コロナ起源調査巡り「誤報」騒ぎ

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【大連=渡辺伸】新型コロナウイルスの起源調査を巡り、「誤報」騒ぎが持ち上がった。中国の官製メディアがスイス人の生物学者だと名乗る人物のフェイスブックへの投稿を引用し、中国の研究所からの「流出」説を捨てない米国を非難したが、在中国スイス大使館はこの学者の存在自体を否定した。この投稿が実際はだれのものなのか、関心が集まっている。

「米国は新型コロナの起源をめぐって中国を攻撃しようとし、(科学的な)データに目を向けていない。科学の問題を政治化している」。中国政府の意向を反映する官製メディアの新華社通信や人民日報(電子版)などは7月下旬以降、スイス人の生物学者、ウィルソン・エドワーズ氏の名義のコメントを引用し、配信した。

ところが、スイス大使館は10日、中国版ツイッター「微博(ウェイボ)」を通じエドワーズ氏を巡る報道が「嘘だ」と表明した。「この人の名前でスイス市民の登録はなく、生物学の論文も存在しない」と指摘した。大使館は中国メディアに対し、記事を削除し、訂正するよう求めた。一部のメディアは記事を削除した。

スイス大使館によると、フェイスブックのエドワーズ氏のページは7月24日に開設されたばかり。登録された「友人」は3人だけ。誰がページを作成したのかは不明だ。

バイデン米大統領は5月下旬、中国科学院武漢ウイルス研究所から流出した可能性を含め、情報機関にウイルスの起源を調べるよう指示した。「流出」を否定している中国にとって、エドワーズ氏のコメントは米国を批判するうえで格好の材料だった。

ウイルスは中国で初めて感染が確認されたが、同国政府は感染拡大の責任追及を回避する構えだ。中国外務省はかねて「最初に確認されたからといって、発生源だとは限らない」と強調してきた。最近では「米国の研究所も調べるべきだ」とも主張していた。