欧米石油メジャー、イラク撤退検討

欧米石油メジャー、イラク撤退検討 中国勢に権益か
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR19B920Z10C21A7000000/

『中東の主要産油国イラクから英BP、米エクソンモービルといった石油メジャーが相次ぎ撤退する構えをみせている。世界で脱炭素の動きが強まり、石油採掘事業の将来が不透明になるなか、政権が安定しないイラクでの事業を見直そうとしている。各社は中東の石油を求める中国国有企業への権益売却を検討している。

「BPはイラクを離れようとしている」。イラクのアブドルジャバル石油相は7月上旬にフェイスブックで公表した映像で、南部にある世界有数規模の「ルメイラ油田」で48%の権益を持つBPが撤退する可能性を認めた。ルメイラ油田の北に位置する「西クルナ2」を操業するロシアの民間石油最大手ルクオイルも、中国企業に権益を売却する意向を通知してきたという。

BPは2020年、契約期限切れで北部のクルド人地域キルクークからも撤退した。米エクソンモービルは「西クルナ1」で保有する33%の権益を売却する方針を示した。英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルは18年、伊藤忠商事に西クルナ1の権益20%を売却した。BPがルメイラ事業を止めれば、欧米メジャーの脱イラクはより鮮明になる。

伊藤忠は西クルナの油田について「現時点で事業計画に変更はない」と説明している。

イラク離れの背景には「脱炭素」の加速がある。BPは30年までに石油・ガスの生産量を4割縮小し、新エネルギー分野にシフトする長期戦略を打ち出した。オランダの裁判所は5月、シェルに対し温暖化ガス排出量を30年までに19年比で45%削減するよう命じた。

アブドルジャバル氏は6月、議会で「イラクの投資環境」も同国からメジャーが離れる一因だと主張した。イスラム教の様々な宗派勢力が寄り集まる政権は指導力が弱く、過激派組織「イスラム国」(IS)によるテロや民兵組織による外国の駐留部隊への攻撃が頻発する。資金不足の政府が約束するインフラ整備や支払いも遅れがちだ。

イラクの原油は採掘が比較的容易で確認埋蔵量が豊富なため、早くから欧米メジャーが進出。一方、生産量に応じて国から報酬を得られるサービス契約方式で、外国企業が得られる1バレルあたりの報酬は低く抑えられている。

欧米勢の隙間を埋めるのは中国だ。日本エネルギー経済研究所の吉岡明子・中東研究センター研究主幹は「エネルギー安全保障は目先のもうけを度外視できる国家戦略で、欧米上場企業のような株主からの脱炭素圧力は小さい」と説明する。

エクソンの西クルナ1での権益には中国石油天然気集団(CNPC)や中国海洋石油(CNOOC)が関心を示し、実際の交渉が進んでいるとの情報がある。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは6月、BPのルメイラ油田権益について、BP本体から切り離し、CNPCとの合弁で操業する計画だと報じた。(イスタンブール=木寺もも子、薬文江)』