める一部の国では接種戦略の修正に動き始めている。

7月に公表された査読前の研究論文によると、シノバック製ワクチンによって体内で作られた中和抗体は6カ月後に著しく減少した。基準値を上回る抗体量を検出できた被験者は全体の約3分の1にとどまったという。

だが、2回目を接種した約6カ月後に3回目を接種したグループの抗体量は、追加接種を受けなかったグループの5倍に上昇した。

アラブ首長国連邦(UAE)とトルコは一部の人を対象に中国製ワクチンの3回目接種を実施済みで、モンゴルも同じ戦略を今月採用する方針だ。

フィリピンとタイはこれに追随するか、または中国製と他のワクチンの混合接種にするかを近く決定する。

インドネシアでは、シノバック製ワクチンの接種を受けた医師数百人がその後に感染したのを受け、医療従事者を対象にモデルナ製の追加接種を開始した。マレーシアは7月、シノバック製の使用を供給分がなくなり次第打ち切ると発表した。

香港政府のコロナ対策顧問を務める許樹昌(デビッド・ホイ)氏は、シノバック製ワクチンを2回接種した人を対象に追加接種の影響を調査することを明らかにした。許氏は英フィナンシャル・タイムズ(FT)の取材に対し、「追加接種をシノバック製とビオンテック製のどちらにすべきか、これから実証していく」と語った。

By Christian Shepherd and Primrose Riordan

(2021年8月10日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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